27話 10年の修行 -セルヴィ編- ①
魔王大陸に旅立つ前に各々、一時的に故障へ帰れる時間をもらった。
帰省後、妹と再開。
妹の言動から前世の妹、優ではないかと疑うセルヴィ。
そんな時、村に蜘蛛の魔獣が現れた。
魔術を使う魔物に苦戦するセルヴィ。
そんな中、これまでの10年間の修行について思い出していた。
「ギェギュァァァァ!!」
体長は約15m程。
青白い身体をして青い目のドラゴンが大きな翼を広げて咆哮を上げた。
15mと巨大な身体の上、大きな翼を広げた為20m以上はあるのではないかと思われるようだった。
「アイスドラゴンか」
とロドメンソンさんがつぶやく。
アイスドラゴン。
極寒地帯を好み生息するとされている龍種。
近年、帝国北部にあるシバラヤ山脈の一角で生息している事が確認されている。
ロドメンソンさんに魔獣の勉強もするようにと渡された魔獣図鑑に記載されていた事である。
ここエレベスタ山はシバラヤ山脈に属しており、アイスドラゴンの詳しい生息地などは記載されていなかった。
その為、出発前にロドメンソンさんはこんな事もあるかも知れないと言っていたのだ。
「坊主!やれそうか?」
「出来ないって言ってもさせるんでしょ?」
「まぁ…そうだな」
とロドメンソンさんは苦笑しながら言った。
ロドメンソンさんはそういう人だ。
あくまで俺の修行の為だとはわかっているが、たまに容赦がない。
この3年である程度デニス・ロドメンソンと言う人物を俺は理解して来ていた。
「でもいいんですか?こいつ逸れって決まった訳じゃないですよ?」
「いや、こいつは逸れだ!証拠に他のアイスドラゴンは何処にも見当たらなければ気配も近くにはない。安心して戦え!」
「わかりました」
そして俺はロドメンソンさんの前に立ち、剣をアイスドラゴンに向けて構えた。
「ギェギュァァァァ!!」
ガキが闘志剥き出しで剣にファイアーを纏わせ構えている光景がアイスドラゴンにとっては不快だったのかも知れない。
先程とは違って怒りの表情を浮かべて咆哮し、俺を威嚇した。
一度龍種との戦闘は経験があったし、この3年間で俺もそれなりに強くなった事を実感していた。
その為多少の恐れはあるも威嚇に逃げ出すような事はしなかった。
俺はファイアーを纏わせた剣を構え、アイスドラゴンに向かって走り出した。
そして縦一線に剣を振り下ろし、ファイアーブレイドをアイスドラゴンに向けて放った。
俺の放ったファイアーブレイドにはそれなりに魔力を込めてあり、小さな山一つ位はふっ飛ばせる威力で放っている。
それがわかったのかアイスドラゴンは飛翔して避ける。
俺の放ったファイアーブレイドは何もない空へと消えていく。
宙に浮いたままアイスドラゴンは口から青い炎を俺に向かって吐く。
俺の脚は依然に増して速くなっている為、ドラゴンが追えない程度の速度でその攻撃を避ける。
ドラゴンの後ろ側に即座に回り込むと一足飛びにドラゴンへ向かって跳躍する。
そしてアイスドラゴンに手を伸ばせば届く距離まで到達すると火を纏わせた剣をアイスドラゴンの背中へ縦一線に振り下ろす。
エクスプロージョン。
すると俺の剣がアイスドラゴンの背中に触れると同時に大爆発が起こる。
「ドゴーーーン!!」
「ギギャァァァァ!!」
背中で大爆発が起こったアイスドラゴンはダメージを負ったのだろう。
悲痛な悲鳴を上げ、地面へ落ちていく。
俺もそのまま落下していたが、ウィンドーの力を使って落ちていくアイスドラゴンを追う。
そして落ちて行くドラゴンに向けて火を纏った剣を縦一線に振り下ろす。
ファイアードラゴン。
俺の剣から火の龍が口を開け、落ちて行くドラゴンに向かって飛ぶ。
アイスドラゴンが俺の放ったファイアードラゴンを目視しするとアイスドラゴンとファイアードラゴンの間に魔法陣が出現する。
すると魔法陣から分厚い氷の壁が出現しファイアードラゴンの攻撃を阻止する。
この時初めてアイスドラゴンが魔術を使える事に気付いたのだ。
恐らく遠距離攻撃では魔術で攻撃が防がれてしまう。
