セラフィーナ視点4
そこには天使がいた。
軽くウェーブがかかった金色の髪は艶があり、絹のような滑らかさだ。華奢な体は日焼けをしていないのか真っ白で、水色のドレスがよく似合っている。そして何よりその瞳。
……リーララピス。
美しいすみれ色の瞳は大きくパッチリとしている。
私は母に似て、顔立ちが整っている方だと思っていたが少女を目にした瞬間思う。
……天使がいた。
あまりの可憐さに目が離せなくなっていると
「えっと、あの〜? 」
お嬢様は困ったように首を傾げた。
……見とれている場合ではない!!
「お初にお目にかかります、お嬢様。セラフィーナと申します。本日よりお嬢様専属侍女として支えさせて頂きます」
私は急いで挨拶をする。
「あなたが、私の侍女? 」
「はい」
「あなたまだ子供よね?おいくつ? 」
その質問にどきりとする。
「10です」
返事の声は聞こえただろうか。
「どうして10歳の子供が働いているの!? 」
やっぱり……。
やっぱり10歳の小娘が公爵家のお嬢様の侍女なんて、現実的ではなかったのだ。
ここで拒絶されてしまえば私は叔母様のところに戻ることになる。
……嫌。
だけど……決定権はお嬢様にある。私の私情など関係がないのだ。
「お嬢様がお気に召さないのであれば、すぐに出て行きます。それでは失礼しま……」
「ちょっと待って!! 」
このお仕着せ返さなくてはと思い扉に向かおうとするとお嬢様は今までで一番大きな声を出された。
「私の専属侍女になって! 」
お嬢様の目は真っ直ぐに私を見つめていた。
私は信じられなかったが、
……嘘をついていない。
私の能力、嘘を見極める力が作動していない。
……本当に、本当なんだ。
でも、
「よろしいのですか? 私はまだ10の子供ですが」
やはり子供だと大人と比べて出来ないこともある。お嬢様がもっと優秀な人材を選べる立場にいらっしゃるからこそ、私は自分に自信が持てなかった。
「私の話し相手になって欲しいの。私、同じくらいの子供と話したことがないの。だから、お願い」
上目遣いで天使にお願いされ、私は一瞬我を忘れる。
……これも、嘘じゃない。
話し相手になってほしいという願いは本当だった。それから……同じくらいの子供と話したことがないというのも……。
お嬢様には何か特別な事情があるのかもしれない。
それでも、アリスお嬢様が私を望んでくれているのなら、
「私でよろしければ。大人の侍女に比べて能力は及びませんが」
「あなた、私の周りにいる大人と同じくらいしっかりしているわ。だから大丈夫よ」
そういうお嬢様も
「失礼ながらお嬢様も7歳とは思えません」
「あら、そうかしら? 」
などと惚けていらっしゃる。
「私たち、きっといい友達になれるわ」
そう言って、お嬢様は今日一番の笑顔を浮かべられた。私もつられて頬が緩む。
このお方のために、侍女として頑張らなくては。
私は心に誓うのだった。




