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4-4 裏切り者

 「アダムにいちゃーん! クボタのおっちゃーん!」

 「アダム殿……ご無事でしたか!」


 馬車に戻ってきたアダムとクボタをターニアとビルが出迎える。

 カルロスやリサ、マリー達も出て来る。


 「リーダー、どこ行っていたんですか。あなたが遭難するとは珍しい」

 

 カルロスが心配そうに聞いてくる。エクスカリバーをギーに戻しつつアダムはスケルトンの急襲を伝える。


 「みんな、これは罠だ。大規模なスケルトンの急襲を受けた。この霧はおそらく人為的なものだ。俺たちを分断さて各個撃破させるつもりだ!」


 勇者たちの間に衝撃が走る。


 「アダム君、ちょっとそれってヤバいんじゃ……」

 「ここに留まるのは危険です! すぐに移動しましょう」


 リサにそう答え、アダムは移動を提案する。この場に留まっていては敵に取り囲まれてしまう。


 「何だ……何事だ? 騒々しい」


 外で話していると、不貞腐れて馬車の中に引きこもっていたニラーナが出てきた。 


 「せ、聖剣の勇者……!」


 ニラーナはアダムの顔を見るとあからさまに驚愕の表情を浮かべる。まるで幽霊でも見ているかのような、おかしな顔……


 「将軍、あなたのおっしゃる通りでした! これはおそらく魔王軍の罠です! このままでは敵の集中攻撃を受けます!」

 「あ、ああ……」


 アダムの進言に対する返事もどこかおかしいような……


 「あの、ちょっとよろしいでしょうか? ええと、あなたは……」

 

 その時、クボタがニラーナに話しかけた。初対面なのでクボタはニラーナの名前を知らない。話しかけられたニラーナは面倒くさそうにクボタの方を見る。


 「ニラーナだ……軽々しく話しかけるな、東洋人! 私は将軍だ!」

 「そうですか……国際インベーダーハンター条約に基づき、緊急捜査権を行使します。将軍、失礼します!」


 クボタはいきなりニラーナの軍服のポケットに手を突っ込んだ。


 「お、おい、貴様何を!」

 「ク、クボタ殿!?」

 

 突然のクボタの行動に、アダムは混乱する。

 クボタはニラーナの軍服のポケットから、何かを引き抜こうとしている。ニラーナはそれを妨害する。アダムたちが茫然としている中、クボタは強引にポケットの中身を抜き取った。


 「アダム様、これを見て頂けませんか?」

 

 アダムはニラーナの軍服のポケットから抜き取ったもの――緑色の液体の入った小瓶を見せた。


 「なんですか? これは……」


 見せられてもアダムには分からない。だが、リサとマリーの顔が青ざめる。


 「こ、これって……うそでしょ……!」

 「魔物寄せ……初めて見た……!」

 「リサさん、マリー、知っているのか?」


 リサとマリーは息をごくりと飲んで話し出す。


 「魔物寄せの薬……名前だけは聞いたことがない? 散布すれば魔物を引き寄せ、活性化させる薬物……国際軍事条約で製造・所有が禁止されている危険薬物よ!」

 「教会の中でも禁忌とされている薬品です……なんでこんなものを将軍が持っているのですか……? あなた私たちを陥れただけじゃなく、こんなものにまで手を出して、何のつもりなんですか?」


 優秀な魔導士であるリサと教会と縁の深いマリーは、魔術関係や禁忌とされている道具については詳しい。間違いないだろう。

 全員がニラーナの方を見る。


 「どういうことですか? 将軍……」   

 「……ばれてしまってはしょうがないな」


 ビルに剣を向けられ、ニラーナは面倒くさそうに打ち明けた。


 「すべてお前たち勇者が悪いのだ……勇者が弱いから、私は生き残るために魔王軍と手を組んだだけだ」

 「魔王軍と手を組んだだと……?」

 

