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二カ月後。
大阪市中央区淡路町。
堺筋の淡路町一丁目の交差点。
信号待ちするアウトランダーの助手席で、実紅は不機嫌そうにフロントグラスを叩く雨粒を見ている。
ハンドルを握るリュドミラは。
「分隊長、なんか引継ぎの時から不機嫌そうですね。なんか合ったんですか?」
信号が青に変わり、北上するため車は前進する。
座席に押し付けられる感覚に身を任せつつ実紅は。
「コウ君と、ちょっと・・・・・・」
「ふ~ん」とだけ言って、それ以上はきかないリュドミラ。その代り。
「分隊長の機嫌が良くなる話をを一発」
「何なん?」
「撃たれたピロシキ屋のおっちゃん、退院しまして」
リュドミラに向けた実紅の顔には明るい表情が。
「ホンマに?!良かったぁ」
「ええ、二十二口径で本当に良かったですよ。後遺症も無く、近々店もやるそうで」
「また屋台?」
アウトランダーは道修一の交差点に差し掛かる。
「いや、今度はちゃんとした店舗、営業許可も取って、宝塚でやるそうですよ」
「管轄外かぁ、買い食いはでけへんね」
「非番か明け番で買いに行きゃ良いじゃ無いですか」
「それもそやわ」
『プリースト』が指令を飛ばして来たのは、実紅がそうつぶやいたタイミングだった。
『CISAIより各局、中央区淡路町三丁目より『夫が撃たれた。頭から血を流している』とのマル電(一一〇番)淡路町三丁目、近い局は急行されたし』
との音声が『INCSM』と繋がるイヤホンから流れ、同時にアイウエア型デバイスに文字情報と地図が表示される。
逆三角形のアイコンが点灯する地点には『ビーンストーク淀屋橋』との別の表示。ワンフロアー数億はするタワーマンション。
つづいてカーロケーターの表示に視線を飛ばし画面に表示されたパトカーや覆面パトカーの位置を確認する。
「アタシらが一番近いですね」
画面を横目でにらみ、そう言いながらリュドミラはすでにハンドルを切っていた。
頷きつつ竜児は、イヤホンに組み込まれた骨伝導マイクを意識しつつ。
「機特一〇一、道修一から」
『機特一〇一、道修一から了解願います。一一〇番、淡路町三丁目〇号〇番地のマンション『ビーンストーク淀屋橋』より男性一名が頭部を撃たれ意識がないとの、同人の妻と称する女生からの通報。整理番号二一八どうぞ』
「機特一〇一、了解」
『なお、通報内容から銃器使用の事案である事から、本時刻を持って特別指定重要事件に認定、火器の使用制限を解除。対処にあたっては受傷事故に十分留意し対処してください』
「機特一〇一、了解」
実紅が通信を終わる寸前、リュドミラはコンソールのタッチパネルを操作しルーフに赤色灯を展開し点灯させつつ、左右のボディ貼られたシート状のモニターに『緊急車両が通過します』の文字を日本語、簡体字、ハングル、キリル文字で表示させると苦笑を浮かべながら。
「さてさて、楽しい一日の始まりだ。Хорошо!」




