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暴君ネロの2度目の治世  作者: Kaiser
即位・ゲルマニア編
24/34

一難去ってまた一難

全部のエピソードこのタイトルでいい気がしてきた

大変だったぁ〜 族長がいきなり俺の正体をバラすから説明するのに一苦労だった。

ガイウスは俺がいなくなってたことも知らなかったから危なく信じてもらえないところだった。

信じてもらえたのも俺がセネカの名前を出したからだ。

どうもガイウスはセネカと知り合いらしい、そうじゃなきゃ多分信じてもらえなかっただろうな。


そして俺は今、馬車でローマ軍と一緒に野営地に向かっている。隣にはローマに来ることになった族長が座っていて、向かいには集落から無理矢理引き摺り出されたジイさんが乗っている。


「なんでワシまで……」

「ごめんなさいねールドヴィクスさん。やっぱりボクの護衛を頼めるのはあなたしか居なくてー」

「グリエルムスに頼めばいいでしょう!」

「あいつにはボクの留守を預かってもらわないといけませんからねー それにあなたとなら楽しい旅になりますよー」


ジイさんは『やれやれ』といった感じで首を振り、不満そうな表情でブツブツ言う。


「大体、ワシは集落がローマの前哨基地になるのも反対だ」

「え〜 かなり良い手だと思ったんだけどな〜」

「ワシらはスエビ族の支配から逃れるためにローマと手を結ぼうとしている。しかしあれじゃ支配者がスエビ族からローマに移っただけじゃないか。包囲を解くだけなら他にもやりようはあったはずなのに……」


文句を言うジイさんに俺は反論する


「でもそう悪いことばっかりじゃねぇぞジイさん。ローマと同盟する1番の近道は族長がうちの頑固な元老どもを直接説得する事だ。だけど族長が不在の時にスエビ族がアンタらの裏切りに気づいて集落を襲うかもしれねぇ。その時にローマ軍が駐留してりゃ守れんだろ?」


族長としても同じ考えのようで、頷きながら俺の言った考えを後押しする。


「ネロくんの言う通りですよー。ボクたちだけじゃ集落を守れないんだから、ここは一旦ローマの保護下に入っときましょー」


俺たちの説得でジイさんも不本意ながら納得したみたいで、口をへの字にしながら小さく頷く。

だが、まだ思うことがあるようで、さらに尋ねる。


「しかしローマがせっかく手に入れた前哨基地を手放すかね?そのまま永遠に前哨基地ってことはないだろうな?」

「そりゃ大丈夫だ。協力的なゲルマン人が独立して勢力を持つのは俺たちとしても悪いことじゃない。レヌス川の警戒に割く兵力を減らせるんだからな」

「なるほど、ローマはワシらに壁の役割を期待してるってことか」


そこからは誰もほとんど口を開かないまま野営に着いた。


「着いたぞ2人とも。降りろー」

「へー これが野営地かー 町って言っても過言じゃないねー」

「ワシらの集落より大きいんじゃないか?」


野営の大きさに呆気に取られている2人を馬車から下ろして、俺たちは野営のに入る。

中では族長を歓迎するために、兵士たちがちょっとした宴会の準備をしていた


「なんか歓迎されてるみたいだねー」

「言っただろ?友好的なゲルマン人は歓迎なんだって」


準備をする兵士たちを横目に俺たちは本部区画がある、野営中央へ向かう。

その途中、向こうから人影近づいてきた。カトゥス将軍だ。


「フレデリクス族長ですね。私はカトゥスと申します。伝令から聞いておりまが、なんでも村を前哨基地として提供くださるとか。本当にありがとうございます」

「いえいえー こちらこそローマへの同行をお許しいただいてありがとうございますー」


将軍と族長はガッチリと硬い握手を交わし、お互いの目を見て微笑み合った。


「今後のことなど、話したい事が沢山ありますが、まずはお2人ともお疲れでしょう。ご自由にお使いいただける部屋を用意しましたので案内させます」

「え!ほんとですかー!?随分と優遇していただいてありがとうございまーす」

「いえ、客人には当然の事です。それにローマへ出発できるのは明日なので、一晩はここで過ごしていただくので」

「なるほどー では遠慮なくー」


早速族長とジイさんは将軍の部下に連れられて、居住区の方に行ってしまった。心配だし、俺も追いかけようかと思ったら、カトゥス将軍が耳元でささやく。


「この後、司令室に来てください。1人で」


……なんだよ今の。怖ぇよ!

将軍はどういうつもりなんだ?俺の失踪を部下に伝えてなかったり、帰ってくるなり1人で部屋に来いだとか、動きがいちいち不穏なんだよな。

そんなことを考えつつも司令室の前まで来ちまった。

ドアをノックする。


「お待ちしておりました陛下。さあ、中へ」


言われるがまま部屋に入る。ドアを開けると将軍はすぐに自分の席に戻って深く腰掛け「ふぅー」と大きなため息を吐いた。

なんかメッチャ疲れてそうだな。


「発見が遅れて申し訳ありません陛下。軍に混乱が広がらぬよう限られた人物のみに伝えて、捜索は私の私兵にやらせたので時間がかかってしまいました」

「そりゃもういいよ。おかげで族長たちと話せたしな。それよりなんで呼び出した?」

「はい。実は昨日の夜、セネカ様からの書状が届いきまして。その内容がちょっと……」


将軍は持っていたパピルスを渡してきた。そんなに長い書状じゃないな。ここで軽く読んでみるか。

巻かれたパピルスを広げ、軽く1行目を読んでみる。

なんだと……


ブッルスが刺された。至急ローマに帰って来い。

書状にはそう書いてあった。

まさか……そんな。前世じゃブッルスが死ぬのはもっと後だった。それに死因も病死だ。

何が起きている?


「ブッルスが刺されただなんて……そんなことあるはずねぇ!」

「シーっ!声が大きいです陛下!陛下の側近が刺されたと知れ渡ったら、軍内に不安が蔓延してしまいます」

「あ……すまん」


どうなってんだ。何が起こった?前世じゃこんなこと起きなかった。いや、俺が前世と全く違う行動をした時から、前世の知識なんて役に立たないんだ。

クソっ……まさか俺が旅行したらブッルスが刺されるなんて。


「将軍、こっからローマに1番早く行ける道はどこだ?」

「陸路は最低でも3日はかかります。ナルボネンシスから船で直接ローマに行くルートなら1日です」

「すぐに船を準備してくれ!」

「既にナルボネンシスの総督に伝えて手配させています。が、準備には明日までかかります」

「クソっ……じゃあせめてナルボネンシスまで行って、準備が済み次第ローマに出発できるようにする」

「それがよろしいかと思います。既に馬車は用意してあります。オクタウィア様とあの2人には私から伝えておきます」

「ありがとう将軍!この恩は忘れねぇぜ!」


将軍は鳥の羽みたいに手をパタパタさせて「早く行け」と催促しつつも、顔はニコッと笑っていた。

将軍、ちょっと胡散臭いだけでメッチャいい人だったなぁ……


全速で走って野営地を出ると、将軍の言った通り馬車が待機していた。

俺は馬車に飛び乗り出発させる。

ブッルスは無事なのか?

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