弐
(結局、拾いに行くのは私だし…)
日が沈み、鬱蒼と茂る森の中を颯恋は歩く。槍が飛んでいった方向へ歩いているけれども、どこにあるか分からない。なにせ、稽古中にどこをどう動いていたのかすら、よく分からないのだ。場所など気にしている暇は到底ない。
(あーあ…。明日早くに探そうか…。)
そう思っていた矢先。
「これをお探しかい?」
爽やかな声が後ろから聞こえた。振り返ると颯恋よりも少し背が高い青年。右手には確かに颯恋の槍。
「どちら様ですか…?」
明らかに颯恋の声がいつもより低い。警戒心マックスである。
「そんな怪しい奴じゃないよ。俺は青藍っていうんだ。」
笑顔でずっと自分を見つめる青藍に、やはり警戒心は解かれない。
「私は颯恋といいます。」
「そう。」
やはり笑顔。そして沈黙。
颯恋は早く帰りたかった。
「あの、早くそれ返して下さい。」
「あぁ、これね。はい。」
あっさりと槍を目の前に渡される。颯恋はほっとしてそれをつかもうとした。
が、その手は空を切る。
「…は?」
あまりにも唐突のことに一瞬たじろぐ颯恋。
やっぱり青藍はにこにこしている。
「己の力で奪ってごらん。颯恋。」
初対面のくせにいきなり呼び捨て…だとぉ!?
「こ……の……っ!」
颯恋の怒りはピークに達した。
青藍と颯恋の戦いが始まった。