15話 セルヴィ VS リゼルグ VS ?
お休みすみませんでした。
今週もよろしくお願い致します。
3年S組へ進級した日に早々リゼルグ・ピッペンに決闘を申し込まれてしまったセルヴィ。
クリフが間に入り、決闘は放課後と言う事になった。
だが思いがけない展開が待ち受けていたのだった。
「ギギャァァァォォォン」
現在俺の目の前には一体のブルードラゴンが咆哮を上げている。
何故こうなったのかと言うと話しは20分前に戻る。
3年生に進級して早々トラブルに巻き込まれた。
このリゼルグ・ピッペンと言う男が事の発端だ。
現在俺とリゼルグは距離を保ち、校庭にて向かい合っている。
現在は放課後であり、リゼルグからの挑戦を受けてしまった為このような事になってしまっているのだ。
「僕がこの決闘の取り仕切りをさせてもらう。お二方、異論はないかな?」
と俺とリゼルグの間に入るクリフ。
「ああ、問題ない」
とリゼルグは答える。
「ああ」
と一つ溜息を吐いた後、俺も答えた。
「それではこれより、セルヴィ・グレディ対リゼルグ・ピッペンの決闘を行う!」
とクリフが宣言すると、わー!!っとギャラリーが盛り上がる。
ギャラリーは殆どが3年S組の生徒だ。
噂を聞きつけた他のクラスや学年の生徒も観戦をしに来ていた。
「両者準備はいいか!?」
とクリフが問う。
俺とリゼルグは剣を鞘から抜き構える。
「ああ」
とリゼルグが答え、無言で首を縦に振る俺。
それを確認してクリフが試合開始の掛け声を上げる。
「うむ。それでは決闘…始め!!」
その掛け声と共にリゼルグが一足飛びに俺に向かって来る。
そして俺との程良い距離で呪文を詠唱する。
「天空に君臨する雷の精霊よ。我剣に宿りて我に力を与えよ。我敵を食い千切れ!サンダーシャーク!!」
リゼルグが剣を縦一線に剣を振り下ろすと雷を纏った剣から雷で姿を形成した鮫が獰猛な牙を有した口を開けて俺に向かって来る。
詠唱の長さから分かる通り、中級の上位魔法だ。
流石3年S組の成績トップなだけあって凄まじい魔力と技術だ。
「ダークネス」
俺は剣に闇を纏わせると向かって来る雷鮫を下段から上段に斜めに剣を振り上げる。
流石3年S組成績トップの魔術なだけあって強力で中々剣を振りきれずにいた。
闇を纏った剣は電気を通さない。
俺は何とか力技で剣を上斜めに振り切って雷鮫を上空へ飛ばす。
上空に飛ばされてしまった雷鮫は効力を失い上空で消えた。
「ははっ。流石セルヴィ。中級上位魔法を初期魔法で弾き飛ばすとわ」
とクリフが乾いた笑いを上げる。
異常な事をしてしまったのか盛り上がっていた周りの生徒が一気に静かになったていた。
「っく!」
とリゼルグが苦虫を噛み潰したような表情をし、言葉にならない声を出す。
「では次はこちらから」
俺は一言言うと一足飛びにリゼルグへ飛び掛る。
そして授業でやった魔術と同じ魔術をリゼルグへ放つ。
ウォーターブレイド。
剣が水を纏い、纏った水が剣の回りを高速で回転し出す。
その剣をリゼルグ目掛けて縦一線に振り下ろすと同時に剣から水を放った。
「我を温めよ、ファイアー」
とリゼルグが詠唱すると剣を火が覆う。
ウォータージェットカッターのようになった鋭利な水の斬撃をリゼルグは自身の剣で受け止める。
水の斬撃は勢いを失う事なく剣で受け止めたリゼルグを後方へ吹き飛ばし、後方にある岩壁激突し、ドゴォォォン!!と激しい衝突音を上げた。
水の斬撃により岩壁は縦に一線、大きく抉れた。
リゼルグが魔術を剣に込めたおかげで真っ二つになる事を回避出来ているが、もし魔術を使わずウォーターブレイドを受け止めていたら、ご想像通り真っ二つになっている。