アイスドラゴンにダメージを与えるには近距離で攻撃をするか、アイスドラゴンの魔法の威力すら超越する力を放つ事以外方法はない。
俺は一気に勝負をかける事にした。
地面へ着地すると同時に一足飛びでドラゴンへ向かって走り出す。
ドラゴンは俺よりも早く地上に降り立っていた。
俺は目で追えない程の速度で先程と同様、ドラゴンの背後に回り込み、一足飛びでアイスドラゴンの背中へ突進する。
するとドラゴンもバカではない。
ドラゴンの背へ到達する前にドラゴンの背後に魔法陣が現れる。
そして先程のように魔法陣から分厚い氷の壁が現れる。
アイスウォールだ。
中級魔術の初級魔術。
俺は火を纏わせた剣をそのアイスウォール目掛けて縦一線に振るう。
エルプション。
すると氷の壁は真っ二つになり、まるで噴火が起こったように爆発し、上空へ飛び散る。
俺は速度をそのままにドラゴンの背へ飛翔する。
ドラゴンも目で追えるか追えないか位の速さ。
重い体では振り返るには間に合わない、魔法を発動するにも間に合わない距離。
俺は先程のエクスプロージョンで傷付いたドラゴンの背に再度魔剣術を打ち込む。
火を纏わせた剣を斜め一線にドラゴンの背へ振り上げる。
アトミックスラッシュ。
エクスプロージョンが中級の中級魔術であるならばアトミックスラッシュは上級初級の魔剣術である。
アトミックスラッシュで切り裂いた物はその攻撃範囲にある物を何もかも溶かし尽くしてしまうと言う強力な魔剣術だ。
そのアトミックスラッシュがアイスドラゴンの体を着く抜ける。
「ズドォォォォン!!」
凄まじい温風と衝撃が一帯を覆い尽くす。
するとアイスドラゴンの身体を貫き、貫通する。
アトミックスラッシュの攻撃範囲は直線上、50m。
アイスドラゴンの体は何かで切り抜かれたように大きな風穴が空いていた。
そのままドラゴンはゆっくりと地に伏したのだった。
「難なくクリアだな」
とロドメンソンさんが俺に声を掛ける。
「全然ですよ。上級魔剣術まで出さないと勝てないなんて聞いてないです」
「ふん!まだまだ奥の手ある癖に良く言うわ」
とロドメンソンさんは片腹痛いと言った感じで答える。
「アイスドラゴンは結構貴重な素材でな。牙や爪、骨や皮膚なども高値で売れる。採取しといて損はないぞ」
まぁ龍種の素材が希少なのは今に始まった事ではない。
前世のゲームなどでも重宝されていた。
この世界も同じ価値観なのだろう。
「肉食えます?」
と俺はふと疑問に思った事を言った。
「ふん!お前は魔獣と見ると食べれるかどうかだな。そんなに食べるのが好きかねぇ…」
それはそうだ。
こっちに転生してから満足した食材は魔獣だけなのだから。
ロドメンソンさんの所でも肉らしい肉は出て来ておらず、お世話になってる身でわがままは言えない。
その為出された物を文句を言わず食べてるのである。
現在魔袋に入れている食材だってパンと野菜とクズ肉位しかないのだから。
「まっ食えるんじゃね?」
とロドメンソンさんが回答した。
アイスドラゴン、食える。
それだけの言葉で十分だった。
俺はアイスドラゴンの肉を削ぎ、ファイアーで炙ってローストビーフ風にし町から持って来たバルサミコ酢風のソースを掛けて一口食べてみた。
すると相性は抜群でとても美味い。
俺は食欲が止まらず何枚も何枚も肉を削ぎ落としてファイアーで炙り、ソースをかけて食べる。
大体300gほど食べた所で限界が来た。
15mあるドラゴンの肉を300g食べただけ。
左足一本に付いている肉の一部に過ぎず、ほぼ無限に食べれる程の肉の塊が目の前にあるのだ。
この美味しさをパーティメンバーにも食べさせてあげたい。
そう思い、俺は右足を削ぎ落とし魔袋へ収納する。
そして綺麗に解体した後、骨と牙、爪を採取し魔袋へ収納する。
「飯に時間取られ過ぎだ!下山するぞ!」
とロドメンソンさんが俺を呼ぶ。
「はい!」
と返事をし、下山し始めたロドメンソンさんの後ろを追うのだった。
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