表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/50

5-0 単独行動

 ディメンダーXこと、宇宙ハンター部隊に出向中の科学者・久保田武は、次元艇ディーフェニックスでインベーダーを追跡中、ワープ空間からインベーダーの発生源である『ネスト』内に迷い込む。

 ネストの内部はインベーダーの巣窟であると考えられていた。しかし、ネストはインベーダーの巣窟ではなく、地球とよく似た異世界だったのだ。

 ネストの中で武は、インベーダーを『魔物』と呼び、それらと戦う『勇者』たちと出会った。

 ジャンドール砦から逃亡したニラーナ将軍は、魔王軍と内通していた。『魔物寄せ』という薬物を使い、スケルトンタイプの大群をけしかけて勇者たちの抹殺を企む。武はディメンダーXに変身。ブルーマジシャンとレッドブレイカーの力を使い、スケルトンタイプを一掃した。

 ニラーナ将軍の企みを阻止したと思った次の瞬間、武たちの目の前に現れたのは、ダークゾーン内部で倒されたはずの人型インベーダー・ブラフだった。


---------------------------------------- 


 ブラフは『永遠の闇』を発生させた。

 中から大量のゴブリンがあふれ出てくる。


 「それでは皆さん、ごきげんよう」

 「待て! ブラフ!」

 

 ブラフは永遠の闇の中に消えてしまった。アダムは追いかけようとするが、囮のゴブリンたちの攻撃に阻まれて前に進めない。ブラフが飛び込んだ永遠の闇は、そのまま夜の闇に溶け込むように消え去ってしまった。


 「くそ! 逃がしたか!」


 ゴブリンを切り裂きながらアダムは悔しそうに叫んだ。

 永遠の闇が消えたためゴブリンが無限にあふれ出ることはなく、着実に数は減ってきている。しかしそれでも数が多い。アダム・ビル・ターニアの3人が前衛で剣を振るい、カルロスが後衛から狙撃し、ディメンダーXが群れの真ん中に飛び込んで遊撃しても追いつかない。


 「キリがない……! 『終末の音速剣』!」


 アダムは切り札の終末の音速剣を使った。目にも止まらぬ速さで魔力を込めたエクスカリバーを振るい、目の前のゴブリンの群れの半分ほどが倒される。しかし、そこでアダムの勢いが止まってしまい、技の反動で大きな隙が生まれてしまう。


 「やばいよ! アダム兄ちゃん!」

 「大丈夫だ! ……クボタ殿!」


 アダムの言葉を受け、ディメンダーXはデュアルマグナムの×印を押し、すばやくXコマンダーを操作する。


 <フィニッシュモード・スタンバイ……フルバースト!>

 「マグナム・フィニッシュ!」


 ディメンダーXはデュアルマグナムを構えて薙ぎ払うようにその場で回転する。デュアルマグナムから放たれた光線が、残ったゴブリンたちの体を貫き、切り裂いた。

 こうして、ブラフの残したゴブリン達は掃討された。




 ゴブリンを掃討したアダム達は再び馬車に集まった。

 

 「とりあえず何とかなりましたな、アダム殿」

 「しかし、ブラフが生きていたとは……どうしましょう、リーダー?」

 「そうだな……」


 カルロスに問われて、アダムは考える。

 ジャンドール砦の兵士たちの生存は……残念ながら絶望的だろう。何より追いかければブラフと遭遇する可能性が高い。

 アダムは拘束されているニラーナに尋ねる。


 「ニラーナ将軍、ブラフの『実験』について何か知りませんか?」


 ブラフは去り際に『実験』を行うと言っていた。この『実験』の中身が気になる。


 「……死の館」

 「はい?」

 「……死の館だ……そこでブラフは実験を行うと言っていたのを聞いたことがある……」

 

