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すみれ色の瞳  作者: mayan
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テストと希少属性

 

 私は時々教科書を破られたり、足を掛けられたりといじめらしき被害に遭っているが、それ以外はごく普通に生活していた。


「ジオルド様! ここの問題教えて頂けませんか?」

「ジオルド様のためにクッキーを焼いてみましたわ。勉強の合間にお召し上がりください!」


 今日も変わらずご令嬢たちは元気で、王子は満更でもなさそうな顔をしている。


 ……あの人、絶対私が婚約者ってこと忘れてるわね。


 まぁ忘れていてもどうもしないのだが。


 これでも、来週テストを控えていることもあるのか、教室は比較的静かだ。

 夏休み前の定期考査、私にとってはどれもこれも王妃教育で散々叩き込まれたものばかりなので、対策も勉強も何もするつもりはない。


 ……あんなに頑張ったんだもの。当然よね。


 この学園のテストには一応赤点や留年といったものがあるが、引っかかっても家の力でどうにでもできるので実質存在しない。


 その代わり、上位50名の順位表は貼り出されるのでプライドが高いものはそれなりに頑張るのである。





「アリス様は余裕ですね」

「ん?」

「明日から、テストでしょう?」

「大丈夫。完璧よ! 王妃教育でやったから」

「そうですか」

「あれだけ頑張ったのよ。その分学園では楽させてもらうわ」

「アリス様は、頑張っておられていましたからね。……あの王子なんか、ちょくちょく授業抜け出してたみたいですよ」

「ええっ!? フィー、どうしてそんなことを知っているの?」

「普通に……、情報として」

「どこから仕入れるのよ、その情報!?」

「私の特技……、趣味ですわ」


 フィーはにっこりと笑った。


 これ以上の追求はさせて貰えないらしい。


 王子が授業から逃げたなんて、世間体のために隠蔽されそうだけど……。

 フィーに対する謎ができた日だった。







 テストが終了し、順位表が貼り出された。


 1 アリス・スペンサー 500点

 2 アラン・アルテミス 492点

 


 5 ジオルド・ラシオン 478点




 ……ちょっと待って。

 ジオルド、あなたこの国の王子でしょ。

 なんで5位なの!?

 どうして婚約者の私にだけでなく、隣国からの留学生にも負けているの!?

 この学年には200人ほど生徒がいるから、5位は優秀だけれど……優秀だけれど!!

 王子なら1位取りなさいよ!!

 私に負けてどうするのよ!?


 ……フィーが言っていたことは本当だったのね、授業からよく逃げてたっていうのは。


「ジオルド様!!」


 後ろから令嬢たちを引き連れたジオルドがやってきた。


「ジオルド様は、テストどうでしたかぁ?」

「簡単だったな。城でも未来の国王として教育を受けていたから」

「さすがですわ!!」


 ……まずい。私はここにいたらまずい。


 そう思いアリスは素早くその場から離れた。




「アリス、テストはどうだった?」


 今日は私がシアラ様に初めて会った四阿でお茶会だ。


「……1位でした」

「あら! 凄いじゃない!」


 あの後、私は教室に戻る途中に王子を見かけたのだが……。

 明らかに不機嫌だった。


 ……鉢合わせは何としてでも避けよう。


 私は王子に気づかれないように隠密に学園を去ったのだった。


「あの子は何位だったの?」

「あの子、とはジオルド王子のことですか?」

「そうそう」


 これは言ってもいいものなのか。

 私は少し悩んだが、


「5位でした」


 素直に言うことにした。


「5位!? アリスには負けるだろうとは思っていたけれど、4人に抜かされてしまったのね」


 あらら、とシアラ様は完全に他人事だ。


「国王教育もあんなに嫌がって、逃げ回っていたから仕方がないでしょう」


 あ、やっぱり、それ本当なんですね。


「ですが、5位は少しまずくないですか?」

「大丈夫よ、今回のことで次からはきっとテスト対策がより厳しく行われるわ。だから、あなたは気にすることなく、全力を出していいのよ」


 茶目っ気たっぷりにウィンクするシアラ様……なんて可愛らしい。




 ……それにしても、暑くなってきたわね。


 今日は屋外でのお茶会だが、夏が近づいてきているのか扇子で仰いでいないと暑くて死にそうになる。


 ……冷たいものが飲みたいわ。


 目の前に置いてある紅茶は飲み始めは冷たかったものの、ものの数分で常温になっていた。



「今日は暑いわね」

「そうですね」

「ここでのお茶会は秋までお預けだわ」



 ……このお茶、魔法で何とかならないかしら。やってみるだけやってみるのも良いかもしれないわ。


 アリスは人差し指をそっとお茶に向ける。



 ……水魔法で良いのかしら。分からないけれどまぁいいわ。とりあえず、冷たく、冷たくして。ひんやりしたお茶が飲みたいのよ。よろしくね。


 何をしているんだと言われそうな光景だが、アリスはそこのところ全く気づいていない。

 シアラも何か始めたアリスを半分面白く、半分微笑ましく眺めていた。



 ……今日は暑いのよ。蒸し蒸しするわ。冷たいのがいいの。冷たい紅茶が飲みたいのよ!!





 カランッ




 へ……?


 何やら涼しげな音が聞こえて、そっと目を開く。


 こお、り……?


 アリスのカップの中にはいくつか氷が入っていた。


「アリス……あなた……」


 シアラ様もその大きな瞳を見開いていた。


 これは……氷魔法?


「……アリス、それ氷魔法よ」

「……うそ」


 氷魔法、これは水属性を持つ者の中で一握りしか使うことのできない魔法である、と教科書で読んだけれど。



 ……本当にいたのね!!


「アリス、凄いわあなた!! 光魔法に氷魔法なんて、希少属性の宝庫ね!!」


 シアラ様はいつもよりテンションが上がっていた。


「私も初めて見たわ。氷魔法!……でもそうね、その能力は隠しておいた方が良いわ。これまた物好きに獲物にされるから。……ねぇ、アリス! 私の紅茶にも氷入れてくれる?」

「もちろんです!」


 そうね、氷魔法は隠しておきましょう。


 そう思いながらアリスはシアラの紅茶に氷を投入するのだった。


お読みくださり、ありがとうございます!

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