■■■■の見た夢
そうして、春がやってきました。
見捨てられそうだった誰かを見捨てることはなく、切り捨てるべきものを切り捨てて、みんなは次の季節に辿り着きます。
ちょっとした石につまづきながら、もう無理だって泣きながら、次でだめだったらやめにしようって弱気になりながら、それでもあの子は立ち止まりません。
だから、こうやってちゃんと報われたのです。
困りごとはこれからもあるけれど、今はたくさんの人が笑っていて。
領主はまだまだぽんこつだけど、なんだかんだみんなに好かれていて。
きっとこれからも、この場所のいのちは続いていきます。
雪に埋もれた道を歩く時みたいに、ちょっとずつちょっとずつ先に進んでいくのです。
雪も氷もとけてなくなって、お花がたくさん咲いていて。
白い雲に青い空が広がっていて、ちょっとあついけど、悪い気はしなくて。
小鳥がうれしそうに鳴いて、虫は……あんまりすきじゃないけど、お祝いみたいにたくさん飛んでいて。
いちどもみたことはないけれど、きっとすごくきれいな景色が広がっていて。
なのにちょっとずつ、うとうとぼんやりしてきて、なごり惜しくって。
そんなすてきな風景の中で、わたしは眠りにつきたいのです。




