13話 友達と学園生活
入学初日で3年生に進級したセルヴィ、クリフ、シーナ、ジル、クレア。
新たなクラスで過ごす前の学園生活を送るのであった。
何と言うか…釈然としない。
確かに既に知っている事を再度勉強しろと言われても身にはならないだろう。
この学校の校風に多少疑問が残る。
日本のように義務教育ではない為、アメリカのように出来る人は小学1年生の年齢なのに小学6年生だったりする。
それは理解出来るだが…釈然としない。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、シーナさんが俺の顔を覗き込んで来る。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
と苦笑いをしながら答える。
今俺は進級組の皆と学校を後にして寮へ向かっている。
偶然にも皆別都市から来ており、単身寮生活を送っているのだ。
俺は今日寮も初体験である。
荷物は寮に届けてもらっているとのミレイナ先生の言葉だった。
管理人に聞けばわかると言っていたのだ。
俺達は寮に着いた。
古く、かなり大きな木造りの建物で、中は薄暗い。
まだ夕方で充分明るさもあると言うのにだ。
「ねぇ、暗くない?」
俺は皆に問う。
「まぁ大体こんな感じだよ」
とクリフが答えてくれる。
「不気味だよね」
とシーナさんが苦笑をしながら言った。
確かに不気味だ。
前世の魔法使い映画の寮もこんな感じだったような気がする。
中世ヨーロッパ調の絨毯に家具、壁に飾られている絵は肖像画だったり、猫の絵だったり様々だ。
あの絵、動いたりしないよな…。
そんな事を考えながら肖像画を見ていると声が聞こえた。
「セルヴィ!管理人室行くよー!」
とクリフの声が聞こえ、声の聞こえた方へ顔を向けると既に皆歩き出していた。
「あ、ああ!」
と皆の後を速足で追った。
玄関のすぐ近くの一室に皆が立ち止まって、クリフがドアのノックする。
「フィルチさーん!今いいですか!?」
とドアの前で管理人さん?を呼ぶ。
しかもどこかで聞いた名前だ。
「あいはーい」
と部屋から声が聞こえ、ドアが開く。
中からは丸々とした大柄な女性が出て来た。
頭にはホワイトブリム、髪は短めの黒髪癖毛、黒と白のメイド服を着たおばさんだ。
猫を抱えた長髪のお爺さんでなくてホッとした。
「何か用かい?クリフ」
そうメイド服のおばさんがクリフに問う。
「彼、今日から入学したセルヴィ。セルヴィ・グレディです」
とクリフは俺を指差しながら答える。
「ああ、あなたがセルヴィ。部屋の用意は出来てるわ。案内するからちょっと待ってね」
と言うと一旦メイド服のおばさんが部屋の中に戻る。
「あの人が管理人さん?」
と皆に問うた。
「そそ!管理人のフィルチさん。5人の男の子の肝っ玉母さんだよ!」
とクレアが答えてくれる。
確かに気の強そうな女性だ。
するとフィルチさんは鍵を片手に部屋を出て来る。
「こっちだよ。付いて来な!」
そういうと玄関の方へ歩き出した。
フェルチさんの後へ付いて行くと玄関前にある大きな階段を上る。
動き出す事はないようだ。
階段は2階、3階と上へ続いており、1階ずつに二方向に分かれていた。
俺達は二階に上がり右側へフィルチさんが曲がろうとした所で俺達の方を振り返る。
俺を見ていると言うよりもシーナさんやジル、クレアの方を見ているようだった。
それに何かを気付いたようにジルが答える。
「あ、私達はこっちだから」
と言うとシーナさんやクレアの女性陣を連れ、俺達とは反対側の方へ歩き出した。
「またねー」
と笑顔で手を振るシーナさん、クレア、ジル。
俺とクリフが残った。
「女子寮はあっち。こっちは男子寮よ」
とフィルチさんが言った。
クリフを見るとそういう事だと言わんばかりに肩を竦めた。
まぁそれもそうだなと納得してフェルチさんの後を付いて行く。
男性寮の入り口のドアまで来た。
入口の横には女性の肖像画か飾られており、フィルチさんがその女性の肖像画を見る。
肖像画の女性は少し小太りの貴族のマダムと言った感じの女性が描かれており、シャンパングラスを片手に二コリとほほ笑んでいる。
まさかな…と思ったその時、フィルチさんが言った。
「私の遠い祖母なの。寮の初代管理人よ」
「そ、そうなんですか」
俺は引きつりそうな顔を必死に普通の顔にして答えた。
合言葉とか言い出すのかと思ったからだ。
