日の丸トイレットペーパー
日の丸トイレットペーパを買った。日の丸が印刷されていて、ミシン目に沿ってちぎればちょうど日の丸になるトイレットペーパーだ。
これでお尻を拭く。日の丸の赤が誠心誠意汚れを取ってくれそうな気がする。あ、今日は軟便だから日の丸が醜く汚れてしまった。
ちなみにこのトイレットペーパーで強くお尻を拭くと穴に赤が色移りするという噂がある。だれも確かめたことを公言しないので、あくまで噂だが、しかし私だけは真実だと知っている。
鏡の前で試したのだ。
まぬけな姿勢で「象徴」を強くこすりつける姿は自分で見ても面白かった。他人の目線でも見たかったのでティッシュ箱に立てかけたスマホで撮影しながらこすりつけた。
そうすると、さっきまで私が日の丸を汚しているような気がしていたのに、今度は私が尊厳をどこかに捨ててしまっているような気がしてきた。
私は嫌になってやめた。結局録画も見ずに消去してしまった。
刑務所ではこの日の丸トイレ紙が使われているらしい。紙が切れたら囚人たちは「日の丸願います!」と叫ぶ。出所したての友人から聞いた。
赤が色移るからこれで落書きをするのが流行っていたそうだ。
壁に自分の欲求不満を書きなぐる。金、性、被害者意識、そして自由。
刑務官に見つかってもなかなか流行は収束せず、ついに友人がいた所では使用中止になったらしい。囚人たちは口々に文句を言ったが、次第にみんな忘れていった。
友人も忘れかけていたころ、今度は菊の門入りのトイレットペーパーが配られたらしい。友人はそれを刑務官から受け取ったとき、大笑いして意識を失い、翌朝腹筋と全身の痛みを抱えて懲罰房で目覚めることとなってしまった。
友人の大笑いの成果は分からないが、またしばらくしてトイレットペーパーは白無地に戻ったそうだ。
そういえば昔、この日の丸トイレットペーパーはある芸人がライブのグッズとして作ったことが始まりらしい。その芸人にはとりたてた意図はなく、衆人が好き勝手に意味を見出し、政府が採用するまでになってしまったそう。
いまでは必需品補助金によってトイレ紙の中でこれだけ安くなっている。金がない私はいつもこれを買わざるを得ない。買うたびに、あまりに堂々としたダサさと、何か機能がありそうに見える原色の赤が目についてしまう。
何もご利益はないし、何も私の苦しい生活を助けてはくれないが、とにかくこの日の丸はいつも私のそばに、いや後ろにいる。便を拭ってくれるだけではなく、もしかしたら毛に張り付いて私の生活に密着しているかもしれない。
とにかく私のような貧乏人にとって日の丸は最もよく目にするブランドである。
最近投資業界では「HT」が話題だ。前出の友人によると「日」の丸「投」資、の略らしい。
これは政策によって業績が上がる会社の株を買ったりするという、昔からよくあるもので、新規性は一切ないらしいが、とにかく最近の政府がこれを頻繁に使うようになってから、証券会社も追従し、すっかり浸透してしまった言葉だそうだ。
思い出してみると、駅の広告やラジオのCMでたまに聞く気がする。私もHTしてみようか。
もしHTするなら銘柄は決めてある。
これを作っている会社、皇嗣製紙だ。




