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12.恋しいあなたに薬恋歌




 先程まで大人数がつめていた部屋は、一気に隙間が出来た。それもこれも「パオイラと妖人の確執が間に入ると面倒になりやがる。パオイラ側は全部出てけ」と、不遜にもベルナルドまで追い出したサルダートの所為だ。手打ちを貰ってもおかしくない態度だ。しかし、別国の話ではあるが、他国の王ですら、サルダートが現れるとびくりと背筋を正す。

 部屋の中心では、サルダート隊が地図を囲んで頭をつき合わせている。状況は最悪だ。薬術師が一名、護衛も伝令士もつけずに行方を眩ませた。誓約書があろうとも、状況を鑑みるに受理できない。たとえ本人が決意してもだ。



 レイルは窓枠に座ってその様子を眺めていた。頭が重い。息すら重くなって目を閉じる。


『レイル、熱出た?』


 ふわりとした手の感触が急に蘇り、弾かれたように目を開けるもそこには誰もいない。ぐしゃりと髪を握って膝に額をつける。


「レイル」


 女の声に視線だけを向ける。兄と一緒にどこかに行っていたサキが戻ってきていた。イヅナは隣に凭れ、そこから動かぬつもりらしい。その様子で、サキがここに留まるのだろうと気づいた。


「……あんたは」


 先が続かない。言いたかったのか、聞きたかったのか。レイル自身にも分からなかった。


「こっちの貴方とは初対面だけど、少し、私の話しに付き合ってくれない?」


 返事がなくてもサキは気にしなかった。子どものように窓枠に座る。


「何のことはないわ。ただのお話し。ただ、本当にあっただけの事よ」


 誰かを髣髴とさせる細い手が、レイルの立てた膝に重なった。




「ある所に、薬術院の生徒がおりました。彼女は飄々と優しく、ふざけながらも真面目で、誰からも好かれていました。ある時彼女は、遠征の付き人として参りました城で、三歳のそれは愛らしい妖人と出会います。妖人は獣のように周囲を威嚇していました。そして幼い王女に怪我をさせてしまったのです。王は大層怒り、魂石を剥ぎ取るよう命じました。幼い妖人から魂石を剥ぎ取れば死んでしまいます。彼女は王と交渉し、十五人の病を癒せるなら妖人を解放するとの条件を見事こなしました。が、その後意識不明になってしまいます。妖人は所有者が移った魂石のままに、キオスへと移住することとなりました。彼女はその時十二歳でした。キオスへと帰還し、目を覚ました彼女は妖人に魂石を返し、そのまま引き取ったのです。妖人は特別に薬術院の寮に住み込みました。人間相手に警戒心を露わにしていた妖人ですが、如何せん、相手は薬術師の卵達。少し変だったのでしょう。傷ついていれば癒したくなるのが薬術師。構い倒された子どもは少しずつ変わりました。やがて二年が経過し、一期生に、家族を失った少年と、兄と仲間を失った少女がいることを、生徒代表の彼女は知りました。そして三人をよく会わせるようになりました。家族を失った少年は決して笑わず、兄と仲間を失った少女は一言も喋れませんでした。妖人は困りつつも、彼女の願いに答えようと一所懸命でした。少女はよく寮を抜け出し、ある日妖人はその後をつけました。すると少女は、ハマオウを眠らせて尾を集めているではありませんか。しかし、子どものすることです。薬の量が足りずにハマオウは目を覚まし、少女は酷い怪我を負ってしまいます。彼女は少女を癒し、目を覚ました少女を怒ることはありませんでした。少女は少し周囲を見るようになり、妖人の名前を一番最初に呼びました。少年も少しだけ笑いました。その後三人は、とても仲良くなったのです」


