第4話 真実
「なんでだよ、キルヒアイス!」
叫ぶオレにキルヒアイスは表情を変えない。
「各国の王をはじめ、来賓が多く来られます。明日の予定を変更などできるわけがありません」
……確かに。
とはいえ、イザベラをストーカーすることもできないし、片想いのまま別な子と結婚なんて、もってのほかだし!
だいたい16歳で結婚って、意味わかんなくね?
ありえねー!
メインの肉料理を頬張りつつ、となりのリアはオレに「あーん」とか言ってくるし、うざいし。
「自分で食えよ」
「いいじゃない。あたしが食べさせてあげる」
「いらん!」
不意に食堂の扉が大きく開け放たれた。
そこに現れたのは、ピンクのドレスを振り回した“わがままボディ”の女の子が……!
ギリ胸のトップが隠れたレベルのドレスは、フリルがたくさんあしらわれた花びらのようなドレスだ。
金色の髪はハーフアップにされ、毛先は縦ロールに整えられてる。
さらにドアを開けただけなのに、胸がバインバイン動いてる……。すげぇ……!
「ラインハルト様、こんなところにいらしたのね!」
「え、あ、誰、あんた」
「まー、おひどい! クリスティーネのことをお忘れになって?」
あー……
ちょっとしたハーレムなんだね、オレ。
でも、その乳袋はダメだ。人外じみてる。
なんだ、これ。女向けの本じゃねーのかよ。
ステーキにかかっていたマスタードソースがうますぎて、パンにつけてまで食べてしまうが、ちょっと待って。
もしかして、オレの物語って………
オレの左隣にはリア、右隣にはクリスティーネがいる。
とても考えがまとまらない。
朝のスズメよりやかましい!!!
「だぁ! うっせー!!! オレ、ちょっと散歩行く!!!!」
デザートまで食べたかったが、もういられない。
オレは食堂を飛び出すと、廊下を走る。走る。走る!
すぐに中央階段が見え、大きな扉が見えた。
オレはそこを駆け降り、ドアに向かっていくと、ドアが勝手に開いていく。
そこに広がったのは、大きな庭園だ。
ここだけ見れば、どっかのヨーロッパに見えなくない。
だが、花の色が虹色でファンタジーだし、庭に飛んでいる虫も、妖精ってヤツだ。
「……やっぱ、あの本の中なんかな……リアルでファンタジーに慣れん……」
花の壁に釣られるように歩いていくと、ガゼボに着いた。
誰もいない場所に、少し安心する。
屋根越しに見上げた空には、レモン色の雲が流れている。
空が青いのに、雲が黄色なのは、目が痛い。
「……あの、ラインハルト様……」
大きく振り返ったとき、そこには地味目の女の子がいた。
少し緑がかった茶色の髪はゆるく流れ、大きな瞳は黄金色で、ハの字に寄った眉が彼女を儚くしている。
薄幸そうな雰囲気をまとっているが、リアやクリスティーネにない、可憐さがある。
「イザベラ様とは、どうなりましたか……?」
上目遣いで尋ねた声音は震え、目も潤む。
オレはすぐに気づいた。
この子とイザベラを入れ替えたんだ、この王子は───
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書くのが初めてに近いもので、感想や割烹で、悪役令嬢モノ、色々教えていただけたら嬉しいです。