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カタコンベのシャレコウベ ~様々な思い~

(いったい、誰が……)


 何十何百という墓標が建ち並ぶ空間で、僕は真摯にそう思った。

 初めはただ、神牙さんを救出するだけの目的でここに来たが、どうやらそれとは別に、大きな事件の片鱗を見てしまった気がする。

 まさか、神牙さんが解決しようとした事件に、この多くの墓標は絡んでいるのだろうか?

 だとしたら、神牙さんの捜索にも力が入る。あの駅に、神牙さんらしき人影は無かった。まだ希望的観測に過ぎないけど、もし神牙さんがあの巨人との戦いに勝ったなら、必ずここに来たはずだ。あの駅のホームの、砕かれた床が何よりの証だと思う。


「鳴海君、コレを見てくれ」


 墓標を見ていたアシュリンさんが、僕の方を向いて口を開く。

 僕はアシュリンさんの傍まで行き、近くの墓標を見た。


『1504 平成〇〇年 没』


 墓標にはそれだけ刻まれていた。


「これって……」

「うむ、他の墓も調べてみよう」


 そして、僕達は手分けして他の墓標を調べてみたが、そのほとんどに四つの数字と没年日が刻まれていた。


「平成って……つい最近でありますな……」


 あらかた墓標を見回った大倉さんは、ブルッと巨体を震わせた。

……確かに、ここにある墓標の数だけ人が亡くなっていたとしたら、それなりにニュースになると思う。

 それほど多くの墓標が、この空間にはある。この施設で亡くなったのか、あるいは他の場所で亡くなったのかは分からないけど……遺族はこの事を知っているのだろうか? あるいは、亡くなった方達が元々は行方不明者だったり、ホームレスだったという可能性もある……言葉は悪いが、そういった方達が突然いなくなって、亡くなってしまったとしても、それを気にする人はほとんどいないだろう。


『1504 平成〇〇年 没』


 僕はもう一度、最初に見た墓標に刻まれた文字に注目した。

……そうだ。確か、僕達が線路で見た遺体の手首にも、『1504』と刺青が刻まれていたはずだ。まさか、あの遺体はこの数字が刻まれた墓から掘り起こされたのだろうか?

