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【完結】氷結の聖女と焔の騎士  作者: 冬月光輝
第一章『呪われた忌み子』

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11.疑惑のギルドマスター(エルドラド視点)

「かーっかっかっか! 忌々しい連中がいなくなって清々したなぁ! やはりこれからのギルドはスタイリッシュさが求められるからな。呪われたガキがいたら辛気臭くて敵わん!」


 ぐふふふ、孤児院から呪われたガキを引き取ったときは反響が凄かったなぁ。

 人情派ギルドマスターのエルドラドさんと巷で有名になって、寄付金がっぽり稼がせてもらった。


 特にアルガモン公爵からの寄付金は大きかったなぁ。しめて金貨二百枚。そりゃあ、俺の歯も黄金色に輝く。

 公爵様は世界でも有数の金持ちだから金払いも最高だった。あの金貨の匂い忘れられないよなぁ。


 やっぱり、イメージってのは大切だよ。

 特に俺くらい規模のギルドは仕事の取り合いだからな、こういうイメージ戦略が上手く働いてくれなきゃ金を引っ張れない。


 そして色々と書類をゴニョゴニョして脱税、脱税。世の中、抜け道があったら使わなきゃ損。

 地道にコツコツなんて、ありゃあ阿呆がやることだ。

 世の中、コネと裏金。あとは要領さえ良ければのし上がれる。


 今年は大事なのだ。冒険者ギルドはその総合実績の大きさで国からの補助金の金額が変わる。

 我がギルドはあと少しだけ実績を積めばギルドランクが国内で十位の大型ギルドに匹敵するほどまでになった。


 ここで俺は勝負に出る。要らない人材を自主的に退職させて収益率を底上げ。

 さらにギルド員どもの給与を三パーセントほど特別手数料として天引き。

 最後に呪われた忌み子としてのイメージがギルドに合わないとして、あの二人のガキを解雇。


「ぐふふふ、かっかっかっ! 完璧だ! 何度計算しても今年のギルドの総合収入はトップ10入りは確定! それもがっぽり脱税できるだけ裏金を作った上、でだ! 俺って天才じゃね? くくく、この調子で最高のギルドってやつを作ってやる!」


 そうさ。俺にはでっかい夢がある。

 ガキの頃はさ。毎日、毎日、食うのにも困って、クソみたいな人生だったさ。

 だが、冒険者ギルドに入って、血反吐を吐くまで働いて、時には仲間を裏切り心を痛めて、ギルド建設の頭金を死にものぐるいで稼いだ。


 よく考えなくても俺はよく頑張ったよ。国内有数の大ギルドのマスターとなれば、今まで俺を馬鹿にしていた連中を見返すことができるだろう。


「ギルドマスター、アルガモン家の使者を名乗る方が面会を求めておりますが、いかがします?」


「アルガモン家だと? 公爵様のところの使者が俺に用事だって? まさかまた寄付がしたいとか、そんな感じか?」


 公爵様も欲しがりだねぇ。金も地位も名誉も持っているのに、こんな偽善に満ちた慈善活動までするんだから、頭が下がる。


 まぁ、ああいう輩がいるから良い人キャンペーンをやって大成功だったんだけどな。

 

 落ち着いてきたら今度またそのへんの孤児を拾ってくるか。

 偽善ってのは金になる。人は誰しも良い人だと思われたい。寄付っていうのは一番手っ取り早い良い人になる方法だ。


 つまりは金持ちの道楽。俺みたいなやつはその受け皿になってやればいい。


「あの、ギルドマスター。どうしますか?」


「馬鹿か貴様!? んなこと、いちいち俺に聞くな! 早くお通ししろ! あと茶を出せ! いつもの安物じゃないぞ! 高いやつな!」


「はぁ……」


 ったく、指示待ち人間の愚図が! 言われんと動けぬとは。 


 ああいう輩はチャンスを見失うんだ。即断即決のときに保留にして金を得る機会を失う。

 一生使われて終わる連中の典型。雑魚中の雑魚。


 まぁいい。とにかく臨時収入をいただけるとなればテンションも上がる。

 今日は久しぶりに飲みに行くか。かっかっかっ!



