第6話: 偽り
「全てを教えてあげる。」
紗夜は静かに呟いた。でも、何かが、゛あの時と゛違う。
なにか企んでいるような、楽しんでいるような―――。
そんな気がしてならない。
「でも、一つだけ最初に言うけど。」
「……何?」
「あたしが今から話すことは、すべて現実よ? 偽りなんかじゃない……。
それをよ~く頭の中に入れて置く事ね? そうしないと貴女は……ふふ。
狂ってしまうもの――。まぁ、このことを聞いた位で変わりはないわ。」
「どっちにしろ同じって事じゃない…」
「まぁ、そうね。あんたの言う通りだわ…」
私は一言間を開けて言葉を紡いだ。
「で、話してくれるんでしょ?」
紗夜は私の言った事に対して鼻で笑う。
「ふーん。あたしが話してあげると言っただけで、あんたは直ぐ調子に乗るのね? 憂?」
「はぁ?……ばっかじゃないの? 」
「ふふふ。違わないでしょ?でも、忘れないで? 全ての鍵を握っているのはあたしだって
事を……いい?」
「……。」
「じゃあ……貴女が待ちに待った物語をあたしが話してあげる。」
そう言って紗夜は微笑んだ。
紗夜は静かに息を吸い私の顔を見た。
紗夜が話そうと唇を動かしたそのとき……。
いきなり、電話が鳴り響いた。
まるで、話を聞くなとでも言うように―――。
そして、電話の音が止み私は、紗夜の方に視線を戻した――…
すると、そこにはもう紗夜の姿が無かった……。
まただ。いつも紗夜は肝心なところで居なくなってしまう――……
話すって言ってくれたのに……。
私はそんな思いを胸に抱き、部屋を出た。
紗夜はその光景を何も言わず、木の枝に座り見つめていた。そして――
「貴女が真実を知るのはまだ早すぎる……。
もう少しだけ……時間を頂戴?
真実を知った時、貴女はどんな顔をするのかしら? 嘆き悲しむ? それとも……狂喜に踊る?
貴女の、その時の顔が見物だわ? それまで、精々(せいぜい)あたしを楽しませてね? 憂?」
紗夜の最後の一言は闇の中へと消えていった。




