リーララピス
「あなたの瞳は、私と同じ紫色でしょう」
はい……。
「紫色の瞳は……リーララピスと言うのだけれど、とっても珍しいの。同じ国に1人いるかいないかくらいの珍しさよ」
そうなのですか!?
知りませんでした……。
「それでね、ここからが本題なのだけれど、リーララピスを持つ人間は他の人より魔力量が多い傾向にあるの。優秀な魔術師になり得る人材ってことね。それから何と言っても、希少な聖属性の魔力を持っているわ」
「聖属性、ですか……」
「そう、まだ学園に通っていないから知らないとは思うのだけれど、聖属性の光魔法は様々なものを癒し、浄化し、守る魔法。病気の治療に呪いの解呪、結界魔法に回復魔法、使い手の人数も少ないから余計に重宝されるの。……ここで問題、リーララピスの瞳を持つ人間は魔力量が多い、聖属性を持っている、としたら? 」
「……みんな、欲しいですね」
「そう、病気も毒もどんな怪我をしてもその人さえいれば自分は生きることができる。……皆、死ぬのが恐ろしいのね」
「そうですね……」
「そこでこれまた問題なのがこの国の王」
「問題、ですか? 」
「この国の王はリーララピスが大好きなのよ。何があっても自分が生きていけるように。私はスーリール王国の王女だったのだけれど、この瞳だからここに嫁がされたの。私の母国が飢饉に見舞われた時、援助を申し出てくれたのだけれど、その対価として私が嫁ぐことになったわ」
その美しい瞳にが悲しみが映し出された。
「王妃という立場が嫌だったのですか? 」
「王妃という立場が嫌なのではないの。国王の妻というのが嫌なのよ」
そんなこと、言っちゃっていいのかしら!?
ここ一応王宮内!!
聞かれたら不敬罪になってしまうわ。
焦った私に気がついたのか、シアラ様はいたずらに微笑まれた。
「安心して。ここには防音魔法をかけているから」
「左様ですか」
「あなたが他の人に話さなければ大丈夫よ。だから」
……秘密ね。
シアラ様はなんだか楽しそうだった。
「シアラ様は国王陛下が、お好きではないと」
「えぇ、これっぽっちも好きじゃないわ。公務はまじめにやらない、国王の書類まで私に押し付ける、女癖は悪い、最悪ね」
なかなか辛辣ですね。
「それにここだけの話、私にはお慕い申し上げている方がいらっしゃるの」
王妃でありながら、堂々と他に愛している人がいる宣言をするとは……。シアラ様は少し変わった王妃様のようだ。
「この国に嫁いで1年、そろそろ離婚して帰ろうかと思っていたのだけれど、帰れなくなりそうだわ」
帰る……。
一度嫁いだら離縁などありえない世の中で、帰る。なんて自由奔放な王妃様なのかしら……。
「話が大分逸れてしまったわ。えっと……っそうそう、あの男は私の瞳が大好き。公爵家の娘がその瞳を持っている。そして息子と同い年」
ん?
あれ……?
……えっ!待って待って!嫌よ!?
「あの男はあなたを婚約者にすると思うわ」
「でも、私は双子の姉です! ありえません」
「双子の姉、リーララピス、どちらか選べと言われたらあの男はリーララピスを選ぶわ。それだけ執着しているのよ」
「で、ですが、国王陛下以外の方々は反対でしょう。双子の姉なんて」
「そうね、第一王妃様はそれに加えて第2王妃の私とリーララピスを恨んでいるわ。あの男が自分よりリーララピスに依存しているのが面白くないのね。あなたのことも気に入らないでしょうね。それに王子はその第一王妃様の息子、影響は受けていると思うわ」
これは無いとは思うけれど……無いと信じたいけれどもし私が王子の婚約者に選ばれてしまったら、国王陛下のコレクションにされて、第一王妃様と王子からは蔑まれるのではないかしら。まずい、これはまずいわ。
「……絶対嫌」
でも、まだ確定じゃ無い。希望を持っていいはずよ……。
「辛いことが増えるかもしれないけど、私もなるべくフォローするようにするから、元気出して」
この方が仰ると、現実になる気がしてきたわ……。
「……はい」
そう返事をするので精一杯だった。