 めでたし、めでたし。

 それで終わらないから、サキはここにいるのだ。


「三人がそれぞれの方法で立ち直ろうとしていた矢先、戦が始まりました。突然の侵攻に為す術はなく、混乱の中、薬術院は占拠されました。解放された秘術を知らない下級生の中に子ども達はいましたが、十期生の彼女の姿はありませんでした。そうして三日が経ち、漸く門が開かれた時、いたのは彼女ただ一人でした。中にいた人間は、誰一人として生きてはいなかったのです。最初に動いたのが誰だったのか、外にいた人々には分かりません。誰かが抗い敵軍を殺したのか、敵軍が憤り誰かを殺したのか。立つ者いない院の中、彼女は訓辞を紡ぎ、一礼しました。彼女の衣装もまた血だらけでした。罪の在り処は、代表である自分の物だと告げ、小刀で自ら喉を裂きました。それから数年間、院から卒業生はありませんでした。上級生達が、皆、死んでしまったからです。残された子ども達は再び打ちのめされました。少年の表情は一層失せ、少女は無心に尾を集め、妖人は姿を消しました。それからひと月後の事です。妖人は二人の元に現れ、この国を出て、敵国を滅ぼすのだと言いました。妖人は、彼女を死なせた全てを許すつもりはありませんでした。敵国は勿論、自害する原因を作った、薬術師という理念そのものを憎んでいました。けれど、二人だけは好きだから、一緒に行かないかと言いました。二人は、妖人を一人にすることが心配でなりませんでした。けれど、彼女が残した種が復讐になることが悲しくて手を取れなかったのです。袂を別った妖人の行方は二度と知れません。風の噂で、東のほうで、恐ろしく強く美しい賊が出ると聞きましたが、それが彼だったのかどうか、確かめる術は終ぞなかったのです」




 淡々と語られた物語が終わっても、レイルは微動だにせず俯いている。聞いているのか分からなかったが、サキは構わなかった。耳の良い彼は、聞きたくなくても聞こえてしまうだろうから。


「兄さん、ちょっとレイルと二人にしてほしいの」


 イヅナはサキから離れない。六歳のサキを死なせたことを、ずっと後悔しているからだ。


「お願い、兄さん。大丈夫だから」


 それでも妹の頼みごとに弱い。続く静かな懇願に小さな嘆息を零し、サキの頭を引き寄せて頬にキスをした。そして、サルダート達が囲んでいた机の一角に座ったまま、じっとこっちを見ている。いつでも駆け寄れる距離だ。レイルに殺気がないのをイヅナは分かっている。それでも、一度味わった喪失は死より深く兄妹に染み付いていた。



 窓の外から流れてくる風は心地よいのに、それを受ける二人は目を細めもしなければ、合わせもしない。まっすぐに正面の壁を見ている。


「……あんたの話を信じろと?」

「強いて言うなら貴方の名が証拠だけど、信じたくなかったら信じないでしょう?」


 イヅナによって丁寧に編みこまれた黒髪が揺れた。黒髪の中で光る艶が、明るい色の髪とは違って酷く映える。心を刻むほどに。


「……あいつは、どんな奴だったんだ」

「楽しい人よ。監督生なのに、誰より反省文書かされてた」

「…………何やってるんだ」

「柿を取ろうと二階から飛び降りたり、屋根の上を走ったり、暑いって中庭の池で泳いで苔で滑って額を割ったり、薬草探しに行って熊に追いかけられて帰ってきたり、調合間違ってお酒作っちゃって証拠隠滅に飲み干して酔っ払ったり、寮で春画売って稼いでた生徒を薬草チョップで諌めて没収したら、先生にライラさんのだと思われてドン引きされたりしてた」

