12話 異常
ラボバ魔剣術学校へ入学を果たしたセルヴィ。
初めての環境に慣れない環境の中、実演演習が終わり、筆記テストが始まった。
入学早々筆記試験…大丈夫なのだろうか。
俺がそんな事を疑問に思っている内に問題用紙が前から流れて来る。
大体の事は既に母から習った事だった為、そこまで心配はしていないが、普通だったらモンスターペアレンツ出張ってくるような暴挙だ。
周りを見渡すと明らかに同様している奴もいれば堂々としている奴もいる。
どこの世界でも出来る子もいれば出来ない子もいるのだ。
問題用紙が全てに行きとどいた事を見届けた先生が言う。
「うむ。それではこれより45分間のテストを開始する。初め!」
俺は問題用紙の大体の内容を見た為、すんなり1問目からはき始めた。
そして大体の問題を解いて顔を上げる。
周りは眉間に皺を寄せて問題用紙とにらめっこをしている生徒が大半だ。
時計に目をやるとまだ15分程残っていた。
解けない問題は数個あった為ぼーっとしながら答えを考えた。
5分程した頃だろうか。
前の席にいるシーナが筆記する手を止め、ペンを置き、姿勢を正した。
きっと全て解き終えたのだろう。
まだ10分も時間があると言うのにとても優秀な子なんだと理解した。
周りを見ると既に数人筆記を終え姿勢を正している者が数人見えた。
その中には実戦演習にて優れた能力を持ったクリフ・アストレアムスやジル・スプリーウェル、クレア・ドナテルロがいた。
実戦も筆記もどちらも優秀な人間なのだと考えていた。
そして45分が来て先生が言葉を発した。
「よし!そこまで!問題用紙は後ろから前へ集めてくれ」
そして後ろから回って来る問題用紙に自分の物を重ね、前の席のシーナに手渡す。
そして全ての問題用紙がそろうのを先生が確認して言った。
「よし!答案を渡すのは本日の最後の授業とする。それでは休憩を取ってくれ」
そういうと問題用紙を抱え、教室を後にして行った。
「今日入学したばかりなのにセルヴィくん大変だったね」
とシーナさんが話しかけて来る。
「正直既に母さんに教わった事だったから助かったよ」
と困り笑いを浮かべながら答えた。
「シーナさんも早めに解き終えてたみたいだね」
そういうとシーナさんは
「予習をしていて助かったわ」
と言った。
やはり本気で目指している人は違うのだろうと思うのだった。
それから3限目の授業の薬学が終わり、昼休憩となった。
この学校には食堂があり、大半の学生はそこで昼食を食べる。
帝都で昼食を済ませたり、自宅で食べる者もいるようだがほとんどの生徒は食堂だ。
食堂は広く、木造りの長方形の長い机が並べており、その両端にベンチチェアのような長い椅子がある。
入口にメニューが掲示されており、Cセット、Bセット、Aセット、Sセットと選べるようになっている。
C→B→A→Sと言う並びでSが一番高級なメニューとなっており、一食2,000Bもする。
Cは底辺の為、150Bだ。
Bは500B、Aは1,000Bだ。
勿論俺は貧乏な為Cセットを頼んだ。
室内の脇にはキッチンがあり、皆おぼんを持って一列に並びキッチンと食堂を挟む小窓口から料理の乗った皿を受け取って、全て受け取り終えたら最後の小窓口で料金を支払い、好きな場所に座りご飯を食べると言うスタイルだ。
俺も全てのメニューを揃えて適当な場所に座り昼食を食べた。
今日のCセットメニューはパン2つにマーガリン。
シチューにサラダと言ったメニューだ。
まぁこんなものだろう。
俺はありがたく頂く事にしたが、俺の正面に誰かが座った。
シーナさんだ。
「あ、シーナさん」
「一緒にいい?」
と笑顔で小首を傾げて問いかける彼女は実に可愛かった。
「う、うん!」
ちょっと声が裏返りそうになった。
ふとシーナさんのおぼんの上を見ると本日のAセットだ…1,000Bと言う金額は安い剣や防具が買える額である。
格差を見せつけられた俺は少しげんなりとした。
「お二人さん、仲がいいね」
と横から男性の声が聞こえた為声のした方に顔を向けるとそこにはクリフ・アストレアムスが食器を置き俺の左側に座る。
彼の実力はかなり認めている。
相当強い事は間違いがなかった。
しかも高貴な見た目であり、一国の王子と言われても納得するレベルである。
そんな彼が俺に何の用があるのだろう。
やはりシーナか?
