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6-5 異世界から来た男?

 「アダム兄ちゃん!」

 

 息を切らしたアダムとギーが王宮の敷地内にある外務局の建物に行くと、外でターニアが待っていた。

 

 「ターニア、タケシ殿は?」

 「タケシのおっちゃんの取り調べは一旦中断させてもらっている。まだ拷問はされていないよ」

 「よくやった、ターニア。あとは俺が話をつける」


 とりあえず国際問題だけは避けられそうだ。

 ターニアと合流したアダムとギーは、外務局の建物の中に入る。受付の職員に無理を言って、タケシが拷問を受けている部屋へと案内させる。


 「こ、こちらです、聖剣の勇者様……」

 

 外務局の職員を押しのけ、アダムは拷問室の中に飛び込む。 


 「タケシ殿!」

 「ア、アダム様……なんかスパイと勘違いされているみたいで……助けてください……」

 

 暗い拷問室の中には、裸にされて天井から鎖でつるされた涙目のタケシと、普段は間者を相手にする厳つい顔の尋問官がいた。ターニアとギーはこの中には入れられない。アダムは部屋の鉄の扉を閉める。

 

 「尋問官殿、すぐにタケシ殿を解放してください。彼は他国の間者ではありません!」

 「聖剣の勇者様、それはできません。この男は怪しすぎる。ニホンと言う聞いたことのない国の名前を言うかと思ったら、他にも訳の分からない言葉を口にする。これは頭のおかしい人間か、何も知らないふりをした他国の間者である可能性が高い。ここは徹底的に、拷問で自白を引き出す必要があります」


 尋問官は厳しい目つきでアダムに説明する。

 アダムは尋問官の頭の固さにうんざりしつつも、譲歩を引き出そうとする。


 「それならば、俺たちが尋問に立ち会います。それなら文句はないでしょう!」

 「この男の発言を保証すると? 何か起きた場合の責任が持てますか?」

 「俺が責任を持ちます! ですから、タケシ殿を解放して、せめて服を着せてあげてください!」

 「わかりました……おい、解放しろ」


 アダムの要求に応じ、尋問官の部下が鎖を下ろし、タケシを解放する。別の部下が持ってきた元の薄手の服を着たところで、ターニアとギーを中に入れる。


 「大丈夫? タケシのおっちゃん?」

 「ええ、なんとか……ありがとうございます、アダム様、ターニア様」

 

 アダムとターニアに礼を言うタケシだったが、そこに尋問官が声をかける。


 「それでは、通常の尋問を再開しましょうか。勇者様も、よろしいですね?」




 勇者もいるから、と言う理由からだろうか、タケシとアダムたちは外務局の応接室に通された。


 「通常、このような部屋で、部外者も一緒に尋問することはないのですがね……まあいいでしょう」

 

 尋問官は嫌味を言いながら、タケシに対する尋問を始めた。


 「まず、タケシ=クボタとやら、貴殿の出身と所属をもう一度話してもらおうか?」

 「はい、出身国はニホン、所属は防衛軍のウチュウハンター部隊・トウキョウ基地です。カガク者をしております」

 「具体的には何をしている?」

 「インベ……魔物退治です。主に対魔物用に開発された新兵器を、実戦で使用するテスターをしております」

 「インベ、と言ったのは何だ?」

 「インベーダー、私の国では魔物のことをそう呼んでいました」


 尋問官がアダムの方を見る。こんなのを信用するのかと言っている目をしている。アダムは大きくうなずき、尋問官に続きを促す。

 

 「……我々の知る限り、この世にニホンと言う国は存在しない。お前は本当はどこから来たんだ?」

 「これは私の推測で、確証はないのですが……」

 「なんだ?」

 「おそらく、私の住んでいたニホンは……この世界とは違う異世界にあるのではないかと」

 「異世界? つまりお前は、異なる世界から来たというのか?」

 「はい」


 大真面目に答えるタケシに、尋問官は馬鹿にしたような笑みを浮かべる。アダム達がいなければ、このまままっすぐタケシを先ほどの拷問室に連行していただろう。

 一方のアダムも、聞きなれない言葉が出てきて戸惑っていた。

 異世界。

 この世界とは異なる世界、きっとそういう意味なのだろう。だが、実感がわかない。

 隣のターニアの方を見る。するとターニアは、なぜか興味深そうな顔をしている。もしかして理解しているのか。


 「ターニア、異世界と言うのはなんだ?」

 「アダム兄ちゃん、わからないの? この世界とは違う世界のことだよ」

 「もっと具体的に」

 「例えば、翼が生えた人がいる世界とか、ずっと夜の世界とか、巨人しか住んでない世界とか……物語でそういうの聞いたことない?」

 「ないな……だが何となく理解できた。つまりタケシ殿は、魔法が存在しない、カガクの世界から来たということか?」

 「たぶんね。そう考えると、ディメンダーXの強さとかも説明がつくんじゃない?」


 たしかに、ディメンダーXの異常な強さは、現在の世界の魔法技術では説明がつかない。魔法先進国のブリテンでも再現は不可能だ。だが、魔法の代わりにカガクが発展した世界の出身ということであれば、強引な理屈だが説明は付く。


 「異世界だなんて馬鹿馬鹿しい! 勇者様、やはりこいつは、どこかの国の間者ですよ!」

 「しかし尋問官殿、ディメンダーXの実力を考えれば、彼が異世界の出身だというのは間違いないと思います。尋問官殿もディメンダーXの戦闘力を見ればわかるはずです!」

 「それこそどうやって証明するのですか?」

 「それは……」


 アダムが言い淀んだその時だった。

 外から大きな悲鳴が上がる。


 「なんだ!……うわああああああ!」


 尋問官が部屋の窓を開けると、外から窓枠を破壊して、大人ぐらいの大きさの巨大なハエの化け物が飛び込んできた。

 大量発生するハエ型の魔物、ベルゼブブだ。10数匹で束になって侵入してきて、尋問官に群がる。


 「ギー!」

 「ちぇんじえくすかりばー!」


 アダムはエクスカリバーで尋問官に群がるベルゼブブの群れを一気に切り裂いた。

 さらにターニアの双剣と、タケシのパンチとキックが残ったベルゼブブを倒す。


 「大丈夫ですか!」

 「はい、なんとか……」

 「タケシ殿の武器は?」

 「受付で保管してあります」


 ベルゼブブに襲われた尋問官は厳つい顔をくしゃくしゃにしてアダムにタケシの武装の場所を教えた。

 アダムは外を見る。

 どうやら、ベルゼブブは王宮から現れているようだ。このままでは王が危ない。


 「尋問官殿は避難を……よし、行くぞ!」


 アダムはターニアとタケシを連れて、王宮に向かうことにした。

このあと、ハエの襲撃!

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