4-2 霧
「ターニア、本当にここなのか?」
「ごめん、ビルのおっちゃん。確かにこの近くから10人くらい気配がするんだけど……」
アダムたち3人は、ターニアの指示の下、ジャンドール砦の兵士たちを探して茂みの中を歩きまわる。ターニアが指定したこの近くにいるはず、というポイントまでたどり着き、3人は周囲を探索する。だが、兵士の姿は全く見えない。何の収穫もないまま、時間だけが無為に過ぎていく。
「10人もいれば、すぐに他の兵士たちと合流できるのだがな……」
アダムも呟きながら茂みをかき分ける。兵士どころか獣や魔物の姿も見えない。
時間はどんどん過ぎていく。辺りは暗くなっていき、探索は困難になってくる。
「おかしいな~? なんで誰もいないんだろう……?」
「アダム殿、そろそろ時間的に限界ではないかと……」
「そうですね……」
夕陽が山の向こうに沈もうとしている。残念だが時間切れだ。
「しょうがない。いったん馬車まで戻ろう。今日は野宿だ」
アダムは捜索を打ち切り、戻ることを選択した。
「だがその前に」
アダムは振り返ると、素早くエクスカリバーを振るう。
いつの間にかアダムの背後から飛んできた一本の矢が、斬られて地面に落ちた。
「魔物退治だな」
茂みの奥から、数体の弓矢を構えて鎧をまとった骸骨の魔物――人の死骸から生まれると言われる魔物・スケルトンが現れた。
アダム達は戦闘態勢に入る。
「行くぞ!」
スケルトンが一斉に矢を放つ矢を放つ。
「『守りの太刀』」
ビルの硬い防御がスケルトンの攻撃を防ぐ。その隙に、アダムとターニアがビルの守りの両サイドから飛び出し、スケルトンたちに斬りかかった。
「たあああああ!」
「てやああああ!」
ここのスケルトンたちはそこまで強くはない。反撃する間もなくアダムとターニアの連続斬りを喰らい。黒い霧となって消滅した。
「次だ!」
地面が盛り上がり、地中に潜んでいた剣を持ったスケルトンが襲い掛かってくる。
「『影縫の術』!」
「『剣の舞』!」
ターニアの忍術が、スケルトンたちの動きを攻撃してくる前に封じ込める。その隙を縫ってアダムの剣術がスケルトンたちを瞬く間に切り裂いていく。
「ふう……」
「これで全部かな?」
スケルトンたちを瞬殺し、3人は一度集まる。
「魔物も出てきましたな……急ぎませんと」
「そうだね。急ごう、アダム兄ちゃん」
「ああ」
夜は魔物の動きが活発になる。ビルとターニアに促され、アダムは急ぎ馬車に戻ることにした。今夜は久しぶりの野宿になりそうだ。
――そういえば、クボタ殿は大丈夫だろうか……?
アダムは森の中に置いてきた自転車を回収しに行くため、ラライアン村に残してきたクボタのことを思い出す。そろそろ追いついてこないと彼は一人で野宿することになる。かなり危険なはずだが……いや、ディメンダーXなら大丈夫なのか――
「どうしたの? アダム兄ちゃん」
「いや、何でもない……急ごう」
ターニアの言葉でアダムは現実に引き戻された。馬車に向かって再び歩き出した。
元来た道をひたすら戻る。
「霧が出てきましたな……」
なんの前触れもなく、濃い霧が立ち込めてきた。
「不気味だな。何か嫌な予感がする……」
「怖いこと言わないでよ、アダム兄ちゃん……」
3人は固まり、周囲の警戒を強める。魔物の出現も確認された以上、霧で視界が悪くなるのは良いこととは言えない。このまま無事に戻れるか、少し不安になってくる。
「2人とも、一応警戒を強めてくれ」
「了解です」
「分かった」
彼らは霧の中を進む。途中でまたスケルトンに遭遇するかと思ったが、スケルトンどころか魔物は一切出現しなかった。霧で視界が悪いこと以外は順調だった。
そしてしばらくして、馬車のところまで辿り着いた。
「ふう、やっとたどり着いたな……」
「ただいま~」
ビルとターニアを、留守番をしていたカルロスたちが出迎える。
「おかえりなさい。どうだった?」
「ダメだった……誰も見つけることはできなかった」
「ごめん、確かに気配を察知したはずなんだけど……」
「本当に兵士たちの気配だったのか?」
「間違いないよ~」
リサの問いかけにビルとターニアが答える。その時、カルロスが気付いた。
「あれ? リーダーととギーちゃんは?」
勇者たちは辺りを見回す。
彼らのリーダーである、アダム=レオトレーシーの姿が見えない。
「アダム殿ーっ! アダム殿ーっ!」
「アダムくーん! いたら返事してーっ!」
ビルとリサが大きな声で呼びかけるが、返事はこない。
霧の向こうを見つめる。白い霧はさらに濃ゆくなっているような気がした。
「アダム兄ちゃんが……ギーちゃんがいなくなっちゃった……」