なんて思っていた。
「ここいいかな?」
二人の女性の声が被って聞こえた。
声のした俺の右側に顔をやるとそこには、ジル・スプリーウェルとクレア・ドナテルロがいた。
「あ、どうぞ?」
少し驚いてしまった為、少々吃ってしまった。
こんな近距離に我がクラスの最強が一挙に集った瞬間だった。
そして皆の興味は俺に向いているらしい。
先ずはクリフが俺に質問をして来た。
「君、無詠唱が使えるんだよね?どの位無詠唱で発動出来るんだい?」
隠す事は特にない為本当の事を言った。
「今は中級魔術の半分位までかな」
そういうと皆驚愕の表情を浮かべた。
やっぱりそんなに驚かれる事なのだなと改めて理解した。
クリフは俺を「そんなのは嘘だ」と「平民のくせに」と罵る事も出来た。
身分の差とはそういう物だ。
だがクリフはそんな事はしなかった。
「コツ…みたいな物はあるのかい?」
と俺に教えを請うたのだ。
クリフ・アストレアムスと言う人間が出来た人間なのだと言う事がわかった。
それと同時に非常に勉強熱心な事も。
「コツか…それぞれの魔術が出る時、感覚があるよね?その感覚を再現してるんだ」
「凄いな…。イメージと違う魔術が出たりしないのかい?」
「それこそ反復練習だよ」
するとシーナさんが入って来る。
「魔術の事はお母様に習ったって言ったわよね?見た感じ剣術も大分扱えるみたいだけど剣術はお父様から?」
「うん、そうだよ。父は大分強いからまだ数太刀しか入れる事が出来ないけどね」
するとジルが話しに入る。
「魔術はどの系統が使えるの?」
「ほぼ全種類の系統は使えるよ」
すると今度はクレアが入って来る。
「魔力はどの位使ったら枯渇する?」
「10時間魔術練習したら枯渇するかな。勿論1時間休憩を挟んでもその位が限界」
それから俺への質問は止む事がなく皆に質問攻めにされた為休憩時間だと言うのに疲れてしまった。
皆に質問され答えた結果、皆の俺への判断は「異常」と言う事であった。
どうやらこの世界で俺のような人間は珍しいようだ。
魔術のない世界から来た俺からすれば、こんな夢のような世界で魔術を習わないと言うのはあり得ない事で、俺は魔術の訓練が楽しかった。
それに剣術も楽しく、前世で剣道をしていれば良かったと思う程だったのだ。
その為練習が苦にならず、物心付いた頃からほぼ欠かさず練習をして来た。
きっとその賜物なのだろうと思う事にした。
休憩時間も終わり、授業も4限目、5限目と終わり6限目を迎え、それぞれ名前を呼ばれ答案用紙を受け取る。
自分の点数は95点。
書いた所はほぼ間違いなかったらしい。
全員が答案用紙を受け取ると先生が咳払いをし話しを始める。
「この度急な実戦演習とテストを行ったのはこのクラスで学ぶ事がその者達の成長の妨げとなってしまうと思っていた為、進級は可能か判断する為の試験であった。当校は義務教育ではない。その為1年間1年生をしなければいけないと言う決まりもない。その者達はこのクラスで学ぶよりも上の学年で学んだ方が良いと判断した。今から名前を呼ぶ者は前に出て来なさい。先ずはクリフ・アストレアムス!」
「はい!」
とクリフが席を立ち、教壇の横へ立つ。
「次、シーナ・コッテスロー!」
「はい!」
とシーナさんが立ち上がり、クリフの横に立つ。
この二人が並ぶとオーラが神々しいなと思った。
そして続々と名前が呼ばれる。
「ジル・スプリーウェル!」
「クレア・ドナテルロ!」
「そして最後は、セルヴィ・グレディ!」
最後は俺を呼ばれた。
このクラス最強メンバーが教壇横に揃った。
「では諸君は明日より3年Sクラスへ進級だ!進級おめでとう!」
そう先生が俺達に告げるとクラスから微量の拍手が起こった。
そして俺の1年生は一日で幕を閉じた。
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