クラスの光景
学園に入学してから2週間が経った。
「ジオルド様ぁ、ごきげんよう。今日ご一緒にランチはいかがですか? 」
「ジオルド様、今日はお隣に失礼してもよろしいかしら!?」
「ジオルド様、うちのシェフが焼いたフィナンシェです! どうぞお受け取りください」
これが私のクラスの情景となりつつあった。
学園生活が始まった頃は、王子に一応私という婚約者がいることを気に留めて目立ったことはしていなかったのだけれど、王子と私の関係が冷え切っていることを察知した令嬢達は一斉に自己アピールを始めた。今では王子の周りにはいつも沢山の令嬢が群がっている。
婚約者決めのお茶会の再来である。
そのご令嬢の中でも一際目立つのが……
「ジオルド様の隣の席は私の席よ! 退きなさい!! 」
アメリアである。
姉の婚約者に手を出すなど常識的に考えれば、言語道断!しかし、彼女はまだ王子を諦めていない。筆頭公爵家の権力を思うままに振りかざし、周りの令嬢を牽制していた。
私はというと……放置である。
彼がご令嬢に囲まれようが、愛……どころか人として好意も抱いていないので、嫉妬も何もないのである。
それとこのクラスにはもう1人……
「きゃぁぁ! アラン様よ!! 」
「今日も素敵ね! 」
「あの優しげな眼差しが私に向けられたら……」
アラン・アルテミス。
洗礼式の時に声をかけてくれた、あの人である。
私の予想通り、彼は留学生だった。
ここ、ラシオン王国の何倍もの土地と軍力を有するアルド帝国の公爵子息である。
1年間だけの留学らしく、それを聞いた時何人かのご令嬢は残念そうにため息をつき、また何人かのご令嬢は闘志に火をつけていた。
ご令嬢たちの話題はここ最近、ジオルド派かアラン派か。そんな話ばかりである。
私は教室の隅の席で次の歴史の準備をする。
私は教室で1人だった。
やはり双子の姉は嫌われるのか、誰も話しかけようとしなかったのだ。
ただでさえそれなのに、王子を狙っているご令嬢からは敵のように睨みつけられ、私の好感度はマイナスに振り切れていた。
今に始まったことではないので気にはしていないが……。
……1人くらい、友達が欲しかったなぁ。
そうは思うも、
……まぁ、無理よね。
私は2週間目にして既に学園生活諦めモードに入っていた。
「アリスも大変ね……」
「全くです」
……私の青春どこいった。
「学校の勉強は簡単でしょ?」
「はい。授業を受ける意味を見つけられませんでした」
「あれだけ頑張って勉強していたものね……」
暖かいミルクティーを口に含む。
そう、今日はシアラ様とのお茶会の日なのである。
「まぁ、王子の方は無理に突っ込んでも騒ぎが大きくなるだけだから放置……現状維持でいいと思うわ」
「はい、そのつもりです」
オレンジ色のマカロンを頬張る。
……美味しい。
「では、魔法の練習に移りましょうか!」
ティータイムが終わると何回目かの魔法授業が始まる。
「今日は、とっても便利な防音魔法!!」
「外に音が漏れない魔法ですね」
「そうよ。この魔法は本当に使えるわよ。アリスとのお茶会の時は毎回かけているし、陛下を罵倒したくなった時もこれを使うし、ストレスで叫びたくなった時もこれを使っているわ!」
シアラ様、大丈夫かしら。
多忙すぎる公務でお疲れな気がするわ。
早く休息を取った方が……
「と言うわけで始めるわよ!」
「はい!!」
まぁ、いっか。




