カタコンベのシャレコウベ ~地下探索~
「先輩……本当にこの電車で間違いないのでありますか?」
大倉さんが、不安な表情で聞いてくる。
電車に乗ってから、すでに何回も聞かれていることなんだけど……。
「はい、間違いないです。絶対にこの電車です」
僕がハッキリとそう答えても、どこか落ち着きなく周りを見ている。それは他の人も同様だ。
やがて車内に終点と折り返しを告げるアナウンスが流れ、対面に座るアシュリンさんが口を開く。
「この電車は折り返しだそうだ。降りるか?」
「はい、降ります」
電車がホームに着くと、僕達は下り線に乗り込もうとする乗客達を掻き分けてホームに降り立った。
僕達が降りた駅は、僕と神牙さんが降りた駅と違って乗客や駅員の姿があり、駅の名前が書かれた標識が駅の天井とホームの床を繋ぐ柱に掲げられていた。
そして、僕達が乗ってきた電車は、乗客達を乗せて元来た道を走り去っていった。
「……さて」
電車が走り去ったのを見送り、アシュリンさんが口を開く。
「ここがファングがいなくなった場所か?」
「いえ、違います」
この駅には名前がある。例の駅には名前が無かった……それどころか、駅員や乗客さえいなかった。どうしてだろう……リズさんの情報が間違ってたのかな? 実際乗ってみて、僕もあの電車で間違いないと思ったんだけど……もしくは、あの駅に着くには何か条件みたいなものがあるとか……?
「ねぇ、坊や。本当に、ここがあなたとファングが降りた駅なの?」
カチューシャさんが不安そうな表情で聞いてくる。
そう言われると、僕も自信はない。
「先輩、あれをっ!」
僕が困っていると、大倉さんが叫んだ。
僕らが大倉さんが指差す方向を見ると、その先には線路が敷かれたトンネルがあった……なんだろう、何か引っかかる。
「おかしいな……」
どうやら、アシュリンさんも何か引っかかったらしい。
「あ、分かったわっ!」
そう言って、カチューシャさんはトンネルを指差した。
「こっちって上り方向に続くはずよね? でも、アナウンスだとこの駅が終着駅で、電車は折り返していった……ならなんで、上り線の線路が必要なのかしら?」
なるほど、カチューシャさんの言う通りだ。だとしたら――
「あの……線路に降りて行ってみませんか?」
「そうだな……ただの車庫へと続く線路かもしれんが……行ってみる価値はある。いや、行くっ!」
そう言って、アシュリンさんは一人先に線路へと下りていく。
僕は咄嗟に周りの駅員や乗客を見たが、誰も線路の端の異変には気づいていないみたいだ。
なんだろう……今のアシュリンさんは焦って周りが見えていないような気がする。やっぱり彼女も、神牙さんの安否が気になるのだろうか?
彼女には申し訳ないが、正直言って自分の記憶に自信があるわけじゃない。この先に、僕と神牙さんがたどり着いた名無しの駅があるとは限らない。
でも、だからと言ってここで退き返すわけには行かない。
なんとしても……たとえ神牙さんがすでに話が出来る状態ではなくなっていたとしても、もう一度あの人と再会することは僕にとって大切な事のように感じた。
もちろん、今でもあの人の無事を祈っている。今まで事件の捜査で一緒にやってきたが、あの人がそう簡単に死んでしまうような人じゃないのは分かっている。
僕は決意を固め、後ろにいる人達を見た。
「ふふ、何があるのかしらね? あたしの興味を引くものがあればいいけど……」
カチューシャさんはそう言うと、僕の横を通り過ぎる際に肩をポンと叩いて線路に下りていった。
その仕草は、僕に対して『頑張って』と言っているような気がした。
「先輩、自分はどこまでも、先輩にお供するであります、押忍っ!」
大倉さんは笑顔でそう言って、ビシッと敬礼をすると線路に下りていった。
※
暗闇が支配するトンネル内を、アシュリンさんが持ってきていた軍用ライト一本だけで歩いていく。
光が届かない世界とは、こうも暗いものかと不安な気持ちがよぎってしまう。
……この先に名無しの駅があるのか……そんな疑問が、今さらながら湧き出してくる。
「先輩……本当にこの先に先輩のおっしゃっていた駅はあるのでしょうか? いえ、別に先輩を疑っているわけではないのですが……」
最初に本音を吐露したのは、大倉さんだった。
それを聞いて、カチューシャさんが口を開く。
「なぁに、クマさん。ひょっとして怖いの?」
「なっ! じ、自分は決して怖がりなのでは――」
「しっ! 静かにっ!」
挑発的な表情のカチューシャさんに茶化された大倉さんが大声を出すと、一番前を歩いていたアシュリンさんが左手を横に伸ばして止まるようジェスチャーをしながら言った。
「……聞こえるか?」
……なんだろう?
