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準備

翌日、早速、打倒魔王に向けて準備をすることになった。

 やることはまず良い装備品、回復薬などを買い込むためのお金を稼ぐこと。そして個々人のスキルアップの二つだ。あと余裕があれば短い異世界生活をエンジョイするため、家具を買ったり、この世界を少し見て回るなどのこともしたい。

 ということで早朝、ギルドハウス前に颯たちは集合していた。 


「今日から魔王討伐の準備を開始する。俺たちに残されている時間は残り少ない。できるだけ手早く済ませよう」


「はい。分かりました」


 コトネは昨日と変わらない笑顔で答えた。

 ちなみに颯は一週間以内に魔王を倒すことは伝えていない。まず言ったところで信用されないだろう。しかしギルド協会の掲示板に、最近この街の周辺で魔物という存在が増え始めたらしい。そのことから恐らく、この町の冒険者たちはそもそもとして、魔王を早く倒さなければいけない、という危機感を持っているのかもしれない。だから颯はみんなに伝えることをしなかった。

 とりあえず颯は指揮担当として役割を分けることにした。


「コハルとミツキはクエストをできるだけたくさんこなして欲しい。とにかく金が欲しいからな」


「分かったわ」


「りょ、了解です」


 ミツキは堂々と、コハルは少し怯えたように返事をした。

 続けて颯は残った二人に、


「コトネとギャレットは、すまないが俺の訓練に付き合ってほしい。まだあまり戦い方を知らないからな」


「任せろ! 俺が一人前にしてやる!」


「構いませんよ」


 ギャレットは手を腰に当て元気よく、コトネは笑みを崩さずに答えた。

 颯はうなずき、改めて全員を見て号令をした。


「よし。それでは各自、行動を開始しよう」

 こうして各メンバーは己の役割を全うすべく、行動に移った。




 そして二日後、成果は徐々に出始めていた。

 ミツキとコハルは俺が思っていた以上のクエスト数をこなし、予定収入額を大幅に超える金額を稼いだ。颯も最初はギャレットに立ち合いでコテンパンにやられていたのが、あっという間に追い越すぐらいに成長した。ちなみにギャレットは訓練後ゾンビみたいに落ち込んでだ。次の日には何事もなかったかのように復活したが。

 そして四日目の夕方。颯はみんなと解散後、夕食の買い出しのため商店街にやってきていた。

 果物屋でいくつか注文をし店主のおばさんが果物を袋に詰めてくれていた、そんな時。


「? あれは」


 颯は綺麗な夕焼けを眺めていると、、そこには謎の大きな城があった。 


「おや、あれが気になるのかい?」


 果物を紙袋に詰め終わったおばさんが颯に問いかけた。

 颯はチャンスだと思い、おばさんの方に振り返り、あの城について聞くことにした。 


「はい。この前まであんな城は無かったはずですが」


「あれはね、魔王の城よ」


「魔王の?」


「ええ。何十年かに一度、魔王が蘇ったときに、あの城はこの世界のどこかに現れるの。最近魔物が増えてきたのも、あれの前兆。五十年前に完全消滅したって聞いてたんだけどねぇ」


「なるほど」


 魔王がこの世界を支配していた原因は、何度倒しても復活するしぶとさにあったのだろう。それを勇者か誰かが打ち砕き、永久消滅させたらしい。

 そして、あの光る球体がこの街に転移させたのは魔王が近くに拠点を置いていると践んだから。町の人たちに魔王の居場所について聞き込みを行っていたが、結果は何も聞けなかった。その原因は神出鬼没な魔王城の性質のせい、というわけだ。

 颯が納得したと同じタイミングでおばさんは話を進める。


「私はいま七十一歳だけど、今まで生きてきたなかで一番大きい城ねぇ。一体どうなることやら」


 おばさんは不安そうな表情で果物が入った紙袋を颯に渡した。


「お兄さん、くれぐれも気を付けておくれよ」


「はい。ありがとうごさいます」


 おばさんの忠告を受け、颯は礼を言って果物屋を後にした。

 ――そのとき、おばあさんがニヤリとしていたのを、一瞬だけ見た気がした。


「っ⁉」


 振り返り、おばあさんを見たが、本人は優しい微笑みを浮かべてこちらに手を振っていただけだった。


「気のせいか」


 ここ最近で環境が変わり、疲れていたのだろう。今日は早めに休もうと決め、颯は帰路についた。

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