お散歩
「キャサリン様……、大丈夫ですか?」
「ええっ……、大丈夫よ」
私は涙が止まらないキャサリン様にそっとハンカチを手渡した。
「ありがとう」
「いえいえ」
キャサリン様は私の毎日の治癒魔法で元気を取り戻してきていらっしゃった。
食事の量も少しずつ多くなっていて、以前より沢山お話しするようになられた。
公爵様にも「本当に、ありがとう」と、とても感謝された。
……なんだか恐れ多い。
そして今日、
「……私、外に出られるかしら?」
キャサリン様はそう呟かれた。
「……お出かけになりたい、ですか?」
「えっ、ええ。でもまだ無理よね……」
「街は無理でも……屋敷の庭園ならお散歩できますよ」
「本当!?」
「はい、ちょうど今日は暖かくて気持ちが良い日です。少しだけ外に出ましょうか」
「アリスちゃん、ありがとう!」
その後、キャサリン様を車椅子に乗せて玄関へ向かった。まだ歩くには脚の筋肉が足りないのだ。
キャサリン様はとってもそわそわしていらした。5歳の私と重ねるのも失礼だけれど、同じような感じがする。
……半年以上、寝たきりでしたからね。
玄関を出ると、日光が私たちを優しく照らす。
空には白く可愛らしい雲がぷかぷかと浮かんでいる。
庭園から香る緑の匂い。
「少しずつ移動しましょうか」と言いかけて口を閉ざす。
キャサリン様は……泣いておられた。
「ごめんなさいね、アリスちゃん。なんだか感動してしまって……」
「いえいえ、しばらく外に出ておられなかったのですから、仕方がないですよ」
「今は春だからきっとお花が綺麗ね」
「そちらまで行きましょうか。車椅子、動きますよ」
「本当にありがとう、アリスちゃん」
公爵家の庭園には春らしく、すみれ、チューリップ、デイジーなどが見渡す限り花を咲かせている。
キャサリン様は新しい種類の花を見るたびに、感動していた。
「アリスちゃんには病気も治してもらっているし、こうやって私に付き添ってくれるし、もうなんとお礼をしたら良いか……」
「そんな……お礼なんて大丈夫ですよ。何より私はキャサリン様とお話しするの大好きなんです」
「でも……何かお礼をしないと気が済まないわ」
「……それでは、キャサリン様、以前と同じくらいまで元気になってください。それが一番貰って嬉しいものです」
私がにっこり微笑むと、
「もう! アリスちゃんは……」
とキャサリン様は苦笑する。
「それなら、私は頑張って健康にならなくては」
「はい。頑張りましょう」
私たちはお花畑を進むのだった。
「アリス様」
「何?」
「アリス様にお手紙が……」
……アラン様かしら。この前、出したばかりだけれど。
彼が学園に行ってしまってから、私は近況を報告する手紙を度々彼に送っていた。
始めは元気でやっているのだと伝えるために手紙を書いたのだが、彼からお返しの手紙が来て、それにまた返事をして……、と終わらなくなった。
今はそれが当たり前となり、手紙でのやり取りは続いているのだが……。
先日、教会でのことを報告したばかりである。
まだ彼から返事が来る頃ではないのだが。
「アラン様から?」
「いいえ……」
……シアラ様からです。
フィーは私に真っ白な手紙を差し出した。