彼女の言葉を聞いて耳をすますけど、特にこれといった音は聞こえない。聞こえるのはせいぜい、大倉さんの荒い息遣いの音くらいだ。
「……何が聞こえるんですか?」
たまらずに聞いてみる。
「よく耳をすましてみろ。遠くから、何か近づいてくるぞ……」
アシュリンさんにそう言われて、もう一度耳をすませる……微かに、遠くから物音がしている。
しかもアシュリンさんが言うように、その音は少しずつ近づいているように聞こえる。
何の音だろう……? 不思議に思っていると、大倉さんが前方を指差しながら口を開く。
「先輩。なにやら向こうに、光のようなものが見えるのですが?」
「ちょっと……あの光、どんどんこっちに近づいてきてるわよっ!」
確かに、前方から光が見える。それと同時に、物音もだんだんと大きくなっていく。
あれって――
「避けろっ!!」
…………間一髪だった。
大倉さんが突き飛ばしてくれなかったら、どうなっていたことか……。
「だ、大丈夫ですか、皆さんっ!?」
思わず叫んでしまう。
「……ああ、大丈夫だ」
「あたしも……なんとかね」
「押忍っ! 問題ありませんっ!」
よかった……みんな無事なようだ。
でも、まさかあんな猛スピードで電車が突っ込んでくるなんて……まぁ、考えてみればここは線路なんだから、電車が走るのは当然だ。本来なら、そんなところを歩いている僕達が悪い。
ふとアシュリンさんを見ると、下り方向の線路を見て何かを考えている様子だった。
「どうかしたんですか、アシュリンさん?」
「ん? あぁ、あの電車の事なんだが……人影が見えなかった。それに、なぜ向こうの方に行くのか気になってな。わざわざ折り返しの電車があるのに、こちらの方から電車を走らせる理由などないと思うが……あるいは……考えたくないが、この先はただの車庫という可能性も――」
「それより、もっと重要なことがあるわ」
アシュリンさんの話に割り込むように、カチューシャさんが口を開く。
「あの電車を避けた時、あたしの足は線路の上にあったの」
「えっ!? それじゃカチューシャさんの足は――」
「ええ、本当なら永久にサヨナラしてるとこだけど……今もあたしの身体にくっついているわ」
「……何が言いたい?」
アシュリンさんが、不機嫌そうにカチューシャさんを見つめる。その表情は険しく、歴戦の兵士と言われれば素直に信じてしまうほどの迫力があった。考えてみれば当然か……アシュリンさんは元米軍兵士だったわけだし……。
でも、そんなアシュリンさんの表情と気迫も気にせずに、カチューシャさんは目を輝かせながら口を開いた。
「つまり、あの電車には実体がない、幽霊列車ってことよっ!」
「……バカバカしい。ファングもよく、あなたのような人間と友人になれるな?」
アシュリンさんはこの上ないほどの軽蔑の視線を、カチューシャさんに向けた。その目には怒りが宿っており、その迫力は隣の大倉さんも息を飲むほどだ。
しかし、カチューシャさんも負けずに挑発的な視線をアシュリンさんに浴びせる。
「あら、狂信的な科学信奉主義者と一緒にいるよりは、柔軟な思考が出来る人と一緒にいた方がファングも気が楽なんじゃないかしら?」
「ほう……言ってくれるな」
……この際、二人のやり取りは無視するとして、どのみちここで退き返すわけにもいかない。
僕は大倉さんと一緒にアシュリンさんとカチューシャさんをなだめると、そのまま先に進んで行った……が、しばらく歩いても、一向に目的地に着く気がしない。
いったい、どれくらいの距離を歩いたんだろう……? たぶん、まだ一キロと進んじゃいないだろうけど、それに匹敵するぐらいの疲労感が全身を襲う。
「っ! あれはっ!」
いきなり、アシュリンさんは声を上げて前方へ走っていった。僕らも後を追いかける。
線路脇にしゃがむアシュリンさんの目の前には、人が倒れていた。
