レクリエーション
5000PV超えたから2万円分のフライドチキンが食べたい
どこに向かってるのかもあんまり解らず歩き続けること5分弱。族長は足を止めた。到着したのみたいだ。
これだけ満腹の状態で歩くと、5分程度歩くのも1000里の道のりに感じられるぜ。
周りはもう暗くなってるのに、この周辺は大量の松明で照らされててメチャクチャ明るい。しかもメチャクチャ暑い!
人も沢山いるし、近くには食べ物やビールを売ってる屋台まで出てきている。
ちょっとしたレクリエーションってゆうか、ちょっとした祭りだな。
それでどこに来たのかって言うと、柵で囲われた場所だ。俺はその柵の中に入れられて、椅子に座らされた。
柵の中に人型の人形が何体も置いてある。人形には矢も刺さってるし、多分射撃訓練場だろう。
普通こんなところでレクリエーションなんてしないだろう?弓の大会ともなれば別だけど。
もし弓の大会だったら非常にマズい。
俺の弓矢は決して上手とは……いや、下手だ。多分俺よりオクタウィアの方が何倍も上手だ。
こんな大勢の前で恥をかけねぇ。
いや、恥をかくだけならまだ良い。最悪なのは俺の放った矢が、あらぬ方向に飛んで行って、ここに集まった人に当たることだ。
俺の技量だったら全然ありえる話だ。
「どうしたのー 手が震えてるよ?」
「まさか弓を使うレクリエーション……じゃないよな?」
「せいかーい」
「ちょっと待ってくれ!苦手なんだよ弓!」
「大丈夫。君は観客だから」
なんだ驚かせるなよ。俺に弓を握らせたら本当に死人が出かねないからな。とりあえずその心配はなくなった。
「でもそれなら柵の外でいいだろ。なんで中なんだよ」
「ここが特等席なんだよ。ほら、選手の目線で観戦できるでしょ?」
確かに言われてみればそうだ。選手目線で観戦できる場所なんて最高だ。
ただちょっと危なくないか?
「おい見ろ!グリエルムス将軍とルドヴィクス将軍だ!」
突然観客の1人が叫んだ。
時が止まったように周りの観客が静まり返った。その直後、大きな歓声が上がる。
なんだなんだ?何が起こったんだ?
「グリエルムスとルドヴィクスって誰だ?将軍って聞こえたけど?」
クソっ!歓声が凄くて族長に声がとどかねぇ!目と鼻の先にいるのに!
これだけ大きい声なら、この森の外にあるローマ軍の野営にも届くんじゃないか?
「みんな!道をあけてくれえぃ!」
声デカっっ!歓声を圧倒する声量だ。
耳いたっ……
でも今ので歓声の方は止まってくれた。あと大声の主を覆っていた人だかりが捌けた。
人だかりの中心には鎧を着た人が2人いる。
……あれ?なんか2人とも見たことある顔だな……あの顔間違いない。鎧を着たうちの1人はあのジジイ……じゃなくてご老人だ、
なんであのご老人がここに居るんだ?
しかも将軍って呼ばれてたけど、まさか……
これは聞いてみるしかないな。
「ご老人……こんなところで何してる?さっきレクリエーションのことは聞いてないって言ったよな?」
「さっき族長から聞いた。それで出ることにした。暇つぶしにはちょうどいい」
「随分自信あるんだな。それにしても、あんたスゴい人気じゃねぇか。やっぱり将軍だからか?」
「まあ、そういうことだな」
「なんで黙ってたんだ」
「お互い、秘密主義ってことだ」
お互い……コイツ、俺がローマ皇帝ってこと知ってるな?
族長が耳打ちしてる時か。
「秘密主義でも名前くらい教えてくれるよな?」
「ワシはルドヴィクス。べつに無理に名前で呼ばなくてもいい」
「じゃあジイさんって呼ぶよ。ってなると、声のデカいあんたがグリエルムス将軍だな?」
「そのとぉりだ!」
声がデカい自覚はあるんだ……
ご老人が将軍だったこともビックリしたけど、それよりもグリエルムス将軍の顔の方が驚きだ。
グリエルムス将軍の顔は族長と瓜二つで、見分けがつかない。
「あんたと族長は兄弟なのか?」
「そうだぁ!腹違いの弟だけどな!でも似てるだろぉ?だから兄者の身代わりもできる!」
「喋り方はずいぶん違うな」
「そぉなんだ!だから今日も兄者のフリしてスエビの使者を欺くのは大変だったぜ!まったく兄者は人使いが荒い!!!」
族長はきまり悪そうに苦笑いしている。
「あれじゃ嫁に逃げられるわけだ!それに兄者は――」
「グリエルムス も、もうやめて……」
さすが弟だ。族長の弱点を的確についた。
族長って無敵の人がかと思ったけど、意外とそんなことないんだな。
「そ、それより早速始めようか!」
必死だな族長……
「ルールは簡単だよー それぞれ30本の矢を放って、最終的に得点が高い方が勝ちでーす。的の足が腕に当たったら1点、胴体に当たったら2点、頭に当たったら3点。あと先に矢を全部放った方に3点追加されまーす」
なるほど面白いな。両方が最高得点をとっても引き分けにならないようになってるのか。
多少正確さを捨てて速さを優先することも重要かもな。
面白いルールだ。ローマでも取り入れようかな。
「それから障害物も設置されまーす」
ただでさえ距離があるのに障害物まであるのか。結構難しそうだな。
お、運ばれてきたぞ。あれが障害物だな……ちょっと待て!難しすぎないか!?
障害物って言うから的の周りに邪魔なものを少し配置する程度かと思ってた。だが俺の目の前に形成されてくのはそんなに生ぬるいものじゃない。
木の柱を地面に何本も刺して、的までの視界を悪くする。この時点でもうほとんど不可能に近いのに、さらにその柱と柱のを繋ぐように細い板を打ち付ける。
張り巡らされた木の板はまるで蜘蛛の巣みたいだ。
「おいおいおい、こりゃ無理だろ。的がほとんど見えないぜ?」
「うちの将軍をナメないでよー こんなの簡単」
「過信しすぎだ」
グリエルムスとジイさんは柵を越えて訓練場に入ってきた。
2人は障害物の正面に立って弓を構える。
この障害物の量に疑問持たないのか?
「準備はいい? それじゃスタート!」
族長の合図で2人は同時に矢を放つ。
凄い!矢が障害物の間を縫って行ったぞ!
しかも次の矢を準備する時間が驚くほど早い。すぐに2発目を発射する。
またまた障害物を通り抜けた。
28本目まで撃ったけど、2人ともほぼ互角だ。
でもグリエルムスの方が少しだけ矢を撃つ間隔が短い。このままいくとグリエルムスが勝ちそう……ってちょっと待てジイさん、何してんだ?矢を2本同時に撃とうとしてないか?
まさか同時に撃って、先に全部の矢を撃ち終わろうって算段か!でもそれ当たらなきゃ意味ないよ?
神話じゃないんだから2本同時に撃って当たるわけ……マジかよ、意外と当たるもんだな……
ジイさんの矢は2本とも障害物を抜けて的に当たった。
「スゲェ……」
2人とも全弾を頭に当てて最高得点を叩き出した。
ジイさんが先に撃ち終わったから3点が追加された。
その結果、勝負は93対90点でジイさんの勝利だった。
今回は弓がメインの話でしたが、俺は弓の知識皆無なので、変なところがあるかもしれないんですが生暖かい目で見てやってください。