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前夜

颯たちが町を出発してからおよそ六時間が経ち、空はすっかり暗くなっていた。

 次第に魔王城との距離も縮まり、少し歩けばすぐ位の距離まで進むことができた。

 そして一行は休むための場所を探し、近くにあった洞窟で今夜は休むことにした。


「それじゃあ腹も減ったし! 飯にしようぜ!」


 ギャレットがそう言ったのを合図に颯たちは決戦前の晩餐の準備を始めた。

 コトネは持ってきたリュックサックから干し肉などの保存食を取り出し一人一人に手渡す。小春はボトルと使い捨てのコップをカバンから出し、お茶を入れて配った。

 準備が整い、颯が合掌をした後号令をする。


 「それじゃあ、いただきます」


 「「「「いただきます」」」」


 その言葉を皮切りに、颯たちは一斉に食べ始めた。

 町の防衛戦からここまで動きっぱなしだったせいか、一行は多少まずかろうと、食事ができることへの感謝とパーティーとの団らんの楽しさで満足そうにしていた。その証拠に全員が食事中は笑顔だった。

 しかしいつまでも楽しさに酔うことはできない状況であることは忘れてはいないようで。颯たちは食事が終わるとササっと片付け、明日の作戦会議を始めた。

 まずは颯から作戦の提案を始めた。


「まずは侵入経路だ。この中から一人、明日の早朝に城の周りを見て、裏口があるかを調査して

欲しい。あればそこから侵入するが、無ければ正面から突入する」


 だが、と颯は一言入れて続ける。


「おそらく入り口は正面しかないだろう。俺が魔王ならそうする。裏口があるなら地下ぐらいだ。というわけで正面からの突入を前提に話を進めさせてもらう」


 颯の説明に全員が静かに頷く。それを見た颯は話を進めた。


「町を強襲し、それに失敗したことは魔王には伝わっているはず。そこから必然的に城の守りは強化されてるはずだ。正面から入れば間違いなくすぐに戦闘が始まるだろう」


 颯は簡易的に作った模型を使って説明をした。


「まずギャレットを先頭に。続いてミツキ、俺、コハル、コトネの順に隊列を組んで扉を開く。扉を開いたらすぐに攻撃してくるはずだから、まずはそれをギャレットが防いだ後、ミツキは先陣を切ってくれ。俺はミツキの援護、コハルはデバフを敵に、コトネは回復とバフをミツキにかけてくれ」


「は、はい!」


「分かりました」


「よし、任された」


「おう! 守りは任せろ!」


 コハル、コトネ、ミツキ、ギャレットの順に颯の提案にのった。

 颯はさらに話を進める。


「そこからは未知の領域だ。何があるかは分からない。だがある程度の魔物の特性は記憶してある。あとは、その場の状況と判断次第になる。覚悟は決めておいてくれ」


 その言葉を聞いたメンバーは息をのんだ。

 さて、と颯は前置きを入れてあと一つの議題を持ち出した。


「早朝の調査……希望者はいるか?」


「はいはい! 俺が行く!」


 颯の言葉に真っ先にギャレットが手を挙げ立候補した。

 颯は少し考えて、


「よし、分かった。よろしく頼む」


「よし! 任せろ!」


 そうして作戦会議が終わり、交代で見張りをしながら一行は明日のため休息をとるのだった。



 

「起きてください。ギャレットさん」


 早朝、ギャレットは最後の見張り番をしていたコトネに体を揺さぶられて起こされた。

 ギャレットはそれに気づき、眠たげな目を擦りながら上体を起こす。そして自分を起こしたコトネに挨拶をした。


「おう。コトネ、おはよう」


「はい。おはようございます。ほら、支度をしてください。偵察に行くんじゃないんですか?」


「お、そういえばそうだったな」


コトネとそんなやり取りをした後、ギャレットは支度をしてから偵察に出発した。

だが、目的は偵察ではなかった。

 ギャレットは早々に城のそばに来ると、早速行動にでた。


「よし、じゃあ作ろうか」


 ギャレットは右手を前に出した。その時手から強く光が放たれ、収まった時には城の外壁に一つの扉が出来上がっていた。

 ギャレットはその扉から城に侵入し、中にいる敵を弱体化したりトラップを仕掛けたりと様々な仕掛けを施し続けた。

 すべてのタスクを終えたギャレットは生成した扉から外に出た。そして再び城の方に振り替えって笑みを浮かべ、つぶやいた。


 「さて、どうなるのか、楽しみだね」


 その後はいつもの調子に戻り洞窟へ帰っていった。




まだ、運命の歯車が歪始めていることは――誰も知らない。

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