その人物は男性のようで、アシュリンさんが脈をとって調べるが、
「……ダメだ、死んでる。体温や硬直状態から見て、かなり前に亡くなっているようだ」
ここ最近で亡くなった者ではないことは、遺体の衣服に積もっているホコリの量からも推測できる。
特に外傷もなく、線路脇の壁にもたれ掛かっていることから、電車に轢かれたわけじゃないみたいだけど……。
「ん? おかしいな……この遺体、腹部に妙なくぼみが……」
遺体に不審な点を見つけたアシュリンさんが、遺体の着衣を丁寧に脱がし始めた。
……え?
「うおぅっ!?」
大倉さんが着衣の下を見て、絶叫する。僕も同じ気持ちだ。
着衣に隠されていた遺体の腹部には、ポッカリと穴が空いていた。他には何の異常も無い。ただそこだけが、キレイに欠落していた。僅かな血痕さえもついていない。
「アシュリンさん……これって……」
「……恐ろしく鋭利な刃物で、内蔵をほとんど抜き取られたようだな。詳しいことは解剖してみないことには分からんが……こんな鮮やかな切り口は私も見たことが無い……」
初めて見る症例だけあって、監察医であるアシュリンさんも戸惑いを隠せない様子だ。
「あ……これって、キャトルミューティレーションってやつじゃない?」
カチューシャさんがこの場に似合わない雰囲気の、明るく柔らかな声色で遺体を見つめた。
「きゃとる……なんでありますか?」
「キャトルミューティレーションッ! 宇宙人達がやってる生物実験の事よ」
……あまりに話が飛び過ぎて、誰もついていけない。いくらなんでも宇宙人だなんて……。
「地球はずっと、宇宙人に監視されているの。時々宇宙人達は地球に生息する生命体を知るために、解剖実験をしているのよ。実際に、アメリカや日本ではこの遺体と同じように、内臓を抉り取られた家畜の死体が発見されているわっ!」
……ここ最近で分かった事だが、神牙さんは大きく分けて三つの個性を持った人間と付き合いがあるようだ。
一つ目はリズさん。彼女は高額の報酬と引き換えに、神牙さんにとって有益な情報を収集したり、あるいは情報工作なども手掛けているらしい。
二つ目は目の前で電波をまき散らすカチューシャさん。この人は本人いわく魔女らしいが、普段何をしているかは知らない。
でも、『超常的な存在』が僕らの事件の中心にある時、神牙さんはよくカチューシャさんに意見を求める。
三つ目はアシュリンさん。この人は監察医として警察側がいつもお世話になる一方、その広く深い科学的見識によって、僕らの捜査にあらゆる助言をしてくれる。
この三人は互いに神牙さんを通じて面識があるようで、付き合いもあるらしい。
だが、魔女、監察医、情報屋という職業柄か、あまり友好的ではないようだ。
案の定、アシュリンさんが噛みつく。
「宇宙人か……下らんな」
と言って、カチューシャさんの意見を真っ向から否定する。
「へぇ……なら、あなたはどう思うの、アシュリン?」
「そうだな……方法は解剖してみないと分からんが、恐らく臓器売買に関連する組織の犯行ではないか? 私も職業柄、臓器売買の闇ルートの話は耳に入る」
「臓器売買? ぷっ、あなた、サスペンス小説の読み過ぎではなくて? あ、ひょっとして、アメリカじゃ臓器売買は日常茶飯事なのかしら?」
「……貴様こそ、少々ファンタジーな脳ミソをしていると思うぞ?」
やはりか……僕も神牙さんと一緒に事件捜査をする過程で二人の会話を見る機会があるが、だいたいこうやって喧嘩が始まる。
もう慣れてきたので、僕は言い争う二人を放置して、遺体に目をやった。
もしかしたら、この遺体に神牙さんに関する手掛かりがあるかもしれない……そう思って、僕は遺体を念入りに調べた。
すると、遺体の右手首の内側に、刺青のような跡が見られた。
『1504』と、ただ数字だけが書かれているだけの刺青。この数字に、いったい何の意味があるのだろう?