 いや、そこまで古い遺体ではなかった。仮に掘り起こしたとしても、あのまま放置していたらすでに白骨化しているはずの年月が経っている。

 だとしたら、この墓標に刻まれた数字と、あの遺体に彫られた刺青の数字には、なんの関連もないのだろうか? 偶然の一致にしては、少々出来過ぎている気がする。


「平成〇〇年か……やはり臓器売買に関連する組織が――」

「あら、臓器売買の組織って、内臓を抜いた死体のために墓を作るのね? ずいぶんとお優しいことだわ」

「組織の中に、良心の呵責かしゃくに耐えきれなかった者がいるのだろう。そのものが、組織には秘密でこの墓を作ったのかもしれない」

「だとしたら、この先には臓器密売組織のアジトがあるっていうわけ?」

「そこまでは分からないが……行ってみる必要はある」


 アシュリンさんとカチューシャさんとの会話を聞いて、僕は急に神牙さんの命が心配になってきた。

 もしアシュリンさんの言うように、この施設のどこかに臓器密売組織のアジトがあったら、間違いなく危険な目に遭う。

 メキシコの麻薬カルテルなどは、軍隊並みの重武装をしていると聞いたことがある。

 あいにく臓器密売組織がどの程度武装しているかは分からないけど、まず間違いなく、今の僕達より有利な武器を持っていると考えるべきだろう。

 最悪の場合、神牙さんの亡骸を持って帰る羽目になるかもしれない。

 もしかしたら、僕らも死人になる可能性がある。

 まだ確証はないけど、こちらは武器一つ持っていないのだ。

……ここで逃げるわけにはいかない。何はともあれ、気を引き締めなければいけない。

 僕は意を決して、奥に見える鉄製の扉へ歩き始めた。他の人も、決意を固めたように付いてきてくれる。

 そして、僕達は鉄製の扉を開けて中に入った。


「……すごいな、これは」


 中に入ってアシュリンさんが発した第一声はそれだった。

 確かに、この施設はすごい。先程までいた地下墓地とは違って、近代的な研究施設と寂れた施設とが融合したような印象を受ける。


「あの……あたし、もう少し地下墓地の方を調べてもいいかしら? ちょっと、気になる事があるの」

「え?、えぇ、大丈夫ですよ」

「ありがと。じゃ、ちょっと行ってくるわ」


 僕の後ろにいたカチューシャさんは、ニコリと笑って地下墓地の方へ行ってしまった。彼女が気になる事があるということは、なにか分かれば有益なものに違いない。

 ということで、ここからは僕と大倉さん、アシュリンさんの三人行動となる。


「では、行きましょう」

「ああ」

「了解であります」


 僕を先頭にしばらく通路を進むと、奥に見える曲がり角から人影が現れた。


「あっ!」


 思わず、声が出てしまった。

 そこで、僕達は思いがけない人物と遭遇してしまったのだ。


「あ、あなたはっ!」


 大倉さんも、口をあんぐりと開けて驚いている。それも当然だろう。僕達の目の前には、


「またあなた達ね……」


 かつて都内を震撼させた連続大量殺人事件の主犯、飯島佳代子がいたからだ。


「う、動くなっ!」


 思わずそう言ってしまったが、僕らに勝ち目はないだろう。

 目の前にいる彼女が、あの時、あのビルで出会った彼女と同一人物なら、その力は人間の膂力を大きく上回っていると思う。

 少なくとも、あの時彼女に気絶させられた僕はそう感じている。ましてや、今の彼女はあの時と同じように右手に刃物を握っている。仮に格闘することになっても、とても勝ち目は薄いだろう。

 彼女の異様な様子を察したのか、アシュリンさんも思わず半身で構えている。


「お待たせ~、ごめんね? やっぱり何も無かったわ」


 極限まで張りつめた空気の中で一人だけ、後ろからのんびりした声色で近づいてくる人物がいた。カチューシャさんだ。


「あれ? 誰、あの人? この施設の関係者かしら?」

「……お前はニュースを見ないのか?」


 飯島佳代子から視線を外さず、アシュリンさんが呆れ果てたように言った。


「そりゃ、大手メディアなんて大衆を洗脳する道具でしかないもの。真理は常に自分の心の中にしかないわ」


 決してためらうことなく持論の述べるカチューシャさんだったが、僕らの目の前にいる飯島佳代子はこれでもかというほど殺気を放っていた。


「神牙さんはいいわ、仕方ないもの……いきなりこんな施設に呼び出されて、いくら私が一緒にいたいからって無理やり監禁されて……挙句の果てに訳の分からない怪物達と戦って……だから、あの人とはしばらく時間を置いて話す事にするわ。でも……あなた達はなんでここにいるの?」

