9話 少女と魔剣術学校
いつも愛読頂きありがとうございます。
今までの話しを読み返して設定やおかしな所を修正しております。
母から手渡された王都の地図を見ながら目的の店を探して行く。
薬局に八百屋、精肉店にパン屋。
地図と一緒に渡された買い物リストの物はある程度買い揃えた。
用事は終わったし、普通なら帰宅する所だ。
だが折角の王都だし時刻はまだ昼過ぎ。
少し王都を見て回ろうと思いブラブラし出した。
王都の中心には大きな城が見える。
大きいと言っても大宮殿のような物ではなく、例えて言うならネズミの国のお城程度だ。
王都は左程大きくはない。
この町の王は田舎の辺境伯程度の位なのではないだろうかと用意に想像出来た。
それでもお城の前には兵隊が立っており、お城を警備している。
その中に父もいるのかと思ったら不憫に思った。
この程度のお城であれば兵士なんて人数もたかが知れているだろうし、「自分の剣が高めれない」と言う言葉に納得出来た。
町には小さな冒険者ギルドもあると聞いていた。
その内行ってみたいなと思っていた為、折角なので立ち寄ってみる事にした。
町のギルドは外観は西部映画に出て来るようなパブだった。
内開き、外開き、どちらもするドアが人が通る度に、「キーキー」と音を立てて開く。
俺もそのドアをくぐり中に入ってみると数人の屈強な男達が椅子に座ったり、テーブルに座ったり、酒を飲んだり、食事をしたり、本を読んだり、各々の時間を過ごしていた。
カウンターにはセクシーなそれなりにお歳のいった女性がおり、左脇には掲示物を掲示するボードがあった。
どんな依頼があるのか興味があった俺は掲示物ボードの前に行き眺めた。
【依頼書】
★ベビーシッター★
難易度:E
条件:7日以上出来る方
報酬:1日5B
【依頼書】
★スライム討伐★
難易度:D~E
条件:アイテム、スライムの破片3つ納品
報酬:10B
【依頼書】
★イノシーブル討伐★
難易度:C
条件:アイテム、イノシーブルの毛皮5枚納品
報酬:100B
【依頼書】
★ゴブリンの群れ討伐★
難易度:B
条件:ゴブリン10体以上討伐
報酬:1500B
などなど依頼書が貼ってあった。
報酬のBと言うのはビルの訳で、この国での円だ。
この前森で倒して食べたイノシシの魔獣は後日、家にある魔獣図鑑でイノーブルだと判明した。
毛皮一枚でいくらしたんだろう…そんな事を考えながら依頼書を眺めていると後ろから声をかけられた。
「あら。新顔?」
振りかえると俺よりも少し年上の女の子が立っていた。
俺よりも10cm位身長が高く、赤黒く胸辺りまである髪。
前髪は眉下で切り揃えられており、少し釣り目の綺麗な顔立ちをした子だ。
「ああ、いや、ちょっと興味があって」
そう答えると、
「そう」
と女の子は興味なさそうに掲示ボードの依頼書を眺めた。
「冒険者なんですか?」
俺がそう聞くと、
「そうよ」
と答えてくれた。
「俺とそんなに変わらないのに、もう冒険者なんて凄いんですね」
「凄くなんかないわ。仕方なくよ」
彼女は冷たく答えるとゴブリン討伐の依頼書をボードから剥がすと手に持ってカウンターへ持って行った。
後に聞いた所、冒険者登録は10才から出来るらしかった。
俺とそんなに変わらないのにゴブリン討伐に行く彼女を俺は尊敬の目で見ていた。
俺も10才になったら冒険者登録してみようかなとぼんやりと考えた。
そして王都を出て家への帰り道を歩いていた。
すると森の中から女性の悲鳴が聞こえて来た。
「きゃぁぁぁぁぁあ!!来ないでぇぇぇぇえ!!」
その声は近付いて来る。
