14話 3年S組
入学1日にして3年S組へ進級したセルヴィ。
仲良くなったシーナ、クリフ、ジル、クレアの5人で新しい教室へ向かうのであった。
俺達は三年生の教室へ向かう。
三年S組。
噂に聞くとこのクラスは三年生でもトップの成績を誇るクラスらしい。
誰に聞いたのかと言うとクリフだ。
この学校の事は一年生でありながらかなり詳しい。
本人曰く、前々から入学したかったとの事だった。
彼は聖騎士を目指しており、地元の学校でも敵なしだった為、その成績を見込まれてラボバ魔剣術学校への入学を認められたらしい。
この学校はそう簡単に入学出来る学校ではないらしく、地元の学校での成績、血統、今までの功績を考慮して入学が認められるらしいのだ。
そんな所に何の功績もなく入学出来た俺はどうしてなのだろうかとふと考えると入学手続きをしたのは両親…正確に言えば父だ。
一体うちの両親って何者なんだろうと不信に思ったのはここだけの話しだ。
兎にも角にも三年S組の前に来た俺達はクリフを先頭に教室のドアをノックする。
「入ってらっしゃーい!」
と年上の女性の色気を感じさせる声が返って来る。
「失礼します!」
とクリフがドア越しに大きめに返事をしてドアを開けて中に入る。
俺達はその後をぞろぞろと続いて中に入った。
教卓にはグラマラスな黒髪のウェーブがかった長髪の女性が立っていた。
まさしくボン.キュ.ボンの大きな胸元を開けたブラックグレーのスーツのような服装をした30代後半位の整った容姿の女性だ。
何故かはわからないがクリフの顔が少し赤い様に見えた。
俺達は教卓の横に一列に並び教室全体に体の正面を向ける。
やはりどこの学年もそうなのか年齢は区々のようだ。
一番上は40代前半位の顔に傷のある男性、一番下はー…俺達と同い年位かと言った年齢の赤い髪の短髪の男の子だ。
「はーい!じゃあ自己紹介からね。順番にお名前言っていってくれるかしら?」
と先生は言った。
そしてクリフ、ジル、クレア、シーナ、俺と自己紹介をしていく。
「はい!皆さん拍手」
と先生が言うと教室から控えめな拍手の音が響いた。
「私は担任のセリーヌ・アイバーソンよ。よろしくね」
と先生は言ってウィンクした。
クリフの顔が更に赤くなったように見えたが、どうやらクリフはこの手の女性には弱いらしい。
「それじゃ、あなた達の席はっと…一番後ろの一列が空いてるから適当に座って頂戴」
と先生の言葉に各々返事をして席に着く。
「一限目の授業は魔法学よ。さ、教科書出してー」
と授業が始まる。
昨日まで習っていた初歩の内容ではなく、かなり進んだ内容になっていた。
俺は昨夜ちょっと教科書を見ていた為、大体内容は把握していた。
皆も恐らく大丈夫だろうと横に並ぶ彼等の表情を見て思うのだった。
それから授業は一限、二限と終わって行った。
そして昼休みになり、いつも通り格差を感じ過ぎて行く。
午後一番の授業は実戦演習だ。
前回のようなガチの戦闘ではなく、二人一組になっての実際に魔術を打ち合う練習だ。
その為校庭へ体操着と言う名の革の防具に着替えて出ていた。
先生はセリーヌ先生。
聞く所によるとこの人も元聖騎士でそれなりの武勲を立てた人なのだと言う。
情報の出所はご推測の通りクリフだ。
こいつは本当に詳しい。
「はーい!準備オッケーね。では二人一組になって広がってねー。相手は自由よー」
と言うので一番最初に目が合ったクリフとペアを組む事にした。
「教科書3ページよー!先ずはウォーターブレイドー!!得意不得意があるから難しければ出来る魔術を進んでやっちゃってオッケーよー!!」
魔術の実戦授業の為、それなりの距離がそれぞれ空いている。
先生は声を拡張する魔法で皆に伝えた。
そしてそれぞれが魔術を発動させる。
ウォーターブレイドとは剣を水で覆い、水圧で切れ味を増大させる魔術で中級魔術の一つだ。
先ずはクリフが詠唱する。
「我らを潤す水の精霊よ。我が剣に纏え。ウォーターブレイド」
するとクリフの剣を水が覆い、高速で循環をしている。
成功だ。
それを見て俺もウォーターブレイドを発動させる。
この程度の魔法であれば無詠唱で発動出来るのだ。
「君は相変わらずだな」
