漫才2
「こんにちはどーもー! ケンタです!」
「ミキです。よろしくお願いします」
「いやあ、こうやってだんだんと大きな舞台に立てるようになってくるのはうれしいことですね。おかげさまで俺、最近引っ越しできたんですよ」
「へえそんなんですか。私もですね、最近言葉遊びにはまっているんですよ」
「それ俺の話と全く関係なくね!?」
「……ちっ」
「何でそこで舌打ちするんですかミキちゃん!?」
「小学生のころは色々言葉遊びで遊びました」
「そしてスルーなんですねそうですね」
「今日はそれでですね、私が昔にやった言葉遊びをやりたいなと思うんですよ」
「ミキちゃんは昔どんな言葉遊びやったんですか? 私がよくやったのはなぞかけですね。カレーうどんのスープと掛けて、麻雀と説く、みたいな」
「どちらも飛んだらやばいです」
「ミキちゃん!? そこは俺が言うところでしょ!? 何でミキちゃんが言っちゃうのさ!?」
「……うざ」
「悪口めっちゃマイク拾ってるから! それは聞こえないところで言おうよ!」
「それで、私がよくやった言葉遊びは10回言って。みたいなやつなんですよ」
「そしてまたスルーなんですねそうなんですね。もう俺に悪口言ってたことは全部忘れてるんですね。まあ何でもいいですけど……確かに10回言って遊びって色々やりましたよねー。『みりん』って10回言ってって言わせた後に、『鼻が長いのは?』『きりん!』 いやいやそこはゾウだろ、みたいな事。はめられたときはなぜかめっちゃ悔しかった思い出ありますよー」
「そこで今日はですね。ケンタにその言葉遊びをひっかけて遊びたいと思うんですね。ということでケンタ、私が『マルマルって10回言って』って言うので、それに返事してください」
「うぃ、了解です。よーし、引っかからないように頑張るぞー」
「…………ケンタ、シャンデリアって10回言え」
「そこ命令形なんだ!? かわいらしく『言って?』 じゃないの!?」
「いいから言え」
「はい……すいませんでした。『シャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリアシャンデリア』!」
「ガラスの靴を落としたのは?」
「シンデレラ! って違うよね!? そこ普通は『ガラスの靴を拾ったのは?』とか『毒りんごを食べたのは?』だよね?」
「ああ! その発想はありませんでした」
「なんでだよ!? 何でそこそんなびっくりしたような顔してるのミキちゃん!? その発想もとうよ!」
「わかりました、次に期待してください」
「頼みますよー。さあミキちゃん、次はどんなのなのかな?」
「それじゃあケンタ、次は『こううん』って適当に10回言って」
「ん、幸運? ……えっと、『幸運幸運幸運幸運』」
「馬鹿、ケンタは本当に馬鹿ですね。そこは平仮名で言わないと」
「え、平仮名? ちょっとそこ意味が分からないんだけど?」
「ケンタが言っているのは『幸運』、私が言えと言っているのは『こううん』を適当に『こーうん』」
「え? 一緒じゃん?」
「読者から見たら大違い」
「ちょっとそこ何メタっちゃってるの!? ……ああ、もういいですよ言いますよ! 『こーうんこーうんこーうんこーうんこーうんこーうんこーうんこーうんこーうんこーうん』」
「このど変態」
「なんで!?」
「うんこーうんこー」
「ちょっと!? ご飯食べてる最中の人いたらどうすんの!?」
「先に言ったのはケンタ」
「……………うわ、ひでえ!? ミキちゃんひどすぎるですよ!?」
「『エロ本』って10回言って」
「そしてまた、スルーですかそうですか。というかエロ本なんて言葉公共の電波で流すべきじゃないですよね?」
「今更?」
「確かにうんこうんこ言いましたけどね!? ミキちゃん開き直りひどくない!? ああ、わかりましたよ言いますよ! 『エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本エロ本』!」
「何回イッた?」
「10回……ってミキちゃん何でそんな憐れんだ目で見てるの?」
「右手が恋人なんだね……可哀そうに」
「そうですよ悪かったな……ってミキちゃん! 何でまた漢字をカタカナに変えてるんですか!? 意味が変わってる変わってる!」
「メタ発言自重」
「ごめんなさい……ってメタ発言やり始めたのはミキちゃんだからね!」
「『コバンザメ』って10回言って」
「もうスルーばっかですよ、言葉のキャッチボールというよりも、言葉の打ちっぱなしゴルフみたいな気分だよ!」
「あんまりうまくない」
「わかってるようるさいな! そういうところだけキャッチしなくていいから!」
「『コバンザメ』って10回言って」
「ハイハイ分かりましたよ言いますよ! 『コバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメコバンザメ』!」
「お前の事だ」
「うるさいよ!? 何でいきなり悪口になってんすか!?」
「腰ぎんちゃくって10回」
「それ同じだよね!? なんでまた悪口なんすか!? ひどくないっすか? 俺のチキンマイハートは今にもブレイクしそうですよ!?」
「金魚のフン」
「もうそれほんとにただの悪口じゃないですか!? ゲーム成立してないっすよ!? もっとちゃんとやってくれよミキちゃん!」
「うるさい」
「ふごぉ!?」
「お前はもう、死んでいる」
「秘孔!? ミキちゃんどれだけ武術を極めてるんすか!?」
「ほんとうるさい」
「ふごぉ!? …………2度もぶった。親父にもぶたれたことないのに!」
「パクリかっこ悪い」
「ごめんなさい……って先パクったのミキちゃんじゃないすか!?」
「……まったく、ケンタという人は言い訳ばかりで困ったものです」
「いや、言い訳というか正当な抗議だと思うんだ」
「そんなに脱線してばっかりじゃゲームが成り立たないじゃないですか」
「脱線させてるのどう考えても美希ちゃんだよね!? 俺どう考えてもちゃんとやってるよね!?」
「『愛してる』って10回言って」
「そしてもう慣れましたけどね、スルーしすぎですよね。……『愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる』」
「私の名前は?」
「ミキちゃん」
「あはん」
「『あはん』じゃないよね!? 何うれしそうになってんの!?」
「ケンタに告白されたらうれしいに決まってるじゃないですか」
「え……ミキちゃんそれって?」
「……私も好きだから」
「えええええっ!? こ、こんな舞台の上で告白宣言!?」
「ケンタ、結婚しよう?」
「しかも結婚まで!? いやいやいやいや、まずは健全な交際から始めないと?」
「私と結婚するの、いや?」
「いえ全く! さ、すぐに婚姻届に書いちゃおう! 印鑑もあるよー……いやあ、彼女いない歴年齢だった自分がいきなり妻を持てるなんてぼかあなんて幸せなんだ」
「それじゃあケンタ、私のお願い、聞いてくれる?」
「もちろんだよ!」
「『ポク』って10回言って」
「喜んで! 『ポクポクポクポクポクポクポクポクポクポク』」
「チーン」
「殺さないで!? 結婚して30秒で死別!?」
「これでケンタの保険金は私のものー」
「結婚詐欺かよ!? 俺の喜びを返せ!」
「うわ、化けて出てきた?」
「だから俺を殺すな! もういいよ!」
「ありがとうございましたー」