「エルドラド殿、主は多忙のため来れずに申し訳ありません。私はアルガモン家の執事ビルフォードと申します」


「これはこれは、ご丁寧にどうも。ギルドマスターのエルドラドです。公爵様には多額の寄付をいただきまして、そのおかげで今日も世のため人のため、健全にギルド運営をさせていただいております」

 

 アルガモン家の執事か。公爵様が自らがやって来ないことは若干の不満だが仕方あるまい。

 まぁ、俺としては金がもらえりゃ問題ないわけだし下手に気を使わない分、逆に都合が良いかもしれん。


 今回は金貨を何枚もらえるだろうか。金貨が詰まった袋の匂いは今も忘れられない。

 あの匂いを嗅ぎながら食う飯が美味いんだなぁこれが。セレブの嗜み、金嗅ぎ飯。ああ、また味わいたい。


「今日はエルドラド殿に確認したいことがありまして、馳せ参じました。いくつか質問をしてもよろしいですかな?」


「質問ですか? ええ、それは構いませんが」


 じれったいなぁ。もう。

 質問など好きにすればよいが、金を渡したあとにしてくれんか? 面倒だが仕方がない。質問くらいは我慢して答えようぞ。


「ありがとうございます。まず最初はエルドラド殿が孤児院から引き取ったアーシェ・アーウィンさんとアレス・マギナスさんの現在ですが、いかがです? その後」


「うげっ!? あ、アーシェとアレスですか? そ、そうですなぁ。うーむ」


 まさか今さらアーシェとアレスのことを聞かれるとは思わなかった。

 あいつらがどうしているなど知ったこっちゃない。野垂れ死にしようが一向に構わんと思っていたからな。


 まぁ、これは世間話の延長だろう。適当に答えてやればよい。


「エルドラド殿、私はなにか難しい質問をしましたかな? 主は孤児院から引き取られたお二人をいたく心配して折られて。近況を聞きたいと申しているのですが」


「いやー、まぁ。元気でやっとりますよ。こちらとしても身柄引受人としての義務がありますから、大切に大切に扱っております」


 くそったれ。公爵様ともあろう方が呪われた忌み子をいちいち気にかけるでないわ。

 どうせ、寄付した場所を気にかけていますよアピールに決まっている。


 まったく、金持ちの考えることが分からん。


「そうですか。それはなにより。でしたら、今から私に会わせてくれませんか? 公爵様に近況としてどんな勉強をしているのか、などを教えてさしあげたいのです」


「ぶえっ!? あ、会うですと!? そりゃあ、無理なことを……」


「えっ? 元気にされているのに無理なんですか? 一体、なぜ?」


 ちっ、面倒くさいことになった。アーシェとアレスはとっくに解雇にしとる。

 どこに行ったのかも分からんのだから、会わせられるはずがないだろう。

 

「いやー、今あの二人はちょっとした難関依頼に挑戦中なんですよ。二週間ばかりかかる上に危険なので生きて帰れるかどうか……」


 そ、そうだ。死んだことにしよう。

 ギルドの難関依頼は死ぬ人間も少なくない。あいつらは仲良く殉職。

 死亡報告書は俺の秘密のルートで作らせる。金はそれなりにかかるが仕方あるまい。


「難関依頼? あなたは先程、大切に扱っていると言われましたよね? 危険な依頼に参加させているのですか? 公爵様がそれを聞いたら、嘆かれるでしょうな」


「ううう、そ、それは。い、いえ、難関依頼と言っても名ばかりのやつでした。死ぬ危険など一切ありません」


 いちいち細かいところにツッコミを入れよってからに。

 どうする? これは、もしやあの二人を会わせるしかないのか。

 だがどうしたらそれが叶う? この広い王国のどこにいるのか、それどころか生きているかどうかすらわからんのだぞ。


「生きているならば安心しました。それでは依頼を終えるまでこちらで待たせていただきます」

  

 意味がわからん。別に会えんでもいいだろうが。さっさと諦めてしまえばいいものを。


 ――大捜査だ! 大捜査するしかない!


 あいつらを見つけ出して、小銭を握らせてこの男を安心させる。

 再び処理することになるが、それは後で考えればよいだろう。


「どうぞいくらでもお待ちください」


「それでは遠慮なく。……あと、我が主は嘘が嫌いです。あなたが吐いた啖呵が偽りだとわかれば、本当にあなたを許しはしませんのでそのおつもりで」


 ぐぐぐ、これは我がギルド始まって以来のピンチか。

 くそったれ。呪われた忌み子どもが! いなくなってもおれの足を引っ張りやがる。

 

 とにかくギルドの中でも人探しに長けた人材を捜索に加えるとしよう。


 大丈夫。俺はまだ大丈夫。このまま終わる男ではない。

 ビッグマネーを掴むまで、俺の夢は終わらないのだ!!

 

◆第一章までお読みいただいてありがとうございます◆


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