しかも、この遺体の両手足は少し黒ずんでいるようだ。それは、僕が神牙さんと一緒に見た巨人と同じ色のようにも思える。
「この遺体の手足なんですけど……」
「どうかしたのですか、先輩?」
僕は、傍にいる大倉さんにその事実を伝えることにした。
「この手足の黒ずんだ色……僕が神牙さんと一緒に見た巨人と同じように見えるんです」
「なんとっ!? ということは、こやつが先輩と神牙を襲った巨人なのでしょうか?」
「いえ、僕が見た巨人はこの方よりも大きかったです。別人の可能性が高いでしょう」
「う~む……それでしたら、この手足の色はなんでありましょうか? まさか、先輩が見た巨人になる一歩手前の状態とか?」
「その可能性は否定できませんね。なんでそんな人間がここで亡くなっているかは分かりませんが……とにかく、今は非常事態です。この際、遺体は放置して、神牙さんの捜索を最優先にしましょう」
「押忍、了解であります」
亡くなった方には申し訳ないが、今は生きている可能性のある人間の救出が最優先だと思う。
僕はせめてもの気持ちとして、遺体に向かって合掌して哀悼の意を捧げた……。
※
その後、線路を歩き始めた僕は、アシュリンさんとカチューシャさんにも、大倉さんに述べた感想を話した。
二人共真剣に僕の話を聞いてくれた後、それぞれ自分が信じる立場から意見をくれた。
アシュリンさんは、『恐らくだが、何らかの疾患によるものだろう』と、あくまで意見の一つと言って教えてくれた。
カチューシャさんは、『きっと、巨人を作り出すための研究をしているのよっ!』と、先程言っていたキャトルミューティレーション説を忘却の彼方に追いやった。
そして……僕らはトンネルを抜けた。
……見覚えのある駅……間違いない。あの時の駅だ。
すでに足は疲れ、息が上がっているが、やっとの思いで見つけることが出来た。
「こ、ここですっ! 僕と神牙さんは、この駅に来たんですっ!」
興奮して、思わず大声で叫んでしまった。
「驚いたな……まさか本当にこのような駅があるとは……」
「だ、誰もいないようですね……何のための駅なのでありましょうか?」
「さぁねぇ……少なくとも、サラリーマンが通勤に使うための駅じゃないのは確かだと思うけど……」
みんな、名無しの駅が実在したことに少なからず驚いているようだ。
「だが、ただの建設中の駅とか、何らかの理由で建設が中断された駅と言う可能性もあるぞ?」
「確かに、その可能性もありますね……」
アシュリンさんの意見はもっともだ。僕だって、普通ならそう考える。普通なら……。
でも、神牙さんと一緒にこの駅であの巨人と出会って……僕の記憶はプッツリと無くなっている。この駅には、何かがあるのはずだ。普通ではない、何かが……。
とにかく、僕達は駅の中を捜索することにした。
こうやって名無しの駅が見つかった以上、神牙さんもどこかにいるはずだし、必ず見つかるはずだ。その祈りに近い希望にすがって、ひたすら駅の中を彷徨っていく。
僕と神牙さんがこの駅に来たのは三日前……飲まず食わずでいるなら、神牙さんは非常に危険な状態だ。時間に余裕がない。
だからといって焦って捜索するだけでは、思考能力と体力を奪われるだけだ。
かつて殺人事件の捜査で、捜査一課が犯人を取り逃がす失態をした時、神牙さんは言っていた。
『どこに目を向けるかを意識しないで捜査をするから、平気で大事なものを見逃してしまうんだよ』
あの時、大倉さんはこめかみをピクピクと震わせていたけど、今こそその言葉を教訓とするべきだ。
