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「これはジーク様、このようなところにどうされましたでしょうか?」

 

 ジークへと声をかけてきたのは、この屋敷で働くすべてメイド達を管理している上級職ハウスキーパーのパーラであった。


 ジークに気付いたパーラは直ぐにジークへと膝を進めると、綺麗なお辞儀を披露する。

 まさに全メイドのお手本となる存在であった。感心したようにそれを眺めるジークはこの出来るハウスキーパーに優しく言葉をかけた。


「いや、君達の頑張っている姿がふと目に入ったものだから。少し労いの言葉でもと思ってな」


「まあっ、それは誠に嬉しゅうございます。──あなた達もほらっ、ジーク様が労いの言葉をかけてくださるそうですよ」


 パーラは後ろに直立不動で控えていたメイド達に声をかけた。

 ジークに気付いた瞬間に緊張のあまり表情を硬らせ、一言も発する事なくただただ石像のようになっていたメイド達は、パーラの声でまだ動きが硬いながらもジークの労いの言葉に次々と頭を下げ、恐縮している。。


 それを自然な流れで眺めていたジークは、不意にある事に気付く。廊下に一定間隔に並んでいる飾り棚。その飾り棚にある筈の芸術品が無く、ポツンと飾り棚だけがある場所があった。


 それを疑問に思ったジークは、パーラへと質問を投げかけた。


「パーラ、あそこに見える飾り棚の上の芸術品はどうした? 清掃でもしているのか?」


「……いえ、それは」


 ジークの質問に些か言いづらそうに立ちつくすパーラ。それを見たジークは瞳にそっと力を込める。

 するとパーラの後ろからゆらゆらと揺らめくオーラが視認できた。


(……この色、この揺らめきは……少しの怒り……それに悲しみ……か?)


 ジークは物心付く前から瞳に力を入れると、こうして人の感情、喜怒哀楽が色やオーラとして見る事ができた。

 ジークのちょっとした得意技である。


(……これは、何かあったようだな)


 瞳の力を緩めると、ジークは先程とは別の質問をパーラへと投げかける。


「……もしかして壊してしまったのか?」


「──いえっ!? そのようなミスをする練度の低いメイドがこの屋敷に居ようございませんっ!」


 先程とは打って変わって自信の篭った大きな声。パーラは自分が育てたメイドに相当の自信があるようであった。

 が、ジークとしても聞きたい事はメイドの事ではない、芸術品の事だ。


「……なら、どうしたというのだ……?」


「……単刀直入に言いますと、どうやら盗まれたようでして……私が付いていながらお恥ずかしい限りです」


「……盗まれた……だと?」


 ロレーヌ伯爵家へと盗みを働く輩がいたとは……と驚きの表情を隠せないジーク。実際、ジークが生まれてからそんな話など一切聞いた事がなかった。


「……はい……ですが目下全力で捜索にあたっていますのでジーク様はお気になさらず……。明日はジーク様にとって大切なお日にち、もちろん私どもメイド達も楽しみにしております。ですのでこの事は私どもに任せておいていただけないでしょうか?」


 真剣な眼差しで頼み込むように、深々と頭を下げジークを見つめるパーラ。その後ろにいるメイド達も引き締まった表情でパーラに続いて頭を下げた。


 それを見たジークは、はぁっとため息ひとつ吐くと、パーラとメイド達へ頭を上げるように言う。そして一斉に顔をあげたパーラとメイド達。


「……あんまり無理はしないこと、調度品よりも君たちメイドの方が僕にとっては大切なんだからね。それをよく知っておくように、いいね?」


 ジークが微笑みかけながら、優しく言葉をかけた。


 ジークの言葉にパーラやメイド達はいっぺんに顔を赤らめる。まだ子供とはいえジークは将来が楽しみな美貌の持ち主。


 そのような子に今のような言葉をかけられれば、女であれば誰だって顔を赤らめてしまう。これは必然であった。


「──はいっ! お任せください!」


 パーラとメイド達の弾むような声を後ろで聴きつつ、ジークはまた廊下を歩き出した。

 








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