「本当に何やってるんだ」


 こっちが頭を抱えたくなる惨状を、サキは愛おしそうに微笑む。


「優しくて、誰も見捨てなくて、面倒見も良かった。悩んだりどうしようもなかったら、皆ライラさんを頼った。どたばたしながらも解決しちゃうの。その度に補習になって、でも試験より点数いいの。鈍くて、付き合ってって言われたら、どっこいしょ、よし、行こうかって返しちゃうの。ちっともじっとしてないから探すの大変なのに、蹲ってたらいつの間にか横にいるの。自分の用事すっぽかして、何時間だって一緒にいてくれた。喧嘩して収拾つかなくなった下級生に水ぶっ掛けて、一緒にお風呂入っちゃうのよ。二期生とはいえ、男の子達だったんだけどなぁ」


 学校生活の象徴のような人だった。どこでだって彼女の記憶が残っている。




「あんた、少し、あいつに似てる。うるさい」


 ぽつりとレイルが漏らした。サキは苦笑する。


「皆、あの人に憧れた。あの人と同じ髪色だった私は凄く羨ましがられた。いつも笑ってた。私達には笑顔しか見せてくれなかった。私達は泣いて喚いて、理不尽も喪失感もあの人に叩きつけて縋った。あの人はそれを全部受け止めてくれた。傷つくだけで、傷を返してはくれなかった……私は何も変わってなかった。兄さんを失った後、それを酷く後悔したのに、結局あの人に凭れてた。後悔したよ、レイル。皆を、貴方を、失くした後。どうしてこの手は小さいの。もっと大きければ何か出来たんじゃないか。もっと大きければ」


 ちらりとイヅナに視線を移し、サキは音量を下げた。


「一緒にいけたんじゃないかって」


 遺されたのは幼かったから。無力だったから。

 だからサキは生き急いだ。誰より早く、史上最年少で中薬となり、誰より知識を詰め込んで、危険だろうが突き進んだ。


「今が、夢みたいなの。全部失って、全部戻ってきたから。夢のように得て、夢のように消えてしまうんじゃないかって。あるから失うのが怖い。無い物は無くしようがないもの。でもね、レイル、逃げてもつらいままよ。だって貴方はあの温かさを知ってしまった。知らなかった頃には戻れない。あの手が貴方を癒したのは、どう足掻いても事実だもの」


 レイルは伏せた目蓋を漸く開いた。鋭い視線にサキは怯まない。惑うが故の強がりなど怖くない。もっと怖いものを知っている。すとんと、底が抜けて落ちていくのに地獄は遠い。ひたすら落ちて墜ちて堕ちて、底などない奈落へ堕ち続ける喪失に勝る恐怖などない。


「私が言うのも何だけど、薬術師と生きるのはつらいよ。でも、私達にだって感情がある。嫌だし、つらいし、怖いし、痛い。ねえ、レイル。私も薬術師よ。けど、サキ・イクスティリアなの。私も同じ選択をする。貴方が相打ちなら死傷者がどれだけ出るの。死なない選択を薬術師は選ぶ。でも、人間を憎む集団は怖い。故郷を捨てるのはつらい。怪我しても痛くないと思う? 痛いよ? 傷つけられたら誰だって痛いよ。踏み躙られたら悔しい。憎まれたら怖い。人間だからって、そんな分類で憎まれたら、誰だって嫌よ。でも、言わない。言えないよ。私達は薬術師だから。でも、聞いてあげて、レイル。ライラさんの言葉を聞いて。ライラさんの感情を拾って。あの頃は幼すぎて頼ってもらえなかった。でも、今は、あの人達より年上なのよ。今度こそ受け止められるのに、どうして逃げるの」


 膝に重なった手は震えていた。


「レイル、一緒でも離れても苦しいよ。だったら一緒の方がどれだけいいか」

「俺は、自由に生きる」


 ぐしゃりと顔を歪ませてサキは笑った。心底おかしいような泣き出す寸前のような顔だ。


「亡くした人の面影で生きることが本当に自由か考えるといいわ。でもね、無理よ、諦めなさい、レイル。大嫌いな人間の長話を聞いてる時点で勝負有りよ。ここでライラさんを失ったら、貴方、二度と自由になれないわ。死者の思い出から逃げられるはずがない。踏ん切りをつけたいなら、向き合ってからにしなさいな」


