再会
アルテミス領に着いてから、3ヶ月が経とうとしていた。
私は毎日キャサリン様の治療を行い、3日に1回ほど教会に行き、治癒魔法をかけている。
ここに来てから、追手に遭遇することもなく平穏な日々を過ごしていた。
キャサリン様は最近歩行の訓練を始められた。
やはり弱りきった筋力では立つことも難しく、リハビリは大変そうだ。
それでもキャサリン様は懸命に取り組まれている。
先日は夕食を公爵様と共にとられたらしく、ゆっくりと部屋に歩いてきたキャサリン様を見て、公爵様は感涙した。……とフィーが教えてくれた。
春と夏の境目の頃、突然彼らは私の目の前に現れた。
アルテミス屋敷の書庫で見つけた魔導書を読んでいると、フィーが勢いよく部屋に飛び込んできた。
ただごとではない様子に緊張する。
「アリス様!」
「どうしたの!?」
「あの……本邸の方にいらっしゃるそうです」
「どなたが?」
「……シアラ様が」
「えっ!?」
私たちが急いで本邸に向かうと、シアラ様はサロンにいらっしゃるようだった。
「失礼します」
私がサロンの扉を開けると、そこにはキャサリン様とシアラ様と……もう1人茶髪の男性がいた。
「アリス、久しぶりね」
紅茶を片手にシアラ様はそっと微笑まれた。
「シアラ様……」
「会いたかったわ。無事で良かった」
「私もお会いしたかったです!」
……まさか今、本当に会えるなんて!!
嬉しくて心が一杯になる。
キャサリン様に、アリスちゃん座って、と声をかけて頂いたので、シアラ様の正面に座る。
「……シアラ様、どうしてここにいらっしゃるのでしょう?」
「もちろん、アリスに会うためよ!」
「でも、スーリールからここまで1週間はかかるはずですが……」
お返事の手紙を書いた日からすると、あり得ないスピードなのだ。
「ウィルの転移魔法を駆使しまくったから、かかった日数は2日よ!」
とシアラ様は得意げな顔をされる。
「ウィル様とは……そちらの方でしょうか?」
私はソファに腰を下ろしている茶髪の男性を見る。
シアラ様との再会が嬉しすぎて、すっかりご挨拶をするのを忘れていた。
「はい。初めまして、アリス嬢。ミーティア侯爵当主、ウィリアム・ミーティアです」
答えたのはシアラ様ではなく男性の方だった。
「もしかして……」
「はい。私がシアラの婚約者です」
……シアラ様の想い人だわ!!
「ラシオン王国でシアラ様にお世話になりました、アリスと申します」
ご挨拶をする。
「アリスちゃんも来たことですし、私は1度失礼しますね」
キャサリン様はそう仰るとソファから立ち上がった。
「大丈夫ですか? お手伝いしましょうか……」
つい心配になってキャサリン様に声をかける。
「大丈夫よ、アリスちゃん。危なくなったらメイドに支えてもらうから。……アリスちゃんは再会を楽しみなさい」
「ありがとうございます!」
キャサリン様はそのまま歩いて部屋を出ていかれた。
「ミーティア侯爵様、シアラ様、改めましてご婚約、おめでとうございます」
「ありがとう」
私がお祝いの言葉を言えば、シアラ様は嬉しそうに笑った。
「結婚式は夏の予定なんだ。アリス嬢も、もし可能だったら来てくれないだろうか」
にこやかに仰るミーティア侯爵様は栗色の髪に緑色の瞳の美丈夫だ。
「はい、伺いたいですわ!」
それからシアラ様は私が去った後のラシオン王国の様子やシアラ様が国に戻られたときのことを話してくださった。
やはりラシオン国王は私を探しているらしく、シアラ様がいなくなられてからは、ご乱心だそうだ。
それなら何故、そう簡単にシアラ様を逃してしまったのだろうと不思議でお聞きしてみれば……
「私が逃げられたのは、あの国が腐っているおかげね」
とよく分からない返答をされた。
ミーティア侯爵様もいつのまにか私たちの話に入ってこられた。
シアラ様はどのような方だったのでしょう? と聞けば、ミーティア侯爵様はシアラ様が学園に在籍中の話をしてくださった。
シアラ様は恥ずかしいと頬を染めていらっしゃったが、ミーティア侯爵様を見つめる瞳が柔らかくて、こちらまで嬉しくなってくる。
どれくらい話していただろうか。
「……そろそろ本題に入ろうかしら」
ティーカップのお茶がなくなった頃、シアラ様はそう切り出された。
今までが本題でなかったのかとびっくりしたが、それまでとは違う真剣な眼差しに、私はソファの上で今一度姿勢を正す。
「はい」
「……アリス、私たちの娘にならない? 」