学校も寮も非常に魔法使いの有名な洋画に似ている為、何となく期待をしてしまう。
何を隠そう俺はあの作品が大好きなのだ。
関西にある有名な遊園地で最も有名な杖を購入した程だ。
部屋に飾ってあった事を思い出して欲しい。
そして中に入ると薄暗い通路を進む。
少し歩くと一つの角部屋の前でフィルチさんが止まった。
「ここがあんたの部屋よ」
と言うと持っていた鍵で部屋のドアを開けた。
そして俺に鍵を手渡して言う。
「荷物は中に入れておいたわ」
そういうとドアノブを回して中に入る。
「鍵はかけた方がいいわね。何か盗られても自己責任だから。夕食は食堂で18時~21時まで。お風呂は17時~22時まで。朝風呂は6時から8時までよ。いいね?」
と俺に少し強面で言う。
「はい。わかりました」
「よし!あとは掃除は自分でするんだよ。掃除用具は廊下を出て正面の物置きに入ってるからね。汚してると寮生活禁止になるから気を付けるように」
そうフィルチさんに言われ、再度返事をする。
フィルチさんは、うむと頷くとお部屋を出て行って自室へ戻って行った。
「君の部屋はここか。僕の部屋も教えておくよ。おいで」
と無駄にキザっぽくクリフが言う為、部屋に鍵をかけてクリフの部屋まで案内してもった。
夕食の時間まで部屋にある置物がどうだとか、両親と兄弟の写真を見せて自己紹介してもらったり、自慢話されたり散々話しを聞かされたのはここだけの話しだ。
夕食の時間になり、食堂へ行くとシーナ、クレア、ジルがいた。
俺とクリフは一緒に食堂へ来ておりここでも一年最強グループが揃った。
最早お友達だ。
ご飯を食べながら学校についての事を話した。
勿論夕食にもコースがある。
昼と同じだ。
勿論俺は金欠の為、C。
シーナ、クリフがS、クレアとジルがBだ。
皆それなりのお家の出だ。
俺は勿論Cセット。
食卓が格差だ。
パンにスープにサラダがCセット。
パンにスープ、サラダに鶏の照り焼きがBセット。
有名店のパンにキャビア、トリュフが香る高級ビーフシチュー、白身魚のマリネ、3種のベリーのムースと言ったメニューがSセットだ。
おわかり頂けたであろうか。
俺達の食卓の上で友達だと胸を張って言いづらい格差が生まれているのだ。
だがそれを言ってしまってはいけないような気がした為、何も言わずに夕食を終える。
「また明日ね」
と言って階段の所で別れ、それぞれの部屋に戻る。
少しゆっくりしているとドアがノックされた。
ドアの前にフィルチさんが立っており、手には教科書一式が持たれていた。
「三年生の教科書だよ。明日からこれになるからね」
と言って俺に教科書一式渡すと自室に帰って行った。
しばらくすると再度ドアがノックされ、クリフが風呂へ行こうと誘って来る。
クリフの所にもフィルチさんが来て教科書を置いて行ったそうだ。
俺はそれに応じ、一緒に大浴場へ行きお風呂でもクリフの自慢話や家族の事を散々聞かされて良くこれほどまでにエピソードがあるなと感心するのだった。
お風呂を上がり、部屋に戻り明日からの教科書を開いてみる。
正直半分までは母に習った事が大半だったが、後半はまだ習った事のない魔法陣の書き方などが記されていた。
これは自主練しとこうと思いながらその夜は更けて行ったのだった。
次の日、洗面所は部屋内にある為顔を洗い歯を磨いて朝のトレーニングをする。
走って筋トレをして、剣を振るう。
一汗かいた為、軽くシャワーを浴びに大浴場へ行く。
部屋に帰り仕度をして食堂へ行こうとした所、クリフが迎えに来た為一緒に食堂に向かう。
シーナとジルとクレアと合流して格差が生まれる。
もうこれは既にお決まりパターンになっている為気にしたら負けだ。
朝食を終えて各自の部屋に戻る。
支度をして校舎へ向かおうとした所でタイミング良くクリフが迎えに来る。
もうクリフが横にいる事が日常化している事に気付く。
外見に似合わずおしゃべりな奴だが嫌いではない。
校舎に着くとシーナ、クレア、ジルと合流して三年生の教室へ向かう。
昨日もやった自己紹介から今日も始まるのだった。
更新お待たせ致しました。
お話しが進んでなくてすみません。
次回は新たに3年生として友情に勉強に恋愛にトラブルに戦う彼等のお話しを進めて行きますので今後ともよろしくお願い致します。
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