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1話
元々短編小説として投稿するつもりだったので1話が短めです。
よろしくお願いします。
「おはようございます。幸村様。」
意識が覚醒したタイミングを見計らったかのような声に朝の訪れを感じる。
目を開けるとカーテンの向こうから差し込む朝日が眩しかった。
それからたっぷり時間をかけて上体を起こすとようやく俺は声の主の方を向いた。
「おはよう、紗菜。」
ベッドの上に座ってちょうど視線が合うくらいの小柄なメイド服の女の子。
黒い髪は綺麗に肩の上で切り揃えられて微かに動く度にさらさらと揺れた。
そのままじっと見つめていると紗菜は耐えきれなくなったのか視線を反らした。
「あ、あの!ご主人様、どういたしますか...?」
俺は無意識にその綺麗な髪を撫でた。
「そうだな、朝食を頂こう。」
ここまでが朝の日課。毎朝することだ。
欠かさずに。
もう一度カーテン越しに太陽の光を堪能した後、俺は誰もいなくなった寝室の壊れた扉に手をかけた。
小さな破砕音がして真鍮の取っ手が手の中に転がった。