穴の中
どかんという音が俺の全身を震わせた。
薄暗い防空壕が敵の爆撃機の攻撃に揺れる。
数十年前の戦争時に造られたこのちゃちな防空壕の中に、俺を含めた近隣の住民たちが押し込まれている。
大人もいれば子供もいる。男もいれば女もいる。小綺麗な者もいれば、俺みたいに小汚い奴もいる。
この場所は空間的には決して狭くはないのだけれど、何人もの人間が押し込められているからか、妙な圧迫感があった。
しかも頭上ではいつ爆弾が落ちてくるかわからない。この小さな穴倉がそれに耐えられるのかも。
皆が恐怖に震え、互いに身を寄せあっている。
ブッ殺す、ブッ殺す、ブッ殺す……その言葉が俺の頭のなかをぐるぐると渦巻いていた。
上空の奴らをブッ殺す。
けれど、実際に殺されるのは俺たちの方だろう。
再び、どかんという音が俺の全身を震わせた。同時に防空壕全体も震わせる。
女子供のうち何人かが悲鳴を上げた。老人が不満の声を上げる。
くそ、何もかもに苛つく。
だが、苛ついたところでどうしようもない。
死が上空を旋回し続ける。