 死の館……不気味な名だ。おそらくそこに、ジャンドール砦の兵士たちはいる。生きているかどうかはわからないが……


 「その死の館はどこにあるんですか?」

 「わからん……そこまでは聞かされていない……」


 ニラーナは全てに絶望した表情で、消え入りそうな声でそう答えた。


 「アダム様、もしブラフが死の館に向かっているのなら、追尾できます。ナナシキを放っておきました」


 変身を解いたクボタが言う。よく見ると右肩に付いていた箱――ナナシキがない。いつの間にかブラフを追跡させていたらしい。


 「アダム殿……まさかブラフを追いかけるつもりですか? いくらなんでも危険すぎますぞ! 砦の兵士たちの生存ももはや絶望的! 無理をする必要はありません!」

 「分かっています、先生……ですから、ニラーナ将軍を王都まで護送することを優先します。ブラフのことは王都で補給を済ませてから考えましょう」


 ブラフ追跡に反対するビルに対しアダムはそう答えた。



  

 深夜。


 「ギー、起きているか?」

 「……どしたの、アダム?」


 食事を終え、皆が寝静まったころ、アダムは小声でXコマンダーを抱えて眠るギーを起こした。


 「ちょっと死の館まで出かけようと思う。ついて来てくれないか?」

 「……? 王都に戻ってからやっつけるんじゃなかったの?」

 「あれは嘘だ。俺はブラフとの決着をつけたい。それにはお前の力が必要だ。モニカとヴォルフを死なせ、アミアンで多くの犠牲を出したリーダーとしての責任を取りたい……」


 アダムの独白にギーはしばらく考え込み、無言で頷くとギーはエクスカリバーの姿に変わった。


 <アダム、今回はギー、口出ししない。でも最後まで一緒に戦う>

 「ありがとう……」


 アダムはエクスカリバーを持つと、皆を起こさないよう、こっそり出発しようとする。

 だが、


 「アダム兄ちゃん、待って」 

 「ちょっと待って、アダム君」

 

 見張りをしていたターニアと、いつの間にか起きていたリサに呼び止められてしまった。

 

 「アダム君、ビルさんの言う通り、ブラフを追いかけるのは危険よ。やめておいた方がいいわ」

 「アダム兄ちゃん……アダム兄ちゃんが全部背負い込む必要はないよ。どうしても行くなら、僕も一緒に――」

 「ターニア、リサさん……悪いが止めないでくれ。俺はブラフと決着をつけたい。だが、かなり危ない橋だ。こんな愚策にみんなの命を懸けるわけにはいかない。みんなを連れてはいけない。俺が一人で決着をつける」


 アダムの決意は固かった。危険と分かっていても、自分自身のプライドのために、かつリーダーとして仲間を危険にさらさないように、アダムはブラフのいる死の館へ乗り込むつもりだった。


 「大丈夫です、リサさん。今回は命を捨てるような真似はしません」

 「そう……しょうがないわね……」


 アダムの決意を聞いて、リサは肩をすくめた。


 「アダム君、必ず帰ってきなさい。それが条件よ」

 

 リサはアダムが行くことを認めた。

 

 「ちょっと、リサさん!?」

 「これはダメね……ターニアちゃん、アダム君の決意は固いわ。何を言っても無駄よ。それにアダム君がここまで覚悟を決めているなら、もう止める必要はないわ」

 「そんなあ……」


 ターニアは落胆する。


 「ありがとうございます、リサさん。必ず生きて帰ってきます。行ってきます」

 「……ちょっと待って、アダム兄ちゃん」


 出発しようとしたアダムをターニアが呼び止める。


 「死の館がどこにあるか、わかるの?」

 「…………適当に探す」

 「それじゃあいつまでたってもたどり着けないでしょ……」

 

 呆れるターニアに、アダムは何も言えない。

 そんなアダムに、ターニアはボソッと呟いた。


 「……北北東」 

 「え?」

 「北北東! クボタのおっちゃんが食事中にそう言っていた。大体の方角は北北東だって。そこに向かえば死の館はあると思うよ」


 「分かった。ありがとう、ターニア……行ってくる。みんなは先に王都に向かっていてくれ」

 <ありがとう、ターちゃん。ギーも頑張るね>


 ターニアから情報を得て、アダムはエクスカリバーと共に出発することにした。

 アダムの姿が、夜の闇の中に消えていく。


 「アダム兄ちゃん……ギーちゃんも、気を付けてね……」


 ターニアは寂しそうに、死の館へ向かうアダムを見送った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