何かあるはず……あの神牙さんなら、きっと手掛かりを残している。
恐らく、僕が意識を失った後、神牙さんはあの巨人と戦ったはずだ。その場で神牙さんが勝ったのか、巨人が勝ったのかは分からないが、注意深く観察すれば何かしらの痕跡は発見できると思う。
そう思い、僕達は名無しの駅のホームに上がり、捜索を開始した。
ここからは何があるのか分からないので、大倉さんに先頭を歩いてもらう。
すると、手掛かりは意外と早く見つけることが出来た。
「先輩……なんでしょうか、あれ?」
駅のホームを歩いていた大倉さんは、突然歩みを止めて自分の前方を指差した。
僕らがその先を見ると、砕かれたホームの床と赤黒い血だまりが見えた。
僕らがその傍に寄ると、アシュリンさんが血だまりをジッと見つめて、
「これは……なんだ……?」
と、首をかしげた。
「なにって……血じゃないの?」
アシュリンさんの後ろで様子を見ていたカチューシャさんが、不思議に思って声を上げた。
「いや、これが血液なら、これだけの量だ。多少乾いていても、鉄分の臭いがする。だが、この液体からは何の臭いもしない。無臭だ」
アシュリンさんがそう言うので、僕も顔を近づけて血だまりの臭いを嗅いだ。
ちなみに、大倉さんは諸般の事情により、脂汗を流して硬直している。
……確かに、無臭だ。しかも、液体以外にも少し細かな肉片が付着しているように思える。
「確かに、臭いがしないですね。おまけに、何かの肉片がこびりついています」
「……コレが動物のモノなら、色々と辻褄が合わないな」
「えぇ……そうですね」
僕はそう言って立ち上がり、次は近くの砕かれたホームの床を見た。
(これは……)
だが、その砕かれたホームの床は一つだけではなく、ホームの向こう側まで一直線に続いていた。
「せ、先輩、これは……」
体調が回復した大倉さんが、床を見ながら僕に質問する。
「おそらく、手掛かりです」
「手掛かり? これが?」
カチューシャさんが、目の前の床を見て問いかけてくる。
「とにかく、行ってみましょう」
そう言って、僕は砕かれた床を見ながら先へ進んで行った。
この先に神牙さんがいるかどうか……そもそもこの砕かれた床が手掛かりかどうかも分からないが、今はそう信じて先へ進むしかない。
しばらく歩いていくと、砕かれた床は途切れてしまった。
「先輩、見て下さいっ!」
僕が大倉さんに言われるままに彼の指さす方向を見ると、その先には通路があり、そこは明らかに駅の施設とは違っているように見える。
僕達がいるホームの通路はリノリウムなどで通路や壁が加工されているが、その通路だけ、床や壁がコンクリートむき出しの状態だった。
しかも、ちょうど線路の端まで来たらしく、右側に見える上り方面の線路の先にはバツ印のついた通行止めが置かれている。
「どうやら工事途中のようですが……まさか先輩、ココに入るとおっしゃるのでは……?」
「嫌ならいいですよ? でも、僕は行きます」
「そ、そんな……! じ、自分もお供するでありますっ! 押忍っ!」
……大倉さんには気の毒だが、こうでも言わないと怖がりの大倉さんは一向に付いてきてくれなかっただろう。
そして、僕達は蛍光灯の明かりに照らされた、薄汚れた通路を進む。
今度はさほど時間はかからず、すぐに通り抜けることが出来た。
そして通路を抜けると、そこには縦横ともに広大な空間が広がっていた。
「こ、これは……!」
「むおっ!?」
「……どういうことだ?」
「あらぁ、結構ヤバイ所みたいねぇ……」
僕達は思い思いの驚きの声を上げた。
そこには……墓場があった……。




