表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暴君ネロの2度目の治世  作者: Kaiser
アナザードラマ 皇帝不在のローマ
28/34

皇帝不在のローマ 第3話

1万PV達成ありがとうございます。まさかスト6でマスター行く前に達成できるとは思いませんでした。

ポンポニアヌスさんに聞いた話が本当なら、ウァレリウスという貴族が暗殺計画に加担していることは、ほぼ間違いないだろう。

しかしそれを裏付けるような情報がもう1つくらいあると嬉しい。まだ、ポンポニアヌスさんから聞いた話が本当とは限らないのだから。

そういうわけで私は馴染みの情報屋を訪ねるため、再びローマの市街地に戻ってきた。


郊外と違って市街には肺が焼けるような酷いニオイが立ち込めている。

特に街を囲む壁の近くは治安の悪い地区で、悪臭もローマの中でも最悪なのだだ。

しかし情報屋だとか呪術師など、普通に生きていれば利用する機会のない店というのはこういう場所にある。

それはこの店も例外ではない。

ウェヌス宝石店。店構えを一見する限り、ただの宝石店だ。しかしその裏では情報屋を営んでいる。


「いらっしゃ〜い!」


戸口をくぐると店の奥から幼い声が元気に挨拶した。そして赤毛の少女が顔を出す。大きく丸い目を持ち、いたずらっぽい表情を浮かべている。

大人と子供の中間の容姿をした彼女こそ、私が最も信頼する情報屋のルクレチアだ。


「あれ〜ブッルスじゃん!久しぶりー。どう最近仕事の調子は?」

「良くも悪くもないよ。強いて言うなら忙しいかな」

「さすがプラエトリアニ(親衛隊)の長官ですなー。稼いでらっしゃる!」


ルクレチアはニヤニヤしながら私を肘でつつく。


「稼いでないよ。政府の仕事ってほぼ無休だからね。他に収入もないよ」

「え、うそ〜!?アタシの方が稼いでんじゃ〜ん。かわいそ〜」


ルクレチアはクスクス笑いながら、腰をくねらせて煽ってくる。

そんな彼女の姿を見ていると、少し笑顔になれる。


「で?今日はなんの用?また情報が欲しいの?」

「話が早くて助かるよルクレチア。ウァレリウスって貴族を知ってるかな?その男の情報が欲しい」

「ウァレリウス?今年のプラエトル(法務官)じゃん!」

「本当に?初耳だな」


プラエトルは裁判を担当する上級役職で、皇帝それから執政官に次ぐ3番目の地位だ。

それほどの地位の者が暗殺に加担しているとは驚きだ。


「今年のプラエトルが誰かも知らないってちょっと問題じゃない?政権の中心にいるんだし、少しは政治に興味持ちなよー」

「政治はネロ様とセネカさんの役目。私の役目は2人を守ることで、政治とは無縁なの。それより早く情報くれないか?」

「出世できなくても知らないからねー」


ルクレチアはそう言って店の奥に入って行った。やがてガサゴソと何かを探す音とともに「あれー、おっかしーな。たしかここら辺に……」という言葉が聞こえてきたかと思うと、今度は「あったー!」と弾むような声が聞こえて来た。

戻ってきた彼女の手には約10枚の紙が握られていた。


「はい、これがウァレリウスについてアタシが持ってる全部の情報。」


ルクレチアは持っている紙の束から数枚を選りすぐって見せて来た。

そこにはウァレリウスについての基本的な情報から今までの経歴、交友関係が書かれていた。

それによると本名はウァレリウス・マエニウス・ホスティリウス。現在35歳。貴族階級出身で、若くしてシキリア総督などを務めているようだ。

品行方正な性格で誰にでも好かれるため、交友関係はひろいらしい。ウァレリウスと親しい人物の中には、私ですら知っている名前もいくつか書かれている。

ウェスパシアヌス、ピソ、コルブロ、ファビウス、そしてアグリッピナ。


「どう?役に立った?」


資料を読んでいる私の顔を、ルクレチアが下から覗き込む。


「まあ参考くらいにはなったかな」

「うわ〜偉そうな言い方。稼ぎ少ないくせに」

「本当はウァレリウスの家の間取りとか、使用人の人数とかも知りたかったんだけど流石に無理かな?」

「基本的にうちは浮気調査がメインだから間取りまではねー。でも使用人の名簿ならあるよー」


ルクレチアは先程は見せてくれなかった紙を私の眼前でチラつかせる。

その紙を手に取ろうとすると、彼女はサッとその紙を引っ込めてしまった。


「追加料金になりま〜す」

「っ……あとで払うよ。セネカさんが」

「うちはツケは禁止なんだけどな〜。まあブッルスならいいか。はいどうぞ」


使用人名簿には一人ひとりの名前とその役割がリスト状にまとめられていた。

それによると使用人の人数は……8人のようだ。パウルスの名前もちゃんとある。

おや?このリニキアヌスという男の名前は二重線で消してある。


「この人の名前だけ消してあるけど、なんで?」

「あー、その人クビになったの。つい最近だからまだ書き換えられてないの」

「なるほどね。この人が今どこで働いてるかとかわからないかな?」

「今はカエキナって人のところで働いてる」

「カエキナさん!?」


しめた。カエキナさんの事はよく知っている。40年近く前にはなるが、私はカエキナさんの部隊にいて何度か話したこともある。事情を話せば協力してくれるだろう。


「助かったよルクレチア。ありがとう。金は3日以内には払えると思う」

「またいつでも来なよ。待ってるから」


手を振って見送ってくれたルクレチアに手を振りかえし、私は店を出た。

西陽が私の目を刺した。もうだいぶ日が傾いている。

ポンポニアヌスさんの家が遠かったせいだ。これからさらにカエキナさんの家に行ったら帰る頃には月が沈みかけているだろう。

今日の調査はここでやめて一度宮殿に戻ろう。セネカさんに調査の進捗を報告したい。それと調査のために費用が発生したことも……

誰かダイヤでスタックしてる私を救って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