リゼルグは3年S組の成績トップの実力者だ。
そんな事は勿論承知だろうと推測し、わざと俺も放っているのだ。
一撃でボロボロになったリゼルグが崩れた岩の中から這い出て来る。
「くっ…そぉ…」
あの衝撃をくらってまだ動けるのだから流石は成績首位と言った所か。
俺達はまだ幼い。
あの衝撃を受け止めれる程、まだ体が出来てはいないのだ。
恐らく18歳になってやっと受け止められるレベルだろうと推測する。
リゼルグは再度俺に向かって駆け出して来た。
俺は逃げずリゼルグに剣を構えて、来い!と言う意思を構えにて醸し出す。
距離が詰まって来ると再度リゼルグが詠唱し始める。
「勇ましく燃えし火の精霊よ…」
詠唱の欠点は何系の魔術が来るか分かってしまう事にある。
勿論詠唱する時間も無駄なのだが、口に出して言ってしまう事によって次はどの系統の魔術で迎え撃てばいいのか用意出来てしまうのだ。
「我剣に宿りて我に力を与えよ…」
リゼルグがそこまで詠唱した所、俺の後方にいる生徒から声が上がった。
「あ、あれは何だ!?」
俺に向かって走っていたリゼルグが足を止め詠唱を辞める。
魔力が灯りだしていた剣から魔力が消えた事を確認すると声のした方へ振り返った。
すると声を上げたと思われる生徒が遠くの空を見上げている。
その視線の方向を見ると遠くからでもわかる程大きな生き物が空を飛んでいた。
その巨大な生き物が段々と近付いて来る。
距離が近くなるにつれ、それが何か分かって来た。
「あ、あ、あれは…ブルードラゴン」
一人の生徒が真っ青な顔をしてカタカタと震えながら言った。
ブルードラゴンとは名前の通り青い身体をしたドラゴンだ。
基本的には集団で生活をしており、巣がある。
稀に引越しをする事もある為、一定の場所に必ず生息している訳ではない。
危害を加えたり、卵に近付いたりしなければ基本的に人に攻撃をする事はなく、龍種としては割と温厚な生き物である。
ただ引越し中、稀に逸れ龍が出る。
逸れ龍は仲間と逸れてしまった事に混乱してしまい我を見失う。
すると普段温厚なブルードラゴンが獰猛化してしまい、生き物を無差別に攻撃するようになってしまうのだ。
被害報告が上がるとすぐさまギルドなどで討伐依頼が出る。
ブルードラゴンの場合、個体の成熟度合いにもよるが最低Bランク依頼だ。
「逸れ龍だ!不味いぞ!逃げろ!先生に報告だ!」
誰かがそういうと皆一斉に校舎に走り出す。
俺達も一旦校舎に戻ろうか…と言う目配せをクリフ、リゼルグにする。
「ブルードラゴンの逸れ龍如きに構ってられるか!決着を付けるぞ!グレディ!」
そうリゼルグが言い、俺に斬りかかって来る。
「キン!」
その剣を俺も剣で受け止める。
「いや、流石に逸れ龍が出てる中決闘続行は不味いだろっと」
そういうとリゼルグを剣で押し戻す。
「くっ」
親の敵を見るようにリゼルグが奥歯をギリっと噛みしめ俺を睨む。
「バサッッッドン!!」
俺の後方で何かデカイ物が降り立った音がした。
向かい合っていたリゼルグの顔が見る見る青くなっていく。
大体後ろに何がいるかわかるから勘弁して欲しい。
「セ、セ、セルヴィ?」
クリフの顔も真っ青になりカクカクと震えていた。
後ろを振り返ると100m先位に体長20m程のブルードラゴンが血走った眼をしてこちらを睨んでいた。
「ギギャァァァォォォン」
と咆哮を上げるブルードラゴンと言う最初のシーンとなったのだ。
困った。
非常に困った事態になった。
まぁ何もしなければ食い殺されるだろうから何もしない訳にはいかない。
