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勇者に転生した俺の苦悩と葛藤  作者: KIT
勇者編
21/28

21話 それぞれの事情と修行開始

ラボバ魔術学校を出て4日目、遂にアトルンタ辺境王都へ着いた一行。

そして現勇者デニス・ロドメンソンと会う。

魔王について、勇者についてを聞いた一行は自分達が置かれた過酷な未来を受け入れようとしていた。

それから俺達は少し深刻な顔をしていたがリゼルグだけは違った。

俺の家臣になった時もそうだし、ロドメンソンさんも何か知っているようだ。

何があったのか聞きたいが、恐らく傷口を抉る形になってしまうだろう事から聞けずにいた。

いつか話してくれると信じているべきか、ここでちゃんと聞いておくべきか…そんな事を考えているとロドメンソンさんが言葉を発する。


「まぁどちらにせよ小僧は討伐に行きたくなくても行かなきゃいけない訳だから家臣のお前達が必ず行かないといけないと言う訳ではないからな。良く考えると良い」


「行かない訳ないじゃないですか。家臣ではあるけど、その前にお友達なんですから」


とクリフが反論する。

すると皆もうんと首を縦に振り同意を示した。


「よし!では坊主は俺が預かる。他は俺の家臣を訪ねてくれ。大体の事情は既に話しが通っているからな。まぁ世代交代が来たって言えばわかるだろう」


そういうと狭い部屋の端にある机の引き出しから紙を取り出し、その机の上にあるペン立てからペンを持ち俺達の座っているテーブルに戻って来るとリゼルグを見て言った。


「ピッペン家の坊主は魔剣術師で武器は剣だな。ならばオルビーの所へ行け。現世界で二番目に強い魔剣術師だ。そういうと紙に地図を描き始め、書き終えるとリゼルグに渡した。

次にクリフを見た。お前も剣使いの魔剣術師だな。どこの家だ?」


とクリフに質問する。


「アストレアムスです」


とクリフが答えると、少し目を大きく見開く。


「あの侯爵家の子か。これはまた高貴な」


とロドメンソンさんが言うとクリフが反論する。


「いえいえ。僕は三男なので全く関係ないですよ」


「そうか。まぁいい。お前もオルビーの所へ行け」


とロドメンソンさんがうっすら笑みを浮かべて行き先を告げる。


後々聞いた事だが、この世界には爵位があり旧英国、旧ヨーロッパのような感じのようだ。

下から騎士、準男爵、男爵、子爵、伯爵、辺境伯、侯爵、王子、皇帝と言った物だ。

そういう身分的なのはこの世界に来てからあまり勉強をさせられてない。

地元の辺境伯がいるって事位はわかっているのだが、詳しい爵位については正直俺は疎いのだ。


そしてロドメンソンさんはシーナを見て言葉を発する。


「嬢ちゃんはロッド使いだな。ではマリアに付くと良い」


そういうと地図を書き、シーナに渡す。

そしてジルを見て発言をする。


「こっちの嬢ちゃんは刀使いか。もしかしてスプリーウェル家の者か?」


「そうです。家を知ってるんですか?」


とジルが驚いたように聞き返す。


「その髪の色に刀使いと言ったらこの辺では嬢ちゃん家位しかないからな。そうか…。ならばウタネに付くといい」


「う、ウタネ!?ウタネ・スプリーウェルですか!?」


とジルが驚いた様子で聞き返す。


「ああ、そうか。あいつはスプリーウェル家では死んだ事にしてたんだっけな。まぁ…色々あって生きてる。俺の家臣でお前の叔母さんだ」


ジルはまさかと言う風に呆然としていた。

クール&ビューティのジルがここまで驚いた意味をロドメンソンさんの話しが終わった後に皆で外を出てそれぞれが自身の決意を決める中、ふと話しを聞いたのだが、ウタネ・スプリーウェル。

