雨宿り中に出逢った君から舞踏会に誘われたら
元日で来ないのに、いつもの流れでポストの中を確認すると、年賀状が1枚届いていた。
家族も友達もいないのに、どうしてだろうと不思議に思い裏を確認すると次のように書かれている。
『サナへ
突然の連絡ごめんね
サナに来て欲しくて年賀状を出したんだ
日曜の夕方5時最初に出会った場所で会いたい
リク』
――リク
忘れやしない私の恩人で初恋相手の名前だ。
小学生の時に見慣れない場所で迷子になった時、突然の大雨に見舞われ、大きな木の下で雨宿りをしていた。
あの時は携帯も無く、木枯らしが酷いとサバイバル状態だったが、その時に助けてくれたのがリク。
彼は家に連れ面倒を見てくれたのだ。あの時に聞こえた風鈴の音と作ってくれたホットケーキの味は忘れられない。彼との時間は心地良くて幸せな時間だった。
それからたまにあの木で話すようになったが、高校生になった途端に会わなくなったため、彼の誘いに高揚していた。
次の日の夕方に自転車であの大きな木の下に向かうと、そこに男性がいた。
最後に会った日よりも大人びており、一瞬リクだと分からなかったが、いつもの合い言葉で挨拶すると彼だと確信出来た。改めてリクだと分かると色気が増した彼に惚れてしまう。
ここで駄弁るのかと思いきや、見知らぬ場所に連れられ、あっという間に青いドレスを着ていた。そして彼はタキシードを着ており、また惚れてしまう。
そんな中、彼の手に引かれ大きな屋敷に入った。
するとそこは、舞踏会が行われており、皆流れるオルゴールの音に合わせて踊っていた。
多くの人の視線の中、わけも分からないままダンスが始まる。初めて踊ったのに、彼のリードが上手くてそつがなく踊ることができ、無事に舞踏会は終わった。
その後連れて来たのはリクの家。まだあの風鈴がかけられていた。
ここで何をするかと思うと、彼は真剣な顔で語り始める。それは今まで会えなかった理由だが、衝撃的なことを告げられたのだ。
「実は俺、狼の獣人だ。だから人のサナと別れないと思って会わなかったけど、諦めきれずに今日君を誘ってしまった」
まさかのリクが獣人!? 話がついて行けない中で、更に追い打ちをかけられる。
「今日の舞踏会は俺の恋人として連れ出したけど、今後は妻として一緒にいてくれない?」
ここでプロポーズされるなんて……。
全然理解出来てないけど、リクを愛する気持ちは本物だもの。
「喜んで」
これは平凡な私にくれたリクからのギフトなのね、本当に幸せよ。




