提案
「それ、は……どう言う意味ですか……?」
…………むす、め……?
「そのままの意味よ。私たちが結婚したら、養子にならない?」
シアラ様が仰ることが理解できなくて、思わずミーティア侯爵様の方を見る。
「信じられないかもしれない。だがこれには、いくつか意味があるんだ。……1つ目はアリス嬢の身分の保証」
保証?
「アリス嬢は今貴族ではなく平民だ。例えここでアルテミス公爵に保護されているとはいえ、誘拐されてしまうと、取り戻すために大きな行動ができない。だが、もしスーリールのミーティア侯爵家の令嬢になればラシオンも介入が難しくなる。堂々と、どこにでも行けるんだ」
……その言葉はとても魅力的なものだった。追手に怯えなくても良くなるのだから。
「それから、2つ目、アルドの貴族学園に通うことができるわ。アルドはラシオンやスーリールより発達しているわ。あなたの魔法は珍しいものだし、ラシオンで学べなかったことも学ぶことができると思うの。……勿論、あなたが望めば、だけど」
彼も通っている学園。大国であるアルド帝国はどのような教育をしているのか、気にならないわけではなかった。
……でも、私のために2人に無理をさせるのも……。結婚後すぐになんて、迷惑すぎる。
「もちろん、一番の理由は私があなたを娘にしたいからよ!!」
「へ……」
シアラ様の言葉に変な声が漏れる。
「年齢的には姉の方が近いのだけれど、それは難しいから……」
え……。
「私は5年以上、ずっとでは無かったものの、あなたと過ごしてきたわ。今までと同じように、これからもあなたの事を見守りたいの。ダメかしら……?」
シアラ様の言葉に嬉しくて涙が出そうになる。正直私には家族がいなかった。
書類上は家族だったとしても、あの人たちは私を家族とは思ってくれなかった。
……シアラ様が、お母様だったらどんなに素敵だろう。
そんな事を考えてしまう。私だってシアラ様の娘になりたい。なりたくないなんて思うはずがない。
でも、だからこそ、本当に良いのかしらと不安になる。
「……ミーティア侯爵様はそれでよろしいのですか?」
シアラ様が望んでくださっても侯爵様は嫌なのではないだろうか。侯爵様とは今日が初対面だし……。そう思い彼の方に視線を移すと、
「大歓迎だ!!」
満面の笑みを浮かべて歓迎された。いきなり見ず知らずの令嬢が娘になって良いのか!と思わず突っ込みたくなる。
「アリス嬢は魔法の才能があるとシアラが言っていたんだ。その才能を開花させたい。……自分の子供に魔法を教えるのが夢だったんだ」
侯爵様はその瞳をキラキラと輝かせてそう仰った。
ここまで言われると、この話を受けても良いのではないかと思った。
断る理由が見つからない。
2人に迷惑をかけてしまわないか、心配だったけれど、心から私を望んでくれているようだった。
「是非、お願いします」
私が2人に頭を下げると、シアラ様は立ち上がり、一瞬で私の隣に座られると、私をぎゅーっと強く抱きしめた。
「どうしましょう、本当に嬉しいわ!!」
その暖かな温もりに私は安心感を覚える。この選択は間違っていなかったと確信した。
私はこうして、ミーティア侯爵家に養子に入ることになった。