と苦笑して言うクリフ。
「ついでに教えるけど、このウォーターブレイドは循環する速度を調整出来る。流す魔力量を増やせば高速回転し、減らせば速度が落ちる。やってみて」
とクリフに教える。
するとクリフが驚いた顔を一瞬したが、俺に言われた通り魔力を剣に多めに流す。
するとかなり高速回転をするようになり、驚いた顔をクリフがした。
「あら。ウォーターブレイドの使い方良く出来てるじゃない」
といつの間にかクリフの所に来ていた先生が言う。
「魔力を多く流せばより威力が増すとセルヴィが教えてくれたんです」
とクリフが言うと先生が驚いた顔をして俺の方を見た。
そしてゆっくり近付いて来た。
「噂通りの子ね。セルヴィ・マク・グレディ。このウォーターブレイドのもう一つの使い方は知ってるかしら?」
と俺に先生が問うた。
「合ってるかはわかりませんが」
と俺は苦笑をして答えた。
そして誰もいない岩壁へ向かって剣を振り下ろした。
すると剣を覆っていた水が刃となり飛んで行き、強固な岩壁を切り裂いた。
「…」
皆大きく抉れた岩壁を見て唖然としている。
「合ってるわ…合ってるけど…なんて威力…」
大きく抉れた岩壁を見ながら先生がそんな事をつぶやいた。
正直全力ではないがそれは言わないでおいた。
「セルヴィ・グレディ…予想以上だわ。いいわ。続けなさい」
「はい!皆さーん!授業続けてー」
と先生が手をパンパンと叩きながら俺に注目していた生徒達に告げると皆ペアの相手と顔を見合わせ授業を再開し始める。
「セルヴィ!今のどうやるんだい?」
とクリフが俺に問う。
クリフの近くに行ってやり方を教える。
「クリフは魔術の斬撃を飛ばす事が出来る属性の魔法はあるかい?」
「ああ、ファイアースラッシュなら」
「原理は同じだ。クリフは詠唱してファイアースラッシュを使うなら、その詠唱をウォータースラッシュにしたらいいんだよ」
「ファイアースラッシュで唱える詠唱を水版にすればいい。例えば…」
そんなこんなで俺は授業よりもクリフの先生みたいになってしまっていた。
そんな俺達を見ていたジル、クレア、シーナも近寄って来て、教えてと言うものだから俺は皆の教え役となっていた。
それを見て先生も苦笑をしていたのだ。
授業が終わり更衣室で着替えようとしていた所、後ろから声を掛けられた。
「おい!セルヴィ・グレディ!!」
声のする方を見ると赤色の短髪の同い年位だろう男の子が俺の後ろに立っていた。
「俺と決闘しろ!」
唐突に向けられた敵意に驚いてしまった為、答えられずに赤い髪の子を凝視してしまっていた。
「おいおい。君、いきなり決闘しろだなんて失敬だな。君は?」
とクリフが間に入ってくれた。
「俺はリゼルグ!リゼルグ・ピッペンだ!」
「ああ、君が3年S組最年少にして戦闘成績トップのリゼルグ君か。僕はクリフ・アストレアムス。アストレアムス家の三男だ」
そう聞いたリゼルグはあからさまに嫌な顔をしてクリフに答えた。
「お前がアストレアムス家の…まぁいい!俺はお前ではなく、後ろのセルヴィ・グレディに用があるんだ!」
「と言ってもね。セルヴィは1年から一緒に進級して来た友達だ。セルヴィが君に負けるとは思わないけど、少々失礼かなって思ってね。なぜセルヴィと決闘したいんだい?」
するとリゼルグはイライラした表情で答えた。
「お前が言ったように3年S組の成績トップは俺だ!だからどっちが強いか知りたい」
リゼルグはクリフではなく、真っ直ぐ俺を見て言った。
クリフも納得したのか諦めたのか俺の方を振り向いて言った。
「どうする?セルヴィ?」
俺は困った顔をするも断った所で嫌な雰囲気を引きずるのはもっと嫌な気がした。
「ああ、受けよう」
するとクリフは呆れたように溜息を吐き、リゼルグへ向き直った。
「だそうだよ。今は難しいから放課後でどうかな?お二方?」
「望む所だ!」
とリゼルグが意気揚々と答える。
俺は溜息を一つつき答えた。
「わかった」
そして本日の放課後、セルヴィ・グレディVSリゼルグ・ピッペンの決闘が決まった。
前回の設定間違いを訂正しました。
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