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5-3 命の爆弾

 デュアルマグナムから発射された糸を命綱に、深い穴の中を落ちていくアダムとクボタの二人は、しばらくしてようやく地下の底に辿り着いた。落ちてくる途中で蹴り飛ばされたスケルトンたちも、バラバラになって上から転がり落ちてくる。


 「ふう、到着!」

 「ふ、ふへえ……」


 クボタはきれいな姿勢で地面に着地。一方、クボタに抱きかかえられていたアダムは、今まで経験したことのない体験に目を回していた。エクスカリバーを杖代わりにして地面にへたり込む。


 「し、死ぬかと思った……なんてことしてくれるんですか、クボタ殿……」

 <ギーもびっくりした……コマちゃんもナナちゃんもひどいよ~>


 クボタへの抗議の声もいまいち覇気がない。心臓がバクバクしている。ニホンではこれが当たり前なのだろうか。


 「すみません、これが一番手っ取り早いかと思いまして」

 「クボタ殿……突拍子のない動きは勘弁してください」


 アダムはクボタから差し出された手を握り、ふらふらと立ち上がった。

 足元には追いかけてきたスケルトンたちの残骸が転がっていたが、それらもやがて霧散する。とりあえず危険は去ったようだ。

 目の前に頑丈そうな鉄の扉がある。おそらくこの先で『実験』が行われている……


 「アダム様」

 「クボタ殿、この先には何が起こるかわかりません。覚悟はいいですか」

 「はい。私は実験台にされた兵士たちを助け出します。アダム様はブラフを」


 アダムは聖剣エクスカリバーを、クボタはデュアルロッドとデュアルマグナムを持ち、扉に近づく。


 「てやああああ!」


 アダムは扉を勢いよく蹴り、二人は中に飛び込んだ。

 

 「こ、これは……!」


 中で行われている『実験機械』を見て、クボタは絶句した。

 扉の向こう、広い実験場の真ん中には大きな釜のような機械が鎮座していた。その周りを、いくつもの棺桶が囲み、それらの棺桶は管で釜のような機械とつながっている。棺桶の中にはジャンドール砦の兵士たちが眠っている。まだ生きているのだろうか?

 釜の底には火が焚かれ、棺桶から管を通して何かを吸い上げているようだ。


 「単純な構造だが間違いない、ソウルボムだ……!」

 

 クボタはそうつぶやくと大急ぎで駆けだし、デュアルロッドから刃を出して棺桶から伸びている管を次々と切り始めた。


 「クボタ殿、これは?」

 「ソウルボムです! 人の精神エネルギーを使って大爆発を起こす、非人道的な爆弾です! なんでこんなものが……!」


 ソウルボム? 精神エネルギー? 聞いたことのない言葉が出てきた。爆弾と言うからには兵器だろうか。アダムが詳しいことを尋ねようとしたその時だった。


 「クボタ殿、危ない!」


 背後から飛んでくる雷の魔力を察知し、アダムはエクスカリバーを振るってそれを弾いた。弾かれた雷魔法は実験場の壁に大きな穴をあけた。ディメンダーXに変身していない生身のクボタが喰らえば、確実に死んでいただろう。


 「ありゃりゃ、察知されてしまいましたか」


 アダムとクボタの背後、実験場の入り口には、仮面の悪魔・ブラフが立っていた。『実験』の妨害をするクボタを雷魔法で殺そうとしたのだろう。仮面に隠れて表情が見えないが、口元は不気味に笑っている。


 「ブラフ……!」

 「せーっかくニラーナさんの提供してくれた砦の兵士の皆さんで、命の爆弾を作ろうとしていたのに。何をしてくださっているんですか、ディメンダーXさん?」

 

 命の爆弾……!

 クボタの言うソウルボムとは、命の爆弾のことだったのか!

 この装置は棺桶の中の兵士たちの命を何かしらの方法で吸い上げ、管を通して釜のような機械に送り、命の爆弾を精製しているのだろう。

 命の爆弾――トゥーリー村で、オークたちが村人たちを犠牲に作ろうとしていた爆弾だ。企みは間一髪のところで阻止されたが、まさかそれをジャンドール砦の兵士たちを『材料』に作ろうとしていたのか。

 

 ブラフはどこからか剣を取り出した。棺桶と釜をつなぐ管を切るクボタを殺すつもりだ。

 

 「待て、ブラフ」


 駆けだしたブラフの前に、アダムが立ちふさがる。2人の剣と剣がぶつかり合う。


 「どいていただけませんかね、アダムさん。私は大事な実験を台無しにしようとしているディメンダーXさんを殺さないといけないのですが……」

 「悪いがお前の相手は俺だ。勇者のリーダーとして、聖剣の勇者として、お前によって受けた屈辱をこの場で晴らす。勝負だ、ブラフ!」


 アダムはブラフに1対1の決闘を申し込んだ。

 ブラフは急に笑い出した。


 「ハハハハハハ……おもしろい、おもしろいですね、アダムさん。今時時代錯誤な決闘とは……いいでしょう、受けて差し上げます。しかし」


 突如、実験場内に『霧』が立ち込める。床が盛り上がり、割れて剣を持った無数のスケルトンが現れる。ただのスケルトンではない、霧の影響で無限に発生し続ける恐るべきスケルトンだ。


 「卑怯だぞ、ブラフ!」

 「何か勘違いされていませんか? このスケルトンたちはディメンダーXさんの妨害用ですよ?」

 「クボタ殿!」


 スケルトンたちがクボタに襲い掛かる。クボタはその攻撃をかわしつつアダムに向かって叫んだ。


 「アダム様、自分は大丈夫です! アダム様はブラフを!」

 「……かたじけない!」


 アダムは改めてブラフに向き直る。


 「ブラフ、覚悟!」

 「フフフ……こっちですよ、アダムさん」

 「待て!」


 ブラフは後ろに下がり、アダムを実験場から引き離すかのように、らせん階段の広間へと誘導する。アダムとクボタを分断するつもりだ。


 (いいだろう……乗ってやる!)


 アダムはブラフを追いかける。

 クボタはスケルトンたちと戦う。

 2人の、それぞれの戦いが始まった。

このあと、ジャイアントオーク再び!

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