アメリア視点
私は姉が大っ嫌いだ。
幼い頃から私は家族皆から愛されていた。
可愛い可愛いと甘やかされ、お願いすれば叶えられないことはなかった。
美しい父と母に似て、容姿も整っており、身分も素晴らしい。
私は全てを手に入れていた……はずだった。
10歳の時のお茶会の前、私はお母様から王子様に会えるのよ、と聞かされる。
王子様に気に入られればお姫様になれるという父の言葉に、私はとてもとても喜んだ。
皆から愛される美しいプリンセスのお話を兄から読み聞かせしてもらったばかりだったから、尚更。
私にはプリンセスの座も手に入れられる自信があった。
……今まで、手に入れられなかったものなんて無かったから。
お茶会のために過去最高に気合を入れて準備した私を家族は、妖精のようだとか、天使のようだとか、手放しで褒めてくれる。
私自身、いつもより格段に愛らしくなった自分の容姿に自信がついていた。
私は愛らしいプリンセスになる存在だと信じてやまなかったのだ。
……しかし、その自信は姉の存在で掻き消された。
お茶会にて、お会いした王子様は絵本の中の王子様と同じく、とっても素敵な方だった。
私は一目で恋に落ちのだ。
好きで、好きで、たまらない。
他の貴族子息とはオーラの違う、本当にかっこ良い方だった。
第一王妃様にお母様と一緒にご挨拶すれば、王妃様は私の髪を優しく撫でてくださった。
その行動に、母は私が王子の婚約者になれると帰りの馬車で話してくれた。
私は、あの素敵な王子様と結婚することができるのかとそれはそれは嬉しかったものだ。
結局、王子様の婚約者は姉になった。
私は姉が憎たらしかった。
姉はあんなに素敵な王子様のことを少しも好いていなかった。
どうして……どうして王子様のことが大好きな私ではなくて姉が婚約者なのか。
分からなかった。
理解できなかった。
それでも、姉の美しさは認めざるを得なかった。
姉の美しさは、この世のものとは思えないほどなのだ。
私も整っている方だが、可愛いと美しいは違う。
元の造りが異なるのだ。
私がどんなに食事を抜いて痩せても、姉のようなもともと骨格の細い人には及ばない。
どんなに美容に良いものを肌に塗っても、姉のような真っ白な美しい肌にはならない。
同年代の中では、成長したと思われる胸も、姉には勝てなかった。
同じ金髪でも、姉は光り輝くような美しい髪。
容姿だけでは姉に勝てない。
それを認めるのはなんとも悔しかったけれど、仕方がなかった。
……だから私は姉にはない可愛らしい言葉、仕草を徹底した。
「アメリア、あの子から王子を奪ってしまいなさい」
そう母から言われたのは学園に入学する前だった。
王命であるこの婚約を無くすのは難しいことは昔に言われていたのに……。
「できるの?」
「私も、お父様もあなたの味方。大丈夫よ、あの子と王子の仲は冷え切っているわ。あなたの魅力で王子を手に入れるのよ」
洗礼式の前には姉に毒を飲ませ、魔力が流れないようにした。これは母の案だ。聖堂にいるときは、姉の様子がおかしくて少し毒が効きすぎたかしら……と思ったが、どうでも良かった。
学園が始まってからは、私は王子様のそばに付くようにした。王子様を狙おうとしている他の令嬢を抑えながら、可愛らしい、愛嬌のある令嬢になり続けた。
王子様の横にいられるだけで、幸せだった。惚れ惚れするような綺麗な顔に優しい言葉。
毎日のようにお話しすれば、私たちは徐々に打ち解けていった。
夏休みには、公爵家の屋敷までいらしてくださった。
婚約者である姉を訪れるという名目でいらっしゃった王子様に、母は嬉しそうにしていた。
屋敷のサロンでのアフタヌーンティーはそれはそれは楽しかった。
夏休みが開ければ、2人きりで校内を散歩したり、サロンでお茶をする機会もできた。文化祭では姫役を勝ち取った。
練習をしているときは、本当に王子様と恋仲になれたような気がして、心がふわふわとしていた。
腰に感じる王子様の手に、甘い言葉、毎日毎日練習が楽しかった。
とうとう王子様は私のことが好きだと言ってくれるようになった。
「アメリア、君を愛している」
そう言われたことを父と母に報告すれば、よくやったと褒めてくれた。
卒業が近くなった頃、私は彼にプロポーズされた。結婚してくれ、と。
婚約者の姉がいるのでは? と聞いたところ、婚約破棄をしてくれるようだった。
その時の私の喜びようは、凄かった。
何にしろ、5年以上の片思いがようやく叶うのだから。彼の妻になれる、王妃になれる、輝かしい未来の想像に私は歓喜していた。
私が彼のプロポーズに「はい」と返事をすれば、王子様は私に優しくキスをしてくれた。はじめてのキスは幸せの味がした。
そしてその日はやってくる。
「お前のような冷酷非道な女を国母にすることはできない!!よって、お前との婚約を破棄する!!」
姉は王子様の婚約破棄に涙を流しながら会場を後にした。初めて、姉の上に立てた気がしてとても気分が良かった。
執務は姉に任せ、私は王子様と素敵な毎日を過ごす。夢のような日々の始まりは……やってこなかった。
「違います!! そこは学園で習われたはずですが、なぜご存知ないのですか!?」
「だって……」
「だって、ではございません!! これが理解できなければ、王妃など務まりません!!」
姉は消えてしまった。
私は次期王妃としての教育が始まった。
1日10時間近くの勉強。ここ最近は王子様にも会えていない。
私は机に突っ伏した。
「アメリア様!!」
もう起き上がる気力はなかった。
……これも、全て姉のせいだ。