 裏切られ、怒りがこもったビルの視線にもニラーナは平気な顔をしている。


 「お前たちがアミアンで敗走したとの連絡があってすぐ、ブラフから取引を持ちかけられてな……協力してくれるのならば、私の命と財産だけは助けてくれると言った。私は取引に応じた。そして再び連絡があった。魔物寄せを使って勇者たちを殺せ、とな」


 ニラーナはあっさりと、魔王軍との――ブラフとの関りを認めた。

 アダムも小声で「ギー」と呟き、エクスカリバーを構える。そこまでされてもニラーナは余裕の表情を崩さない。


 「クボタとやら……なぜ私が魔物寄せを持っているのが分かった?」

 「レーダーデバイスで、あなたの軍服から異常なホウシャセンが発せられているのが確認された。インベーダーを……魔物を誘発させたこともある危険なホウシャセンパターンだ。だからおかしいと感じた」

 「意味の分からん言葉を話すな……貴様一体何者だ?」

 「ニホンのウチュウハンター部隊所属のカガク者だ」


 クボタとニラーナはにらみ合う。互いに武器は持っていないが、緊張した空気が漂う。

 

 「ニラーナ将軍、どちらにしろ証拠が見つかった以上、あなたは終わりだ。魔王軍への協力容疑で拘束する。ターニア、忍術用の縄を貸してくれ」

 「うん」


 アダムはクボタをかばうようにニラーナの前に立ちふさがった。そのままターニアと共にニラーナに近づき、その両手を背中に回して縛る。ニラーナは一切抵抗することなく、アダムたちによって拘束された。

 

 「将軍……ジャンドール砦を任されていたあなたがどうして……」

 「言ったはずだ、この戦いで勇者が不利なのは……王国が不利なのは目に見えている。私は生き残りたかっただけだ」

 「あなたには軍人としての……貴族としての誇りはなかったのですか?」


 アダムの悲しそうな問いかけを、ニラーナはあざ笑うようにして言い放つ。


 「誇り……そんなものが何の役に立つ? そんなことより金と命だ! それがなければ私は……私の人生は満たされない!」


 ダメだ……この人は欲望におぼれ、家が長年積み上げてきた誇りを失い、堕落しきっている。

 

 「ニラーナ……貴様……!」

 「そんなもののために、私たちは信用を奪われ……すべてを失った……!」

 「無駄ですよ、ビル殿、マリー。この人には何を言っても通じない。それよりもニラーナ将軍、あなた砦の兵士を殺しましたね?」


 激昂するビルをカルロスがなだめながら、驚くべきことを言った。


 「どういうことだ、カルロス?」

 「リーダーを襲ったというスケルトン……スケルトンは人の死体から生まれると言われています……実際は人間の死体を触媒に生まれているのですが。おそらく手軽に魔物を用意するため、兵士たちを殺し、その死体に魔物寄せを使った……スケルトン化させた」


 魔物寄せは魔物を引き寄せ、魔物を活性化させる。人間の白骨死体に使えば、当然魔の力が活性化し、スケルトンの発生を誘発させる。

 カルロスに追及されても、ニラーナは不気味な笑みを浮かべたまま何も言わない。肯定しているというのか。もし本当に何らかの手段で兵士たちを殺しているのであれば、軍法会議で厳罰は避けられない。王国に対する、完全な裏切り行為だ。


 「将軍……何とか言ったら?」

 「……良いことを二つ教えてやる」


 しびれを切らしたターニアが、ニラーナの首にナイフを近づけ自白を迫る。

 ここまでされてもニラーナは余裕を崩さない。質問には答えずに一方的に話し出す。


 「私が事前に魔物寄せを散布してスケルトン発生に使った兵士の死体は20体程度だ。残りは生きた状態で別の実験で使われている。そして……」


 いきなり、アダムたちの周りに濃ゆい霧が発生する。

 周囲の茂みから、多数の物音がする。骨が鳴るような音が聞こえる。


 「時間切れだ……お前たちは私のスケルトン軍団の餌食になる」


 ニラーナが不気味な笑みを浮かべる。

 気が付くと、アダム達はスケルトン軍団に囲まれていた。 

このあと、ディメンダーXが大暴れ!

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