クリフもリゼルグも怯えてしまっている為使い物にはならないだろう。
正直言って俺もかなり怖い。
が、何もせずに食い殺されるのはご免だ。
俺はブルードラゴンに向き直り剣を構える。
ブルードラゴンは俺の敵意を感じ取ると鼻息を荒くして興奮したような様子で大きな羽を広げ再度咆哮を上げる。
大きな羽を広げて自分を大きく見せようとする行動は前世の動物の生態と同じで威嚇の動作なのだろう。
ただですら大きな身体なのに羽を広げるとその大きさは3倍程になる。
その迫力に負けて、クリフが腰を抜かす。
リゼルグはカタカタ震えてその場から動けない様子だ。
「クリフ!クリフ!!」
俺が二度呼ぶとクリフが我に返ったような顔で俺を見た。
「リゼルグと非難を!!」
そうクリフに言うと、コクコクと首を縦に振ってリゼルグを引きずって校舎に向かう。
ブルードラゴンは大きな羽を羽ばたかせて始め、段々と宙に身体が浮き始める。
ただ普通に考えてもらうとわかると思うが隙だらけである。
龍種と言うのはその巨漢故に飛び立つ初動が非常に遅い。
速度に乗り出すと100km以上出るらしいが乗り出すまでが遅い。
速度が乗り出すのを待ってやる程俺は悠長ではない。
先程のように水を剣に纏わす。
その水を高速回転させてウォーターブレイドを構成する。
正直リゼルグに放ったウォーターブレイドは手加減している。
授業で見せた物もだ。
高速回転に水圧を乗せてギュっと凝縮させたウォーターブレイドが出来る。
一度本気のウォーターブレイドを母の前で見せた事があるのだが、その時は近くの山を一つだった物を二つにしてしまった。
要は山をぶった切ったのだ。
それから水圧を乗せるのは禁止となったのは言うまでもない。
ただ今回はドラゴンが相手だ。
龍種と戦った事はない為、どの程度の威力でどの程度のダメージを与えられるのかが今一分かり兼ねる為、念には念を入れて最大出力を構築している。
そして剣を縦一線に振り下ろす。
すると極限までに圧縮された水の斬撃がブルードラゴンへ向けて放たれる。
流石に不味いと思ったのだろう。
身体を捩って斬撃を回避しようとするがそれなりの速度で放っている為、避け切れず左翼にミ水の斬撃が当たる。
するとブルードラゴンの左翼は切断され宙を舞う。
「グギャァァァ!!」
ブルードラゴンは悲痛な悲鳴を上げ宙に浮き始めた身体は左翼を失い、ドゴォォォン!!と凄まじい音を立てて地面に落ちる。
「ギギギギギギ」
良くもやったなと言いそうな顔で俺を睨みつける。
すると口を大きく開けた。
龍種と言う生き物は火を噴く生き物である。
それは前世の伝承でも多く語られており、この世界の龍種も火を噴く事が出来る。
来るな…と俺は悟った。
そして両手で握っていた剣から左手を離し、ブルードラゴンのファイアーブレスが来るだろう方向へ左手の平を向ける。
ブルードラゴンがファイアーブレスを吐くと共に魔術を左手から発動させる。
ブラックホール。
すると左手の平から円型に黒い渦が発動する。
それに吸い込まれるようにファイアーブレスが吸い込まれて行く。
魔術攻撃から身を守る盾のような役割をしてくれるブラックホール。
これは俺が考えた先方である。
左手でブラックホールを発動し盾とし、右手に握る剣で攻撃を繰り出す。
これが使えたら父とももっと良い試合が出来たのだろうが魔術が使えない者にとっては反側でしかないのだ。
そして俺が考えた戦術を実践する。
右手の剣へ稲妻を発動させる。
稲妻へ魔力を流せば流す程電圧が上がって行き、現在剣を包んでいる稲妻は推定数千万ボルトと言った所だろう。
