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「……明日は待ちに待った『祝福の祈り』だ。僕は一体どんな『祝福』をいただけるのだろう」
日もすっかり暮れて、辺りに夜のとばりが降りる。
広々と駆け回れるほどの室内に豪奢な絨毯や机、職人達が手作業で作ったと思われる調度品の数々。その部屋の真ん中辺りに位置するところに大きな天蓋付きのベットが1つ。
そこには、寝転がってるジークの姿があった。
「……しっかし、シャルにも困ったものだよな」
ジークがこっそり書斎出たあとのこと、パーラとメイド達と話したあとの話だ。
自室に帰ってまた本でも読もうと廊下を歩いていたところをシャルロットに見つかり、「紅茶が冷めてしまいます! 最高級の紅茶が!」とさけびながら、追いかけ回された。
(……確かに悪かったと思っているけどさ)
昼ごろのことを思い出し、大人が3人寝ても余裕のある広さのベットをゴロゴロと転がった。そして端までいくとむくりと立ち上がったジークは机まで行くと、その上に置いてある何冊かの本のタイトルに目を通した。
すると、一冊の本がジークの目に止まる。
「……何だこれは? 僕はこんな本を持ってきていたのか?」
どこか古ぼけた本に少し興味を惹かれたジークは本を手に取り、表紙に目をやった。
その本のタイトルは『アンデット指南書』。
作者の名前は、シルヴィア・シャロン。
「……アンデット指南書って、また俗っぽい本を書いている人がいるな」
このご時世、本はとても貴重である。
1つの本が出来上がるのにかかる金額は金貨1枚。平民の平均年収より高いものだ。その金額を使ってまでこのような本を作った人間はさぞ変人なのだろう。
そう思いながらもジークはその本に心惹かれていた。
「……まあ、眠れないし、暇つぶしに読んでみようかな」
明日の事が楽しみすぎて眠れないジーク。そんなところはまだまだ子供である。ジークは『アンデット指南書』を手に取り、ベットへと向かうと、ボフッと腰を下ろし本を開いた。
「なになに……、アンデットとは架空のものではなく実在のものであることをここにまずは記したい……」
アンデット──。
ジークも名前くらいなら知っていた。
娯楽小説などによく出てくる架空の化け物。ジークもそういった小説は好きだったのでよく読んでいた。
小説の中の英雄に感情移入して、化け物を倒したり、綺麗なお姫様を助けたりとしていく間に出てくる生命が失われているのにも関わらず活動する、超自然的な存在。
それがアンデットである。
「……伝承にあるように、アンデットの多くは太陽の光に弱いとされている。が、ごく稀に太陽の光を克服した存在も現れる……」
天蓋付きのベットでうつ伏せになりながら、真剣な眼差しで本に目を通すジーク。最初は古ぼけたただの変人が書いた本と思っていたジークは読み進めていくうちにこの本が放つ不思議な魅力に惹きつけられていた。
「……そしてアンデットの頂点に君臨するものの名を『不死の王』と我々は仮にそう読んでいる……か」
パタリと本を閉じるとジークは仰向けになると天蓋を見上げた。そして先程読んだ本の内容を反芻する。
(……アンデット……不死の王……我々とは一体誰の事を指すんだろうか、何かアンデットを倒す組織でもあるのだろうか)
本の内容を色々と頭に浮かべながらジークは程よく重くなった瞼を閉じる。するとそのまま微睡みの中へと意識が消えていく。
そして消えゆく意識の中、ふと亡くなった祖父から言われた一言が頭に浮かび上がった。
『……ジークよ、夜のとばりには気をつけなさい。この世ならざるものが跋扈し、人を襲おうと躍起になっているからな』
だがジークがその言葉を覚えている事はなかった。
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了