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すみれ色の瞳  作者: mayan
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魔法実技授業

 


「それでは魔法学、実技の授業を始める!」


 生徒たちは皆うきうきしていた。


 今日は、校庭での魔法の実技の授業だ。椅子に座って長時間集中できない生徒にとっては一番嬉しい授業である。


 校庭の中央では早速王子が派手に魔法を放っていた。


「きゃぁぁ! ご覧になって! ジオルド様の水魔法よ」

「さすがね!! もう中級魔法を使いこなされているわ!」

「魔力のコントロールが素晴らしいのね!!」


 ……それはそうでしょう。王族は12歳から訓練が始まるのだから。


 私は……校庭の隅で無詠唱の練習中だ。




「そう、学園でも魔法の実技が始まるのね」

「はい」


 公務でお忙しいのにもかかわらず、シアラ様は月に一度ほど、私とのお茶会の時間をとってくださる。


「アリス」


「はい。なんでしょう?」


「能ある鷹は?」


 ん?


「爪を隠す?」


「そうよ。アリスも能ある鷹でしょう? 爪を隠しなさい」

「それは、どういう……?」


 いい?


 シアラ様は言い聞かせるように仰った。


「魔法はあなたが困難に陥った時、場合によっては命の危険が迫った時の切り札になるわ。だからね、自分の魔法の正確なレベルは知られない方が良いの」


 なるほど……。

 確かにレベルが知られれば、暗殺の時も自分よりレベルの高いものに襲われる可能性はありますね。


「でも、練習を怠るのもだめよ。いざという時使えなかったらいけないもの。だから周りに人がいない環境で練習は続けなさい」


「分かりました! 授業では爪を隠します!!」




 ということがあり、私は現在無詠唱の防音魔法の練習をしている。


「防音魔法は無詠唱で発動できると、便利よ」


 というシアラ様のお言葉により絶賛取り組み中である。

 しかし、無詠唱で魔法を発動させるのはかなり高度な技術な訳で……。


 ……無理。全然できないわ。


 早くも心が折れ始めていた。


 ……でも、きっと出来るはず!


「魔法はもちろんその人の資質や才能もあるけれど、ある程度のレベルは努力でどうにかなるわ。努力でどうにかならないのは一部の上級魔法から最上級魔法のみ。出来なかったらとりあえず1000回唱えなさい。出来ないと嘆くのはその後よ」


 というまたまたシアラ様のお言葉により、私はひたすら無詠唱の練習をする。


 ……結局、授業が終わるまでに少し音が漏れ辛い、くらいの防音魔法しかかけられなかった。



 授業が終わり、各々教室へ戻っていく。


 ……詠唱すれば発動できるのに、詠唱しないだけでこれだけ差が出るのね。


「アリス・スペンサー嬢」

「はい」


 魔法学の先生に呼び止められる。


「少し残りなさい。話がある」

「分かりました」


 ……何かしら?


「アリス嬢、授業は真面目に受けなさい!」


 はい?

 受けてますが……。


「今日は初めての実技だ。まだ魔法が発動できなくても仕方がないだろう。……リーララピスでも」


 嫌味ですか?

 まあ、上手く発動出来ませんでしたが。


「だが! 恥ずかしくとも詠唱してみるくらいはしろ!! なんだ今日のお前は!! 一言も発さず、棒立ち! 舐めてるのか!?」



 え……、あ。



 そうか!

 私は一生懸命練習していたけど、側から見れば無言で佇んでいるだけだ私……。


「申し訳ありませんでした」

「リーララピスだからって、調子に乗るんじゃない!」

「はい……」

「分かったら、帰れ!!」

「失礼します……」


 どうやら私は爪を隠しすぎたようだ。


 ……今度からは程よく初級魔法でも練習しましょう。


 校舎の方に歩きながら今日の反省をする。






 校舎に入ろうとした時、頭に冷たい衝撃が走った。




 これ……水?


 上を見上げると2階から、クスクスと嗤う声がする。


 嫌がらせね。


 アリスは全身ずぶ濡れになっていた。


 ……無詠唱はできないし、先生には怒られるし、びちょびちょだし。今日は散々な日ね。


 アリスはそっと溜息をつく。


 これ、どうしましょうか。

 とりあえず、できることを……。


 そう思い、光魔法の体が暖かくなる魔法を使う。


 しかし、


 やっぱりこれだと体が温かくなるだけで、服は乾かないのよね。火か風魔法じゃないと乾かすのは無理そうだわ。


 今から、帰るのも面倒ね。


 アリスがどうしようか悩んでいると、何処からともなくそれはやってきた。


 あら?


 温かい風が吹いてきて、私を包み込んだ。


 ……あったかい。お風呂みたい……。


 あっという間に私の制服と髪を乾かす。


 ……でも一体誰が?


 風が止んで辺りを見渡してみるが、人の気配はしなかった。


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