森での実戦訓練1
「今度、学園敷地内の森で実戦訓練をします」
タルッフィ先生が教壇で生徒たちに言う。
「日程は明後日。皆には森で4時間過ごしてもらうわよ。森には初級から中級の魔物を放してあるわ」
その言葉に教室内が少しざわつく。
「それは、生徒に危険は無いんですの!?」
1人のご令嬢が皆の不安を代弁するように発言する。
「最上位クラスの生徒なら、余裕で倒せる魔物だわ。それに教員ももしものために待機しているから問題ないわ」
「それでも、もしもってことがあるかもしれませんわ!!」
今日も金髪をツインテールにしているエミリー様が叫ぶ。
「安心して。この訓練が始まってから最上位クラスでは一度も事故が起きたことがないの。……エミリーもこのクラスの一員でしょう?」
少し挑発するようなタルッフィ先生の声にエミリーは唇を噛むも、黙り込む。
「というわけで、明後日までに2人組を作っておいてね」
皆一斉に友人に声をかけ始める。
勿論私も。
「シャルロット! 良かったら、ペアにならないかしら?」
すると、シャルロットの表情が少し曇った。
「…………嫌だったかしら?」
私がそんなシャルロットを伺うと、シャルロットは慌てて首を振った。
「いえ、そういうことじゃ無いの……。嫌なんじゃなくて……」
言葉に詰まるシャルロットの次の言葉を待つ。
「…………魔物が苦手なの。……苦手、というより、戦えないの」
深刻そうな顔をするシャルロット、私は少し気が抜けてしまった。
「それなら大丈夫よ! 私に任せて!!」
「……え?」
私はシャルロットを安心させるようににっこりと笑った。
「アリス様?」
「ん? なあに?」
「今日は森での訓練ですよね?」
「ええ、そうよ」
「どうして紅茶を用意しているのですか?」
「え? 飲むからに決まっているじゃない!」
「どうして、カップケーキとマカロンを選別していらっしゃるのですか?」
「どうしてって…………、食べるからよ」
「もう一度聞きます。今日は森での訓練ですよね?」
「ええ、フィー大丈夫?」
「聞きたいのはこちらです。訓練にお菓子なんて、アリス様、大丈夫?……ですよ」
「これは、リラックス作戦なんだから、問題ないわ」
「……リラックス作戦」
「そう! 訓練を楽しもうと思って」
「……もう良いです」
「あ、フィー。このマカロン、包んでくれる?」
「はいはい。分かりましたよ……」
集合場所である森の入り口に向かえば、生徒たちが皆それぞれ準備していた。杖を持つ者、剣を磨く者、準備運動をするもの、気合が入っている……!!
「あ、アリ、ッス……」
彼が私の前に現れたと思ったらいきなり笑い始めた。お腹を抱えて笑う彼に少しだけムッとする。
「どうしてそんなに笑うんですか!? アラン様」
「ごめっ、ごめん……、いや、」
「絶対ごめんって思っていないですよね?」
「……アリス嬢、よろしければそのバスケットの中を教えて頂いても?」
彼の隣に控えていた、ルイスが困惑気味に話しかけてきた。
「は、はい。えっと……紅茶とマカロンとカップケーキですわ」
周りの空気が変な風に固まった。
……何か、失言をしてしまったのかしら。
不安になって彼を見るも、まだ笑いが収まっていない。いい加減、元に戻りなさい!
「アリス〜!!」
振り返れば、小走りで駆け寄ってくるシャルロット。
「お待たせしちゃったかしら?」
「ううん、全然大丈夫よ」
シャルロットは近くまで来ると、爆笑している彼に少し戸惑っている。
「アラン様、そろそろ戻ってきてください」
「う、うん。ごめんね、ア、リス」
ようやくいつもの彼が戻ってきた。
「アラン様だけですよ。そんなに笑っていらっしゃるの。変な人って思われても良いんですか?」
「君がそれ言う!?……いや、もう本当にアリス、君は……」
何が「君がそれ言う!?」ですか!?
私は一般的な常識と感性を持った人間だと自負しておりますが。
「はーい!! じゃぁ、訓練を始めるわよ!」
森での実戦訓練が始まった。