スプリーウェル家史上最強の女。

幼少期より天才肌であり、将来スプリーウェル家を背負って立つ人物になるだろうと言われていた。

その弟、ジルの父のアツシ。

本来であれば家を継がなければいけない長兄であったが姉のウタネには何をやっても歯が立たず、影では酷い事を言われていた。

だがアツシはウタネを恨む所か、姉が大好きだった。

稽古では鬼のように強い姉でも弟のアツシには優しく、いつも守ってくれた。

良く可愛がってくれて良く遊んでくれる大好きな姉だったのだ。

だがある日、町に魔物が出た。

剣術道場を営んでいるスプリーウェル家に討伐の依頼が来た。

その討伐にウタネは駆り出された。

噂によると魔王の手先だったとの事だ。

その討伐に赴いたウタネはそのまま帰って来なかった。

ウタネ、当時15才。

アツシ、当時12才の時だったと言う。と


アツシは最愛の姉をなくし、それから立派な姉を超える師範となるべく剣術に打ち込んだ。

姉を殺した魔王の手下を今度は俺が討伐してやると言わんばかりにだ。

子を持った今でもアツシが魔王に向ける恨みは強く、子のジルを厳しく育てた。

剣術と魔術に関しては特にだ。

何故ならジルはウタネと同じ綺麗な栗毛色髪を持って生まれたからだ。

アツシはと言うと母親譲りの白髪だ。

その為、剣術も魔術も兼ね備えた魔剣術が学べる学校、ラボバ魔剣術学校と言う存在を知った時、家から出れると思った。

経験の一つとして学びに行きたいと父に話し、何とか納得させラボバ魔剣術学校への入学が決まって寮生活となった。

家から開放されたと言えよう。


きっとお父さんはジルに姉を重ねてしまったのだろうと話しを聞きながら俺は思ってしまった。

そんな叔母が生きていた。

叔母のせいで父から向けられた厳格なまでの教育。

正直恨んでも仕方がない。

本人には聞いていない為、恨んでいるのか恨んでいないのかはわからないが心中複雑だろう。

叔母と会った時、二人で何を話すのか。

失踪の真実はジルに取って聞いておかなければいけない事だろう。

だが勇者の家臣となっているのだから恐らくではあるがそれほど怒れるようなくだらない理由でないであろう事も推測が出来た。

ジルは先ず会って話しを聞いてみると言っていたし、スプリーウェル家史上最強の女だ。

剣を習うのであれば適任者であろう。


それからロドメンソンさんは紙に地図を書いてジルに渡した。

そしてクレアを見て口を開いた。


「お前さんは槍といい、髪の色といいドナテルロ家の者だな」


「あはは。バレバレ~」


とクレアは照れ臭そうに頭を掻きながら答えた。


「スプリーウェルとは違って、分家のウェスカーが俺の家臣なのはわかってんだろ?」


とクレアに聞く。


「ウェスカー伯父さんなら年末とか盆とかに会うし、勇者の家臣なのも聞いてる。会った時に稽古付けてもらったりもしてるからね」


とクレアが答える。


「なら本格的にウェスカーに付いて槍を習え。まぁ本家が分家に習うと言うのが抵抗があるかも知れないが…」


と少し俯き気味でロドメンソンさんが答える。


「全然!さっきも言ったけど、たまに稽古付けてもらってるし私もずっとウェスカー伯父さんにはそうお願いしてたし願ったり叶ったりだよ!」


と答えるクレア。


「そうか。ウェスカーの家行った事あるのか?」


「それはないなぁ」


「では地図を書こう」


そういうと紙に地図を書いてクレアに渡した。

この後、ジルの次にクレアにも話しを聞いたのだが、クレアの家は本家と分家があるらしい。

クレアは本家、ウェスカーは分家。

普通であれば当主はクレアの父と思いがちだが、ドナテルロ家の現当主はクレアの母のレベッカ・ドナテルロで父のレオンは婿養子になる。

本家と分家は正直仲が良いと言う訳ではない。

昔から覇権を争う関係であり、優秀な人材は本家が輩出するべきと義務付けられて来た。


そんな中、分家に天才が産まれた。

お察しの通りウェスカーだ。

