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文学少女の君は何を思ふ。  作者: 漱石枕流
2/2

邂逅

彼女との出会いは入学式の日まで巻き戻る。


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「…入学生代表、井野雫。」

「はい。」


凛とした声が体育館に響いた。

彼女はとても綺麗で、入学生代表ということは入試1位だったんだろう。神様は少しばかり不公平な気がする。まあ、世の中そんなものか。


(まあ、彼女と仲良くなるなんてことはないのだから気にするだけ損だと言うものだ。)


など考えていたら彼女の挨拶が終わったらしい。

その後特に問題もなく入学式が終わった。


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帰り道、公園で泣いている小さな男の子がいた。近くにいた同じ高校の女子高生が声を掛けていたのに男の子は泣くだけで何も答えない。いや、答えられるだけの余裕がない。それにイラついたのか女子高生は舌打ちをしてどこかへ行ってしまった。これを見て幻滅をした。いや諦観を覚えたと言うべきだろうか。


(どんな人でも結局は自分が中心の世界を生きているんだろう。まあ、それが正しいからマイノリティな考えを持つ自分は生きづらいんだろう。正しさとは、詰まるところ多数の意見であって本当の正しさなんてないのだから。)


「どうしたの?迷子になっちゃった?」


体育館で聞いたあの凛とした声が聞こえた。それでも男の子は泣き続ける。


(あぁ、あの子もきっと男の子を途中で見捨てるんだろうな。)


泣き続ける男の子を見て、困った顔をしながらどこかへ行ってしまった。


(やっぱり顔は良くても…)


「これあげる。」


またあの声だ。見捨てたんじゃなくてわざわざジュースを買いに行ったのか?まあ、それくらいの偽善はするのか。


「何があったのか、お姉さんに教えて。」


ジュースを飲んで少し落ち着いたのか男の子は少しずつ話をする。要約するとやっぱり迷子になってしまったらしい


「んー、最後にどんなところに住んでたのか教えて。」


男の子が家から見える景色を言うと


「あー、家はあそこらへんか。じゃあお姉さんもそっちだから一緒に行こうか。」


こくこくと頷く男の子。なんとなく不安になり、彼女の後をついて行くと男の子の顔がだんだんと明るいものになっていく。きっと見覚えのある景色が多くなってきたのだろう。そして男の子が急に走り出した。


「ままー!」


そのまま母親らしき人に抱きついた。その後、男の子の母親は彼女にひとしきり感謝をした後、家へと帰っていった。安心したし帰ろうと思ったら、


「ねえ、なんで隠れて私の後を追っていたの?」


まさかストーカーだと思われているのだろうか。焦って


「い、いや違う。あの男の子が母親のところに行けるか不安で…」

「ふーん。まあいいや。名前と学年は?」


少しだけ優しそうな顔になった彼女を見て安心して、


「1年の村上直哉。」

「そう。村上君。いや小説家みたいだし先生と呼んだ方がいいかしら。」

「いや村上でいい。」

「まあ、どっちでもいいわ。帰りましょ。」

「えーと、家ここら辺なんじゃ?」


あの男の子にはここら辺に家があると言っていたが


「あんなの嘘に決まってるじゃない。さっさと行くわよ。それとも私にこんなに暗くなっているのに1人で帰らせるのかしら?」

「是非そうして頂けると…嬉しいのですが…」

「そう。早く行きましょ。」


彼女は人の話を全く聞かないらしい。ボートでは豪華客船に勝てないと知っている僕は大人しく着いていくことにした。


何ヶ月か経ち彼女と過ごしていて気づいたことが1つだけある。彼女は綺麗だ。いや外見もそうなのだが中身特に。クラスメイトからは外見は完璧なんだから性格が少し違ったら完璧だったのに、と言われていたが僕からすれば何を見ているの?と聞きたくなる。それくらい彼女の中身は綺麗だ。人を助けられるのなら自分が困っても構わないと思える彼女を僕は羨ましかった。そしてきっと彼女の事を気になっていると言うことにも気がついた。だから、決めた。自分が彼女に並べるくらいになろうと。いや、彼女が惚れる男になろうと。


それが井野雫という異端で剛担で可憐な女性との邂逅だった。












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