人間がくらったら即死レベルの電圧だ。
ブラックホールでファイアーブレスをガードしながらブルードラゴンへ向かって走り出す。
一向に効く気配のないファイアーブレスを吐く事を辞めるブルードラゴン。
自分の懐に入られるのを嫌がり、ブルードラゴンが尻尾で俺を攻撃して来る。
その太い尻尾はまともに食らったら骨がバキバキに砕かれふっ飛ばされるだろう威力と速さだがジャンプをして回避する。
そしてブルードラゴンのほぼ真下に潜り込めた俺は着地すると同時に高圧の稲妻を纏った剣を縦に一線振り抜いた。
雷が落ちる仕組みを知っているだろうか。
大半の人は上から落ちて来る物だと思っているだろう。
だが本来は下から落ちる場所を上に向かって示して稲妻が上がり、そこに向かって上から落ちるのである。
それとほぼ同じ原理で縦一線に振り下ろした剣に向かって上から稲妻が走る。
ライトニングストライク。
その稲妻の縦線上にブルードラゴンの首の付け根辺りがある為、稲妻がブルードラゴンの巨体に直撃する。
「ギギャァァァァ!!」
ブルードラゴンは悲痛の叫びを上げると数千万ボルトに上げられた電流にて身体が焦げ始める。
電熱と言う物だ。
「ギ…ギ…」
ライトニングストライクの効力が切れると共に声にならぬ声を上げたブルードラゴンはそのまま巨体を地に伏せさせる。
そして俺の目の前には左翼を失い、肉の焼けた匂いを漂わせたドラゴンが横たわった。
「セルヴィ!!」
見ていたのか、今着いたのかクリフ、シーナ、ジル、クレアが俺に掛けよって来た。
「それにしてもブルードラゴンを単独で撃退するとか…流石に化け物じみて来たわね」
とジルが苦笑して言う。
「ああ。兎に角無事で良かった」
とクリフ。
「クリフからセルヴィ君が単独で逸れブルードラゴンと対峙してるって聞いた時は心臓が止まるかと思ったわ」
とシーナ。
「しゅごい」
と地に伏せたブルードラゴンを見ながらつぶやくクレア。
「君は本当に…」
とクリフが言いかけた時、背後から大きな声が聞こえた。
「セルヴィ・マク・グレディ!!」
効果音を付けるなら、ドシン!ドシン!と言う音がとても良く似合いそうな歩き方でミレイナ先生がこっちに向かって歩いて来る。
その後ろに他の先生だろうか4、5人引き連れている。
そして俺達の前に来て、先ずは後ろの先生方に指示をする。
「ブルードラゴンの生死を確認した後、生きているなら拘束して捕獲、隔離を!死亡しているのなら死体の処分を!急げ!」
「は!」
と後ろの先生方が答えると即座にブルードラゴンの生死を確認し出した。
「セルヴィ・マク・グレディ。君は至急校長室に!」
と凄い形相で告げると校舎へ消えて行った。
やはり流石に生徒が単独でブルードラゴンと対峙するのは不味かっただろうか…だが、俺がやらなかったら恐らく俺もクリフもリゼルグもこの世には今頃いないだろう。
他にも多くの生徒の犠牲が出ていたかも知れない。
そう考えたら俺の判断は間違っていなかったはずだが…。
「じゃあ…行って来る」
と皆に告げると俺は校長室へ歩き出した。
後に聞いた話しだが、ブルードラゴンは死亡しており、解体されて肉は翌日の食堂のSセットメニューにされ、残りは精肉店に、骨や牙は武器屋に運ばれて売り飛ばされたとの事だった。
ちなみに討伐したのは俺なのにである。
この位の文字数を常に書きたいのですが中々現実は難しかったりします。
出来る限り見ごたえのある内容を一話一話に詰めたいのですが、作者の才能の限界が悲しいです。
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