俺はこの頃いつも持ち歩くようにしている木刀を腰の鞘から抜いて構えた。
すると森の奥から人影が近付いて来る。
それと同時に人とは思えない小鬼のようなシルエットの生き物が数体飛び跳ねながら追っているのが後ろに見えた。
段々見えて来たが、追われている人は先程ギルドで話した女の子で、それを追っているのは緑色の体をした小鬼だった。
彼女は道の手前でゴブリンに捕まって倒れた。
助けなきゃ!と思い、俺は森へ駆け足で入って行く。
そして倒れた彼女を7体程のゴブリンが覆い被さっていた為、木刀で殴り飛ばし彼女から退かして行く。
「ギャーグギャー!!」
ゴブリン達は彼女から離れ、俺と彼女を囲んだ。
ざっと15体はいるだろう。
彼女は傷だらけの体を震わせながら立って真剣を構えた。
そして俺を見る。
「君はさっきの!すまない、巻き込んでしまった」
「これどういう状況ですか?」
「私の読み違いだ。援護を頼めるか?」
「出来るだけやってみます!」
「ありがとう!」
と俺は言ったがこの頃、既に魔術は中級魔術をいくつか習得していたし、剣術も父に何太刀か浴びせれる程になっていた。
ゴブリン15体だと広範囲魔術を展開したらいけそうかなと何となく思っていた。
ゴブリンに出会った事がない為、奴等の防御力がどの程度なのかはわからないが…ま、やってみるか。
「ちょっとこっちに寄ってもらえますか?」
俺は彼女に話しかけた。
「何だ?」
彼女はスッと俺に寄った。
これなら打てるかな。
俺は手の平を頭上に向けて魔力を手の平に集中させた。
「アイスブリザード」
すると空中に鋭利に尖った氷の塊が無数に生まれた。
俺は頭上に上げた手を下へ振り下ろす。
すると凄まじい勢いで氷の塊がゴブリン達に向かって飛んで行った。
「あぎゃぁぁぁぁあ!!」
「うぎゃぁぁぁぁあ!!」
全断ゴブリン全員に当たったようだ。
俺達を取り囲んでいたゴブリンは全て地に伏せていた。
俺の魔術が通用したのを確認して、俺はホッとした。
アイスブリザードは中級魔術だ。
中級魔法が効かない場合俺達がこの場から助かる事は難しいだろう。
「き、君は...」
彼女が驚いた顔で俺を見ていた。
「魔獣に使うのは初めてだから通用しなかったらどうしようかと思いました」
と笑いながら彼女に言った。
「良く見たら...もしかしてグレディさんの所の?」
「ええ...家を知ってるんですか?」
「やっぱり。あなたのお父さんにね、昔助けられた事があるのよ。2代に渡って助けてもらうなんて。グレディ家には頭が上がらないわね」
そういうと彼女はフッと微笑んだ。
「私はミリアン。よろしくね。そしてありがとう」
そういうと彼女は右手を俺に差しだした。
「セルヴィです。どういたしまして」
差し出された彼女の手を握って彼女に微笑んだ。
「それにしてもあなた無詠唱で中級魔術を操れるのね。驚いたわ。普通の人間には無理...と言うか、それが出来る人間はこの国にも数人しかいないのよ?」
「知ってます。母から魔術は習ってますが、今すぐ魔術師になれるレベルだって言われてます」
「あなたは天才よ。すぐにでも魔術学校に行くべきだわ」
それは母にも言われていた事だ。
王都には小さいながらも魔術学校がある。
そこで学んで、将来国お抱えの魔術師になるか、魔術研究者になるかと言った魔術に携わる仕事に就く事が出来る。
だが母から聞く内容では学校に行く意味があまり感じれなかった。
と言うのも俺の年齢だと初級魔術の詠唱、仕組みと言った初歩の初歩の勉強から始まるらしい。
6歳から入学可能で、既に母から習ったような事しか学べないとの事だった。
