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暴君ネロの2度目の治世  作者: Kaiser
即位・ゲルマニア編
14/34

夜の森ってちょっと怖い

森の中はとても暗い。

松明はゲルマン人に見つかる可能性があるので持ってこなかった。

だから唯一の明かりは、木々の間から差す月明かりだけで、ほとんどのものは暗闇が隠してしまっている。

だが、いくら暗闇でもこの悪臭は隠しきれない。


「うっ……クソっ。んだよ、この匂い!」

「血と肉の腐った匂いだよ」

「ヤバい……吐きそう」


酸っぱいものが込み上げて、喉を焼くのをを感じる。

喉に感じるヒリヒリする痛みを唾と一緒に無理矢理飲み込む。

気持ち悪い……最悪の匂いだ。

その匂いは森の奥に行けば行くほど強くなる。


吐き気を堪えながら奥に進むと、月明かりが反射してキラっと光る何かを見つけた。


「なんだあれ?」

「待って」


光るものに近づこうとした俺を、ハデスは腕を引っ張って止める。


「私が先に行くよ。なにかあると嫌だからね」

「今日はずいぶん心配してくれるんだな」

「君に死なれると困るんだよ。まだやってもらいたい事があるからね」

「その割には、その“やってもらいたい事”について全然教えてくれないじゃねぇか」

「教えるタイミングがないだけだよ。さっきもその話をしようと思ったらこんなことになっちゃったし。気になるなら今は私の後ろにいてね」


別にそんなに気にはならないが、安全な場所にいるに越したことはないから、言われた通り俺はハデスの後に附いていく。

ハデスは慎重に光るものの方に歩いて行く。

俺もその後を追う。


ある程度近づくと何が光っていたのかわかった。

多少予測はしていたが、月明かりが反射していたのは、やはり重装騎兵の鎧だった。

鎧の隙間からは、青白くなった肉が見える。

酷い死臭だ。

死んでるのは鎧を脱がせるまでもなく分かる。


「まあ、そうだよな……この匂いだもんな」

「ネロ、気を抜かないで。この人を殺したやつが近くにいるかも」

「確かにな。あ、そうだ!こいつの装備を使わせてもらおう。鉄製だから矢はもちろん、並の槍じゃ貫けねぇ」

「その鎧本当に信頼できるの?現にその人死んじゃってるけど」

「……でもないよりマシだろ?」


そう言って俺は死体から鎧を外す。

暗いから手探りで、ひとつひとつ固定具を外していく。

そうして全ての固定具を外し、まずは肩部を守る部分を外した。

次に腹部を守る部分を外すが、なんだか違和感を感じた。

鎧が死体に引き戻されるような変な感覚だ。

俺は暗い中、わずかな月明かりを頼りに鎧に目を凝らした。


「うわぁ!!」

「どうしたのネロ!」


俺の悲鳴を聞いてハデスが駆け寄る。

俺は違和感の正体に気づいて、驚きのあまり鎧を落としてしまった。

腸だ。

死体から出てきた腸が鎧に引っかかってたんだ。


「ハデス……腸が……」

「え?うわ!本当だね、これはひどいよ。あぁあぁ、よく見たらこの死体穴空いてるじゃん」

「穴?」

「ほら見てこれ、お腹におっきい穴が空いちゃってるよ」


確かによく見ると、死体の腹部には穴が空いている。

改めて落とした鎧を見てみると、鎧の方にも同じ大きさの穴が空いていた。

つまり何かが鎧を貫通して、身体に穴を空けたことになる。

だけどこの穴の大きさはなんだ?俺の拳の3倍くらいはあるぞ

弓とか槍じゃないのは間違いないし、多分剣でもないだろう。


――ドシン


「ん?なんだ今の音」

「わからない。でも警戒して。何かいるよ」


地鳴りのような音が俺の思考を阻害する。

それと同時に地面も揺れる。


この音……野営で聴いた音と似てる。

でも今回は音が凄く近い。

しかも音が……近づいてくる!?

地響きと地鳴りが大きくなって、森の木々が折れるバキバキという音も聞こえるようになってきた。

森の中から何かが来る!


「ネロ!来るよ!」

「わかってる!」


そしてついに俺たちの前の木が倒され、そいつの姿があらわになる。

そこにいたのは頭部は牛、身体は人間。

半人半獣の怪物、ミノタウロスだった。

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