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開始

「……ここは」

 

 楓はあの後、ベットの上で目覚めた。窓からは気持ちのいい日差しが差し込んできている。 おぼろげな意識のまま起き上がり、周りを見渡す。

 どうやらここは木造でできた一室で、このベットと、下の階へ続く階段以外は何も無い様だった。

「とにかく、無事に転生できたということか」


 颯はベットから降り、その足で階段から一階に向かった。

 たどり着いた先には、大きな机が一つ、椅子がそれを囲むように五つある。そして左側にはキッチンがあり、冷蔵庫らしき家具もあった。部屋の右側には玄関があった。靴入れもすぐ近くに置かれている。

 ここで楓は、一つだけやけに目立っている物があることに気づいた。


「宝箱、か?」

 

 それは玄関の靴入れのすぐ横にあった。それに近づき、恐る恐る開けた。

 するとそこには色々な装備や必需品が入っていた。


「あの光る球体が言っていたのはこれのことか」


 楓は納得して宝箱を開け、そこに入っていた物を身に着けていった。

 手探りで装着して行き、少し時間がかかったが、無事に終えることが出来た。

 体を軽く動かしていく。特に問題はなさそうだ。


「鎧、というよりかは服に近いな。こんなもので大丈夫なのか?」


 まあこれから質のいいものをそろえればいいか、そう考えた楓はさっそく町を見て回ることにした。

 玄関のドアを開け、外へ出る。

 するとそこは中世ヨーロッパを彷彿とさせる街が視界に飛び込んできた。

「……これは、すごいな」


 楓は感動のあまり少しぼーっとしていたが、すぐに我に返り、散策を再開した。

 今まで楓はヨーロッパ辺りは行ったことが無かったため、すごく新鮮な気持ちで街を見て回っていた。

 まずは住宅街。茶やうす橙の屋根、全体のデザインは違えど六つに区切られた縦長の窓という共通点を持った家々が、窮屈そうに間を詰めて並んでいる。

 住宅街を抜けた先には市場があった。住宅街で見たような建物の下にテントを張り、そこで果物や雑貨が売られていた。その中には宝石や武具といったものもある。楓は武具店が少し気になったので寄っていくことにした。


「へいらっしゃい! ゆっくり見ていきな!」


 強面店主が元気よくそう声をかけてくれたので、楓は会釈をして並んでいる武具を見ていった。

 剣に槍に弓、それに防具も、見た目は良さそうな品物がたくさん並べられている。その中には楓が身に着けている物ももあるが、それはすべて店の中で一番安いものだった。


「まあ、下手に高いやつだとそれはそれで困るけどな」


 最上級の武具で無双するよりも、最低限の武具でのし上がっていくほうがわくわくするかもしれない。

 ある程度見終わった楓は店主に挨拶をして歩き出した。

 しばらくすると大きな広場に着いた。

 目の前にある時計塔を中心に様々な建物が並んでいる。道もいくつか分かれているようだ。

 その中で颯が一番気になっていたのが、


「ギルド協会か」


 時計塔の向こう側、城のような形をした大きな建物、その一番上に立っている旗にギルド協会と、まさかの日本語で書かれていた。

 日本で身に着けた知識だと、冒険者と呼ばれる人たちがクエストという依頼を受けてそれをこなして生活していくために必要不可欠な場所とされている。


「ここに行って冒険者となれば、訓練しながら金を稼ぐことができるのか。それなら早速行った方がいいな」


 楓はすぐにギルド協会に赴くことにした。なにせ楓には一週間しか猶予が無いのだ。行動は早い方がよいだろう。

  扉の前に移動し、扉を開く。

 途端に中から騒がしい音が聞こえてきた。


(さすがにうるさいな)


 喧騒に耐えながら、中に入っていく。

 内装はいかにもRPGでありそうな雰囲気だった。壁は木造で、床は石造りらしい。奥には受付らしき窓口があり、その左横には掲示板があった。右奥には二階に続いている階段があり、後は木製の机や椅子がずらりと置かれてあった。

 楓は一直線に受付へ向かう。到着すると、受付嬢が笑顔で挨拶をしてくれた。


「いらっしゃいませ――」


 受付嬢はなぜか語尾で声が小さくなった。なぜか顔も赤くなっている。


「冒険者になりたいのですが、いったいどうすればなれるのですか?」


「え⁉ は、はい! それならば冒険者登録をすれば正式になれますよ」


「なるほど。では早速、登録をさせてください」


「で、ですが冒険者になるための試験を行わなければならないのです。いきなりは難しいと思うので、後日にいたしましょうか?」


「今すぐで構わない」


「か、かしこまりました。では担当の先生をお呼びしますので、その間にこちらの紙に必要事項をご記入ください」


 受付嬢はそう言ってから紙とペンを楓に渡し、「きゃー! かっこいいーっ‼」とこちらに聞こえる程度の小さい声を発しながら去っていった。

 それでなにか感情を揺さぶられることは無かった。昔から顔がいい楓は周囲の女子からかっこいいといわれ続けたのだが、楓は周囲から注目されることは好きではなかったのだ。

 書類を書き終えたと同じタイミングで、ムキムキお兄さんが目の前に姿を現した。受付嬢が言っていた先生なのだろう。


「やあ。君が試験を受けに来た人だね? 僕が今回の試験官と務めることになったから、よろしく」


 お兄さんは笑顔でそう言って、楓に手を差し伸べた。

 楓は愛想笑いを浮かべ、お兄さんの手を握りながら挨拶をした。


「はい。楓といいます。よろしくお願いいたします」


「うん。いい返事だ」


 お兄さんはそう言ったあと、握手した手を少し上下に振り、手を離した。


「それじゃあさっそく試験を開始するから、ついてきて」


「はい。分かりました」

 そうして楓はお兄さんの案内の元、試験会場に行き、試験を受けた。

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