前世からそうだが、学校は友達と合う場。
勉強は塾などで更に進んだ勉強を習っていた。
ミリアンにその事を話した所、ミリアンは何かを考えているのか黙って俯いていた。
そして何か思いついたように言った。
「ここはコートジボール帝国の辺境小都よ。帝都に行けば天才が集まる魔剣術学校があるわ。そこならあなたのレベルに見合うかも」
俺は帝都にあると言う、その名もラボバ魔剣術学校の事をミリアンに詳しく聞いた。
俺は正直騎士団ではなく、冒険者になりたいと思っていた。
広い世界を見たい。
これは前世から思っていた事だ。
就職をしても長期休暇時などを利用して海外旅行に行きたいと思っていたし、海外へ行きたい欲は今も変わらないのだ。
ラボバ魔剣術学校の事を聞くとミリアンとはそこで別れた。
それなりにいい時間だ。
早く父が上がれば途中で拾ってくれるだろう。
そう思って家へ向かって歩いていると馬が走って来る音が後ろから聞こえた。
「セルヴィ!」
父は止まると俺を片手でヒョイっと持ち上げて馬に乗せた。
「こんな時間までどうした?」
「母さんに頼まれて王都までおつかいだよ。少し遅くなっちゃった」
「そうか」
そんな会話をしながらすぐに家に着いた。
母が寝込んでいる為、今日は父が料理当番だ。
父の料理はたまに食べていたが大味の男の料理だ。
決して不味くはない。
と言うのも、両親は若い頃冒険者をしていた時期があるらしい。
その為父も多少は料理が出来るのだ。
そこで今日ミリアンに出会った事を話した。
ラボバ魔剣術学校の事も話した。
俺は正直言うと行ってみたいと学校の話しを聞いた時思ったのだ。
その為行ってみたいと言う事を父に話した。
「母さんと話し合ってみよう」
と父は言った。
それから数日過ぎた。
母は気分が悪いとしばらく言っていた為、父が医者へ見せに行っていた。
二人の会話は明るい為、深刻な病気ではないのだろうと感じてはいた。
するとある日、村の大工が家へ来て、ルドルフの小屋の隣に小屋を作って帰って行った。
馬が増えるのかな?とあまり気にしていなかった。
俺は魔術の練習と剣術の練習が楽しいので毎日打ち込んでいた為、ちっちゃい事は気にしない。
すると父が帰って来た。
ポニー位の大きさの馬を連れて。
俺の馬かな?なんてちょっと期待もした。
その日の夕飯、父と母が何か目配せをした。
「セルヴィ、魔剣術学校行くか?」
と父が質問して来た。
「え、いいの?」
「ああ、実はなお前に兄弟が出来る」
おお、マジか。
母の顔を見るとにっこりとほほ笑んでいた。
「だから正直お前には家にいて身重になっていく母さんの身の回りの世話をしてもらいたい。だがお前は才能があるからな。母さんと話した結果、その才能を腐らせてはいけないと言う話し合いになった。外にいる子馬はお前の馬だ。既に魔剣術学校への入学手続きも済んでいる。明日にでも子馬に乗って学校へ向かうといい。帝都は大体ここからだと2、3日で着くだろう。準備は済ませてある」
え、急過ぎない?何の脈絡もなかったのだけれども...。
とも思ったが、思い立ったら吉日とも言うし元冒険者のフッ軽夫婦だ。
二人からすれば当たり前なのだろう。
「うん!行く!」
そう両親に告げると、二人共ニコっと笑った。
「さ、今日はご飯を食べてお風呂に入って早く寝るんだぞ!」
「うん!」
そして次の日、俺は帝都へ旅立つ。
やっと9話まで来ました。
次回は遂に2桁の10話になります。
数百話までお話し続けられる事が出来たら嬉しいですね。
お付き合い頂けたら幸いです。