 レイルの膝に額をつけてサキは肩を震わせた。おかしいのか苦しいのか分からない。レイルは馬鹿だ。馬鹿で笑える。笑えるのに苦しい。


『ライラがいない』


 ぐしゃりと顔を歪める美しい妖人の男の子。あの頃の記憶しかないから一瞬分からなかった。けれど目が一緒だ。黒髪を追って歪む金紫。


「薬術師は自らを省みず、死へ向かう生き物かもしれない。けど切り捨てられた気持ちになって傷つくのはライラさんを見てからにして。十五歳の女の子が、一人で泣いてないか確かめてからにしてよ!」




 遥か遠い少女を乞う、痩せっぽっちの女は失う恐怖を知っている。知って尚、繋がりを望むのだ。


「……あんたは、よく、喋るな」


 ようやく出た台詞はそれだった。サキは肩を竦める。


「薬術師は飲み込む言葉が多いの。仲間内でくらい、言い切っとかないと身体に悪いわ」


 細い身体でぴょんっと飛び降りて、一回伸びをする。伸びた手はそのままレイルの両頬を挟んだ。バチンといい音がして部屋の視線が集まったわりに痛くはなかった。


「一緒にいてもいなくても地獄なら、一緒の方がいいと思わない?」

「あんた、いつもそんなお節介なのか?」


 サキです、と念を押して、華奢な肩を再度竦めた。


「身体が弱くて外で遊べなかったユーリスと、兄さんと大人ばかりに囲まれて育った私と、ライラさんだけに懐いたレイル。三人とも初めての親友だねって、貴方が言ったのよ」

「……俺がそんな恥ずかしいこと言ったのか?」

「六歳だもの。でも、まずは」


 差し伸べられた手は、細いわりに意外と力が強かった。ぐいっと引っぱられて地面に立つ。ライラより背が高いサキの目線は、少し見上げればレイルに届いた。ライラはまだ十五歳だ。自分で言ったではないか。お子様、と。


「そこにライラさんがいなくちゃ」


 握られた掌もまっすぐな瞳も強い。あの時、緑柱石はどうだった。思い出せない。レイルは自分の感情で精一杯だった。泣いたのに。この腕の中で小さな身体を震わせて、縋りつくように泣いたのに。平気なはずはない。髪を切り刻まれ、頬も腕も裂かれ、人間を憎む集団にたった一人で。



「ねえ、親友。いつも笑って分かりづらいライラさんの良いこと教えてあげる」


 ぴしりと上げられた指は細く長く、ライラと同じ薬草の匂いがした。


「ライラさん、不安な時こそ作業して気を紛らわす人なの。色々してなかった?」

「……皮を、なめしてたな」

「……器用な、人だから」


 あの時、ライラを抱えても逃げられると答えていれば、彼女の選択は変わったのだろうか。そうしならなければならないから、少女はたった一人あの場に残ったのだ。


「散るを定めと咲こうとも、新たな種を期待せん」


 サキは微笑んだ。


「散る覚悟はある。けど、それは、今を蔑ろにしてるわけじゃない」


 生を蔑ろにした人間が残せる物は、きっと反面教師の教訓だけだろう。それもまた人生だが、薬術師をそこに当て嵌める事はできない。薬術師は命を尊び、司る生き物だ。


「って、ライラさんが教えてくれたのよ」


 子どもっぽくウインクされて、レイルはようやく苦笑した。

 これは妖人を裏切る行為だろうか。恐らくその通りで、少し違う。形振り構わず自由を得ようとしている同胞の気持ちは分かる。だが、人間だからどう扱われても仕方ないとするのなら、それは人間が妖人にしてきたことと同じだ。