彼はレベッカなど足元にも及ばぬ位の実力を二十歳で付けた。

その実力を買われ、ロドメンソンさんから家臣になって欲しいと熱烈なラブコールにより遂に折れ分家を継がず勇者の家臣となった。

前にも話したが、勇者は一国の王と同じ位の権利を持っている為家臣に選ばれる事は名誉な事なのである。

その為惜しまれながらも家を出た。


だが律義な性格の為、年に2回程実家に戻って顔を見せに来る。

勿論魔王討伐で長引いてしまった時は時期がずれるがほぼ必ず帰って来る。

里帰りをした時に分家の義務として本家にも挨拶に行く。

歓迎されてはいないのに実に律義な性格なのである。


そこでクレアと出会ったのだ。

正直クレアの性格は父親譲りだ。

気難しい母親の反面、父は腰が低く、ヘラヘラとした性格でとても優しい男だ。

その為争いなど好まず、本家、分家など気にせず仲良くしたいと言う人間なのだ。

その態度に母は怒るが、なんと惚れているのは母の方である為上手く言いくるめられてしまうと言うのが現実だ。

惚れたら負けなのである。


そんなジルが無口で律義で礼儀正しいウェスカーの心を鷲掴みにしているのだと言う。

なぜかジルを気に入り、せがまれると本家、分家の事情も気にせず稽古を付けてしまうのだ。

ウェスカーの中ではクレアは身内で唯一可愛い姪と言う位置付けとなっているとクレア本人が言っていた為信用は出来ないが案外嘘でもなさそうだ。


様々の家の事情は知ったがリゼルグの家の話しはまだ聞けずにいた。

それにシーナの家ってどんな感じなのかな…クリフの家の事は聞かなくてもベラベラ喋るので聞く必要がないのは言うまでもないだろう。


そしてそれぞれの修行の地が決まった後色々話しを聞いて夕暮れ時となり出発の時間となった。

一度ロドメンソンさんの家に戻り、身支度をして外に出た。

するとロドメンソンさんが口を開く。


「これは修行だ。1年や2年では教えられんしお前達も覚えられぬまい。10年だ。16になった時、各々の成長を楽しみにしている。それでは10年、厳しい修行に耐えてみせろ!次期勇者諸君!」


その言葉を受けた皆が覚悟を決めたように顔を引き締めた。

そして俺も皆に言葉をかける。


「10年後、また俺と闘ってくれ!」


「当たり前じゃないか。10年なんてあっと言う間さ。セルヴィも身体に気を付けるんだよ」


とクリフ。


「今までセルヴィにおんぶに抱っこだったけど、今度は私達も闘えるように強くなるからね!」


とシーナ。


「また10年後」


とジル。


「まったねー!みんな元気でねー!」


とクレア。


「俺達が魔王を倒す!ロドメンソンさんを倒せる位、お前は強くなれ!じゃないと魔王なんて到底届かないからな!」


とリゼルグ。


「ああ、皆元気で!」


そして俺達はそれぞれ強くなる為の修行に入った。


【追記】


数日後、両親からの手紙が届いた。

俺とロドメンソンさん宛にだ。

手紙には両親はロドメンソンさんと昔馴染みで、頼りになる人だと書いてあった。

勇者の称号を得たのは正直時間の問題だと思っていたらしい。

俺が異常だ、化け物だと言っていた両親だ。

剣術では父には叶わなくても魔術では母を超えていた。

それにいつかの約束を楽しみにしていると父から一言あった。

ロドメンソンさんは世界で2番目に最強の男だ。

その男に稽古を付けてもらえるなら父の願いもそう遠くない内に叶えてあげる事

が出来るだろう。

ロドメンソンさんにもよろしく頼むと言うような内容の手紙が来たとの事だ。

それと9カ月後にもう一人生れるから可能なら俺も連れて一回顔を見に来て欲しいとの事も書かれてあったらしい。

まぁこれは俺の状態次第だと言う事になり、その旨両親に書いて俺の封筒と一緒に入れて送ったのだった。

いつもご愛読ありがとうございます。

20話突破しました。

ユニーク人も500人を突破し、本当皆様には感謝です。

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