宇宙膨張論編
「神様。」
「なんだい。今日は随分さみしそうだな。」
「神様は知っていましたか?この宇宙は今なお広がり続けているそうですよ。」
「あぁ、そんな話も聞いたことがある。ビックバンが起こってから、ずっと広がってるって話だったかな。」
「それで気づいちゃったんです。何かの拍子に離れ離れになった時。この膨張し続けるこの宇宙で、私たちは再び出会えるのかと……。」
「それは面白い。つまり、僕らがお互それぞれに、宇宙の端まで離れた時の話か。」
「そこまでは言ってませんが、その通りです。」
「まぁでも案外会えるんじゃないか?」
「お互いの姿が見えないほど遠くてもですか?」
「出来るとも。試してみないか?」
「今から宇宙の端までですか?」
「そこまで言っていない。もしもの時の練習さ。」
「なるほど。小さな規模からだんだん距離を空けるというのですね。」
「その通り。まずは、この教室からやってみよう。」
「見つけました。」
「まぁ、流石にこの距離じゃ探す必要もないな。」
「では神様、次はどこまで広げますか?」
「そうだな……とりあえず普通科校舎まで広げてみるか。」
「あ、見つけました!」
「まだ範囲が狭いからな。すぐ見つかるな。」
「この分だと宇宙規模になっても、本当に会えそうですね。次は学校全域にしましょう!」
「大きく出たねぇ。」
「……やっと見つけました。」
「この学校、割と広いから、さすがに時間がかかったね。」
「でも、神様の言っていた意味わかりました。」
「ん、なんのことだい?」
「『離れ離れになっても案外会える』ってことです。」
「それはさっき、分かったようなことを言っていたような気がしたんだが。」
「より深く理解したというべきですね。」
「ほう。」
「私、神様を探している間、ずっと考えていたんです。『神様ならどこに行くだろう』って。それはつまり、お互いがお互いを深く理解し合えさえしていれば、相手が何処にいようとも、目星をつけて、探し出す事も出来る……そういう事ですよね?」
「い、いやぁ、そこまで考えて言ってないなぁ……」
「えぇ……。」
「いや、しかし、流石君だ。確かにその考え方なら、例え宇宙の両端にいようとも、必ず出会えるだろうな。」
「ですよね!」
「よし、もういい時間だし今日は帰ろうか?」
「はい!さよならです神様!」
「お疲れ様ですー!」
「おぉ、きたきた。昨日はどうしたんだ突然休んで?何かあったのか?」
「いやぁ、一昨日の練習の続きで、『神様ならここにいるだろうなぁ』と思って、市内をあちこち探してたら、学校すっぽかしちゃいました!」
「君は僕をなんだと思っているんだい……?」
宜しければ、ご意見・ご感想を頂けると励みになります。。。