 イヅナの横を通りすぎ、一番小柄で一番偉そうな男の前に立った。男は眉間の皺も露わに「あ?」と機嫌悪げに振り返る。レイルの指はその横を通りすぎとんっと地図を指した。


「奴らは東に向かった。恐らく怪我人や病人がほとんどだ。俺達を囲っていた中にも血や膿の匂いをさせてた奴が多かった。これは仮定だが、奴らは救施場を目指していた可能性がある。中にさえ入れば薬術師の領分だ。治療が施される。だが、パオイラ軍の警備が厳重で入り込めない。怪我人や病人を再び移動も出来ない」

「つまりライラは救施場の近くにいる可能性があるってわけか。何で早く言わねぇ!」


 振り上げられた拳をよけたら机がへこんだ。人間の癖になんて怪力だ。


「軍に見つかれば皆殺しに済めば良い方だ。死んだ方がマシだと心底思える地獄に戻せるほど、俺は妖人を憎んではいない」

「は! 俺達を信用すると?」

「あんた達じゃない」


 男はごついブーツで机を叩き割った。何とも悪役の似合う顔だったが、小さい。


「上等。それでいい。俺達なんざ信じるな。信じるなら薬術師にしとけ。おい、チビ!」


 急に開かれた扉から少年が転がり込んでくる。耳を当てていた体勢そのまま転がって、男の足元に辿りついた。


「チビって言うな! 特にてめぇだけは!」


 片手で猫のように持ち上げられても、少年はきんきん喧しい。耳から服の下にまで繋がった紋様がある。薬術師と同じ、生まれつきの能力者、伝令士だ。


「東部と繋げ。どうせパオイラが鬱陶しいくらい囲んでんだろ。ちっとくらい減らして構わん。護衛に周囲を探らせろ。救施場を探れる大人数の患者を収容可能な場所だ。やれ!」

「お、怒るなよ! こえぇんだよ、てめぇは! いや、俺は怖くなんかないけどな!」


 目の下の隈と眉間の皺、額の青筋。間近で見て気を失わなかったネイは偉い。慣れだ。「全然嬉しくねぇんだよ!」と、いつも言っている。


「ネイ! ちっちゃいおじさん! どっちも兄さんより小さいんだから、早くして!」

「「てめぇは黙ってろ!」」

「サキです」

「「イヅナ、空気読め」」



 レイルは窓枠に戻って腰掛けた。ここまで走って二日。何も考えなくていいように、走って走って、思い出す手が霞むように一度も止まらず走り続けた。


「ライラ……」


 そこまでして放り出せない記憶は、最早枷だ。危険だと分かっていて、復讐以外の理由でここに戻ってきた時点で、結局はそういうことだろう。

 薬術師とはかくも厄介な生き物なのか。温かく、柔らかく、優しく。それでいて強く儚く危うい。乾いた身に中毒のように沁み込むのに、不意に掻き消える。なのに、癒すのもやはり薬術師だ。

 さらりと流れた黒髪。額の紋様、大きな緑色の瞳に二重、うるさいのに意外と大きくない唇。小さな耳、浮き上がった鎖骨、胸の紋様、枯れ枝のような腕、細い指、腰の付け根の紋様、よく走る足。

 うるさくてうるさくて、一時もじっとしていない。そのくせ鼻歌はひどく静かに流れていく。物を取る時は、えーどっこいしょと婆臭いくせに、やってる事は繊細な花模様のレース編み。

 身を守るために気配に気を配っているだけだと自分に言い訳しつつ、結局一挙一動覚えている自分が一番腹立たしい。いつも笑っていて鬱陶しいのに、泣くなと思った自分が一番、鬱陶しい。

 あんたと一緒にいたい。

 意識せず口から零れた言葉に、目を丸くして上げた顔が傷だらけで、今もそんな顔をしているなら。




 無言で壁を叩きつける。盛大に穴が開いたが、何事か揉めたらしいサルダートが同様に大穴を開けた為、特に目立つことはなかった。





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