「わ、我々は、神牙を連れ戻しに来ただけでありますっ!」


 大倉さんが、声を震わせながら答える。

……ん? 声を震わせているという事は、大倉さんは怖がっている? 大倉さんが怖がっているという事は……まさか、飯島佳代子はすでに幽霊に――


「フン、ま、いいわ」


 僕がそんな考えを巡らせていると、飯島佳代子は鼻で笑って通路から退いてくれた。


「どうせ、今の神牙さんはあなた達の呼びかけにも反応しないわ……私の話にも、耳を傾けてくれないもの」


……それは、ただ単にあなたが怖いだけなんじゃ……。


「あの人なら、この通路を進んで左に曲がった先にある右側の扉の中よ」


 彼女はその方向の通路を指差して、その通路とは反対の方向へ立ち去ってしまった。


「待てっ!」


 とは言うものの、僕や大倉さんの足は大地に根を張った大木のようにまったく動かない。

 しばらくして体の自由を取り戻すと、アシュリンさんが僕らの方を向いて言った。


「……どうする? 連続殺人犯がこの施設の中にいるわけだが?」


……正直言って、彼女を逮捕をしようと思っても、出来ない可能性がある。それほど、彼女の身体能力は高い。

 それよりも、彼女の言う事を信じて神牙さんを助けることを優先した方が良いと思う。


「……僕は、神牙さんの救出を優先します」

「……そうか、分かった」


 アシュリンさんはそれだけ言って、一人だけスタスタと先を進んでしまう。

 僕達も後を追い、飯島佳代子がいた通路まで来ると、彼女が立ち去った方向の通路を慎重に見た……すでに、飯島佳代子の姿はない。てっきり通路の死角に隠れて僕らを待ち構えていたと思ったんだけど……。

 とにかく、彼女がいない今が好機だ。

 僕達が飯島佳代子に言われた通りに通路を進むと、確かに通路の右側の壁に扉があった。

 しかし、僕が驚いたのは、通路に僕が見た巨人と同じような姿をした生物が横たわっていた事だ。

 アシュリンさんやカチューシャさんは、その生物が気になるのか、動かなくなった巨人の姿を見つけては、名残惜しそうにチラッと横目で見る。

 だが僕としては、今は巨人の事より神牙さんの無事を確認する想いが先行していた。

 そして、僕はその扉の前に立ち、小さく二回ほどノックする。


「神牙さん? 僕です、鳴海です」


 僕がそう言うと、中から物音がして神牙さんの声が聞こえた。


「……鳴海君? 来てくれたのか?」


 神牙さんは普段通りの声色で、僕にそう問いかけた。


「あの後、病院まで運ばれてアシュリンさん達とここに来たんです」

「アシュリンと? 彼女もそこにいるの?」

「ああ、ファング。私もいる」

「あたしもよ、ファング」


 神牙さんの言葉に応えるように、アシュリンさんとカチューシャさんが扉に向かって語り掛ける。


「ケガはしていないか?」

「問題ないよ」


 しばらく沈黙が流れて、扉がゆっくりと開いた。


「……やぁ」

「神牙さんっ!?」


 よかった……見た感じ、神牙さんは元気なようだ。

 神牙さんは僕らを部屋に招き入れ、近くの壁に寄りかかって座り込んだ。


「……多少は希望を持っていたが、まさか、本当に助けに来てくれるとはね、ありがとう……」


 神牙さんは優しい微笑みを浮かべて、僕達にそう言った。


「いえ、そんな……」


 僕はただ……あなたが心配だっただけです。

 神牙さんの全身を見た感じ、ケガはしていないようだけど、全身に赤黒い液体が掛かっている。


「その……神牙さん。身体に血のような液体が付いているみたいですけど?」


 僕にそう聞かれて、神牙さんは自分の手足を見て今初めてそれに気づいたように目を見開いた。


「……たぶん、巨人と戦った時に浴びたんだと思う。問題ないよ」

「そうですか……その、お腹すいていたりとかしないですか?」

「いや……彼女が……飯島佳代子が私に食事をさせてくれていたから、特に問題ないよ」

「ああ……そうなんですか」


 どういうことだろう……なぜ彼女は神牙さんに食事を……?

 まぁ、そのおかげでこうして神牙さんが元気でいてくれたからいいけど……。


「……あまり、驚かないんだね?」

「え?」

「飯島佳代子の事だよ。それとも、彼女にはもう会ったの?」

「え、ええ。先程……」

「自分もだ……」


 そう言って、神牙さんは『そっか』と言って微笑みを浮かべた。


「話はもういいか? できれば、早く脱出したいのだが?」


 神牙さんが無事なことに安心したのか、アシュリンさんはいつものトーンに戻って催促した。

 それに神牙さんも答える。


「うん、そうだね。でも……まだやり残したことがあって……」

「なんだ、それは?」


 大倉さんが問い詰めた。


「……飯島佳代子だよ」

「それは……悔しいですが、僕らにはどうしようもないのでは?」

「だからと言って、彼女を野放しにするわけにはいかない……それに、奴の事もあるしね」


 そう言って、神牙さんは誰もいない空間を睨みつける……神牙さんには、何か別のものが見えているのだろうか?

