学園発展
朝。洗面台で顔を洗う少年サバンナ。
昨日の反省を踏まえる。
失礼だった。彼女への配慮を考えてなかった。
機会があるなら。今度は……。
そう思いながら。鏡に映る自分の顔を見つめる。
「……顔はいい方なんだがな」
登校中。カバンをぶら下げながらいつもの道で。
少年サバンナは友人に声を掛けられる。
「おはようさん!」
「あ、おはよう」
軽く右手で「ヨッ!」と。ジェスチャー交じりで挨拶を交わすのは友人のパンタナ。
金髪で爆発が特徴のアフロ少年だ。前髪が鬱陶しいのか幾つかのヘアピンとヘアバンドで纏めている。
気になるなら切ればいいのに。とは、なかなか言えないでいる。
「最近。少し退屈で体を動かそうと思うんだが。どうだ? 付き合えよ」
「何するんだよ。かけっこ程度なら付き合うぞ」
「かーー! かけっこなんて幼稚ィ幼稚ィ。俺のする事じゃないぜ。」
「馬鹿にするなよ。かけっこで稼げる奴もいれば。かけっこを生き甲斐にしてる奴もいるんだぞ」
「まあ、世界にはそういう奴らが居るだろうが。規模を広げるのは反則だぜ。世界には世界の。俺たちには俺たちの尺度ってもんがあるんだ。同じ定規で測れよな」
パンタナは得意げに話す。かけっこ。俺は好きなんだが。
「で、何すんだよ。スポーツ? トレーニング? ダイエット? そこを詳しく」
「ん? まあ、今。俺の衝動を掻き立てるのはスケボーだな。昨日カタログで見たんだが。ついに。満を持して。ようやく。やっと。ついに。俺たちの町からの流通がスタートしたのだ」
「へえ。いいじゃん。俺も付き合うよ(ついにが2つあったな)」
「そう言ってくれると思ったぜ。今度の休み。見に行こうぜ」
「ああ」
悪い話じゃなかった。
カタログをあまり見ないタイプの自分でも。帰ってから取り寄せようと思うほどに。
持ちかけられた話題は嬉しいものだった。
「そうか。何だか誇らしい気分だな」
故郷の発展がこれ程までに心躍るのは。黄金郷の住人である証だろう。
自然と笑顔が零れる。
「スケボーはしたこと無いが。自転車感覚で出来るだろうか」
「んなもん。やってみるまでってやつよ。まあ、タイヤ4つ付いてるし。三輪車よりは簡単じゃねえの?」
「つまり二輪車に乗れる俺たちには。おちゃのこさいさい」
「そういうこと。よく理解してるね。サバンナ君。優秀な人材は好きよ。好き好き」
他愛ない話。冗談交じりの話。
故郷を出てこの街にやってきた2人。
学ぶコトは沢山だが。たまには休憩。悪くない。
話に花を咲かせつつ。2人は青春道を歩んでゆく。
ここは「学園発展」。
学びの都。六法街。