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久々の家

東京には色んな人がいる。

元から関東に住んでた人。

途中から東京に住み始めた人。

体感どの集団に行っても大体半分位。

ある時出会いある時離れる。

それの繰り返し。

忘れられない出会いはまだまだあるはずだ。

と社会人1年目のときは考えてきた。


忘れられない出会いなんてなかった。

ただただ、東京という場所を利用して、これまで構築してきた人間関係を消費しているだけかもしれない。

1年に数人の知り合いが出来ているペースかもしれない。

そして、最近は会社の同期との付き合いも薄れてきた。

でも、くだらない話や愚痴をこぼしながらハイボールや生ビールを胃に入れ込むあの時間も今から考えると愛おしい。

いつからクラスLINEが盛り上がらなくなったのだろうか、更新が止まるようになったのだろうか。

同期の集まりの参加人数が減ってきたのはいつからだろうか。

人間失ってから気付く事があまりにも多すぎる。


くだらないことばかり考えてしまう。

頭の中のショーペンハウアーが「人間は所詮孤独な生き物だぜ」と言っていた。

そんなことを考えながら羊文学の1999を聞いていた。

聞きながら山手線のディスプレイを眺めていた。

山手線のディスプレイは就活イベントの宣伝が繰り返し放映されていた。


知り合いと話した。

タイに移住した住人が言っていた言葉が忘れられない。

どこに住むかというより、誰と会うかどうか。一人ぼっちだ。寂しい。

意外と楽しさだけではなかった。

思ったよりも辛かった。

それを聞いて意外に思った。

でも、自分は東京でも一人ぼっちかもしれない。

大学生のときも楽しかったなと振り返る自分も大概だ。


一週間ぶりに家に向かっている。駅から歩くときは周りに人がいるものの、歩みを進めるにつれて人がいなくなっていく。

駅からみんなで同じ方向に歩いてそれぞれやがて別れていく。

謎の仲間意識が手に入る。

東上線の朝霞台から徒歩15分。

久々に横になりたい。

公園のベンチで寝ていたから体が硬い。


家に帰って何となく「ただいま。」といい、

お風呂を沸かし、プロジェクターでNew JeansのMVを見た。

社畜OLのYoutuberを見た。

シンハービールを飲みながら、味わいながらチーズと合わせて飲んだ。

カーテンを少し開けると、部屋に月光が差し込んでいた。

そして、ビリー・アイリッシュの音楽をかけながら読みかけのタイタス・アンドロニカスを読んだ。

もはや喜劇なのか

山手線に乗ることも旅の範疇なのか。

自分探しの旅とかいうよくわからないことをする人と同じになっているのかもしれない。

ショーペンハウアーに叱られそうだ。


ベランダの扉を開け、電車の走る音が遠くから聞こえてきた。

夜は電車の音がよく聞こえる。

最近はよく空を見上げている。

さっきコンビニで買ってきたメビウスの箱から1本取り、マッチで火をつけた。

アロマキャンドル用のマッチだったが、最近は使っていなかった。

僕はこれまでタバコを吸ったことがない。

でも、一人の時間を自覚したとき、吸いたいという気持ちが押し寄せてくる。

初タバコは煙の感覚が脳に瞬時に到達し、クラっとした。

でも、吸うと苦い。

タバコの匂いはまだ良いが、吸うと苦い。

初めてビールを飲んだとき、苦いと感じて二度と飲まないと思ったときに似ている。

このタバコは喫煙者の友達にあげよう。

ただただ、タバコの煙が月光に照らされながら、かき消されていった。


写ルンですで撮った鎌倉の写真もいらない。

こぞって撮ったカフェの写真もいらない。

人生のマジックアワーなんてとうに過ぎた。

「明けない夜なんてない」という言葉もあるが、夜なんて明けない方が良い。

いつだって時の流れなんて止めたいものだ。

過去を振り返り絶望し、時にニヤける。

辛い過去も今では良い思い出になることもある。

辛い過去も悲しい過去も楽しい過去も全部僕のものだ。

誰にもあげたくないしそもそもあげることができない。


もう●歳だから。

いつからそんな思考を取るようになったんだろう。

バーで話した23歳の若者に「年齢で考えるなんてダサいですよ。」

と青臭いことも言われたこともあったっけ。


一緒に時を重ねてきた家を眺め、あいみょん語で言うところのおセンチになっていた。

久々に体を横たえ、目をつぶり寝ることにした。

一瞬で寝てしまい、起きたら11時になっていた。


トーストを焼きながらコーヒーを入れた。

この日々の暮らしも幸せの一つかもしれない。




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