 いずれにしても、神牙さんがそう言っている以上、やるべきことは一つだ。


「……分かりました。それでは、飯島佳代子を連れてここから出ましょう。それなら構わないでしょう?」

「うん、それでいいよ」


 こうして、僕達は施設からの脱出を始めた。


          ※


 まさか、こんなタイミングで鳴海刑事達が助けに来てくれるとは……ありがたい反面、この事態をどう乗り切ればいいか、思い悩んでしまう。

 まず第一に、この霊体の女性だ。彼女は鳴海刑事達の姿を見てから、明らかに動揺している。

 もう一人は、飯島佳代子だ。一応、鳴海刑事達には彼女もこの施設から連れ出すことを話したわけだが、果たしてそんなにうまくいくだろうか?

 まぁ、やってみなければ分からない。

 そして、私達は部屋の外に出た。と同時に、施設内の電灯がチカチカッと点灯し始め、施設全体が強く振動し始めた。

 ふと後ろの部屋を見ると、霊体の女性が憤怒の形相を浮かべていた。

 本能的に危険を察知した私は、みんなに急いで飯島佳代子を連れて施設から脱出することを進言し、返事を聞かぬまま、飯島佳代子がいるであろう部屋へ突入した。


「か、神牙さんっ!?」


 彼女は私が部屋に入ってきたことに驚いており、イスに座ったまま硬直していた。

 私は彼女に駆け寄ってその白い手首を掴むと、そのまま部屋から引っ張り出した。

 私が部屋から出てくると、他の皆は施設の出入り口付近の通路にいた。


「神牙さんっ!?」


 鳴海刑事が、驚いたような声を上げる。

 それが、施設の異常のせいなのか、私があっさりと飯島佳代子を連れ出せたことによるものなのかは判断できない。

 私は彼らに、施設から出るように命じた。


「はいっ!」

「神牙っ! お前も急げっ!」


 先頭にいた鳴海刑事と大倉刑事はそう言って、後ろにいるアシュリンやカチューシャを先導しながら出入り口へと繋がる通路へ走っていった。

 私も飯島佳代子の腕を掴みながら、通路を駆け抜け、角を曲がる。

 すると、私達を待っていてくれたのか、出入り口付近の広場でこちらを見る鳴海刑事達の姿が目に入った。

 私は驚愕したままの飯島佳代子をなんとか奮い立たせ、出入り口目がけて走り抜けた。

 しかし――


「っ! 危ないっ!」


 鳴海刑事がそう言った瞬間、私達の目の前にある出入り口の扉が勢いよく閉まってしまった。

 私は飯島佳代子の腕から手を離し、そのまま助走をつけて扉に体当たりした。

 しかし、扉はビクともしなかった。


「神牙っ! 大丈夫かっ!?」


 扉の向こうから聞こえる大倉刑事の言葉に、私は無事であると返事をし、後ろを振り向いた。

……そこには、私を散々苦しめた霊体の女性がいた……もしこの霊体の主が、私の思っていた通り彼女なら……彼女が私を恨むのも分かる話だが、これほどの執念を持っているとは……。


「だれ? あの人……」


 やっと口を開いた飯島佳代子が私を……なんていうか、『恋人だったら殺す』とでも言いたげな目で見ている。そんな目など見たこともないが、感じるのだ。私は彼女に、とりあえず恋人ではないことを伝えると、


「ふ~ん、そうなんだ」


 と言って、飯島佳代子は包丁を構えた。


「誰かは知らないけど……邪魔するなら殺すだけよ」


 そう言った瞬間、飯島佳代子は弾かれたように霊体の女性に突進したが、霊体の女性は突然苦悶の表情を浮かべて消えていった。

 その後ろから、一人の人影が見えた。


「っ! 誰よっ、あなたっ!?」


 飯島佳代子はそう叫び、人影に向かって包丁を構える。

 私は人影の正体を探るために飯島佳代子の傍まで近づき……見てしまった。


「……」


 白い肌……輝く銀髪……桃色の瞳……その見た目は私にとって、自分の罪を再認識させるとともに、再会の喜びを感じさせるには充分だった。

 しかし、私がその人を認識したと同時に、施設全体がより一層、激しく揺れ始めた。


「ここは……もう崩れるわ」


 懐かしい声で、その人は私に語りかける。

 本来なら、初めに気づくべきだった。そう、鳴海刑事があの淡い光に包まれて消えた時から……。


「早く逃げなさい」


 そう言って、その人は通路の奥に消えていった。咄嗟に呼びかけるが、まったく反応してくれない。


「あの人の言う通り、ここは崩れそうだわっ! 早く逃げましょっ!」


 そんな……やっと会えたのに……しかし、考えてみればあの人が生きてるはずがない。

 私が……この手で殺めたのだから……ふと、そんなことを考えていると、施設の出入り口の扉が開いた。どうやら、大倉刑事が開けてくれたようだ。

 私達は鳴海刑事達と合流し、駅のホームにある階段を上った。

 脱出できる確証があるわけではない。しかし、進まなければっ!

 震動で砕け散り、皮膚や服を痛めつけようとする破片を防ぎながら私達が階段を上っていくと、階段の先から光が見えた。

 そして、私達全員が階段を上り切ったと同時に、この忌々しい地下世界へと続く階段は崩れ落ちてきた瓦礫によって封鎖されてしまった……しばらく呆然と出入り口となる階段を見た後、アシュリンが言った。


「……それで、その女はどうする?」


 私は彼女の言っていることをすぐに理解した。

 そして、後ろで私の手を握る飯島佳代子を見た。


「か、神牙さん……」


 鳴海刑事が、不安な声色で口を開く。

 恐らく彼は、飯島佳代子を捕らえることになった場合の事を考えて怖がっているのだろう。それは大倉刑事も同様のようだ。

……正直言って、私もどうしていいか分からない。

 頭を悩ませていると、飯島佳代子は何も言わずにその場を離れていこうとした。


「あ、ちょっとっ!」


 大倉刑事が慌てて制止しようとするが、


「なに?」

「い、いえ、なんでもありません……」


 彼女の迫力に押されて、その巨体を縮こまらせてしまう。

……本来なら、これは警察官として許されない行為だ。

 だが、そもそも私達の存在自体が特殊な部類に入る。だとすれば、ここで彼女がどこかへ消えるのを見届けるのも、特殊な部類故に許される特権ではないだろうか?

 そのように頭の中で散々都合のいい言い訳を考えて、私は彼女の方を見た。


「神牙さん……」


 彼女も、私をジッと見つめてくる……いきなり刺してくるのではないかと緊張してしまう。余談ではあるが、包丁は今も彼女の手の中にあるのだ。

 だが、彼女はそれ以上は何も言わずに立ち去ってしまった。


「……良かったの?」


 私はカチューシャの質問に頷いた。ここで彼女を捕らえようとすれば、余計な犠牲者が出かねない。

 それに……言いたくはないが、彼女にはこの三日間、強制的にとはいえ、世話になった。

 なにより、私にはそれ以外にも気になる事があったのだ。

 地下施設で、ずっと私を監視していたあの霊体の女性。

 そして、その女性を退散させたと思われる……あの人……あれらはすべて、幻だったのだろうか?

 少なくとも、あの地下通路で出会った時は、飯島佳代子には霊体の女性もあの人の姿も見えていたのだから、そうではないと信じたいが……いずれにしても、今回の事件はこれで解決だろう。

『その者』や評議会、組織が納得のいく結末となったかは分からないが、これ以上は捜査のしようがない。現場となる地下施設への道は、すでに絶たれてしまったのだから……。

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