11話 実戦演習
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本日から学園生活の始まりです。
校長先生の後を付いて行くと一つの教室の扉の前で立ち止まった。
「ここじゃ。頑張っての」
そう校長は言うと俺に教室へ入るように手の平で促す。
俺は一呼吸し、ドアを二度ノックした。
すると中から女性の声が聞こえた。
「入れ」
俺は横へスライド式のドアを開け中に入った。
「おお!来たな。諸君!今日から入学する事になった新しい仲間を紹介しよう。セルヴィ・マク・グレディだ。私もまだ彼の実力を見てはいないが、聞く所によると恐らくここにいる誰よりも魔術に長けており、父は部隊長の騎士様だと言うから剣術もそれなりに出来るだろう。ほら!セルヴィ!君も挨拶を」
いきなりハードルが上がった。
この人はなんて紹介の仕方をしてるんだ。
教壇に上がる女性は大体30代前半の若い女性で赤髪の背中まで伸びる長い髪をポニーテールにしていた。
猫目の容姿はそれなりに整った気の強そうな女性。
上下灰色のスーツのような服装だ。
俺は苦笑をしつつ教室全体へ体を向け、全体を見渡す。
大体は俺と同じ年齢位には思うが明らかに年上の人もいる。
最年長は30代位の無精ひげを生やしたおじさんだ。
こんな人よりも強い…みたいな紹介をされたら反感を買わないだろうか。
俺は無駄な事は考えない様にして自己紹介をした。
「パース辺境王都のフリーマントル村から来ました、セルヴィ・マク・グレディです。ご紹介頂いた程腕が立つ訳ではないですがよろしくお願いします」
一応謙遜をしておいた。
喧嘩でも売られたら面倒だしな。
「よし!ではセルヴィ、君の席はシーナの後ろの席だ!右端窓際の席の五段目だな」
「はい」
俺は返事をすると自分の席を確認した。
すると俺の席の前にいるシーナと言う同じ位の歳の女の子が目に入った。
これは嫌でも目に入る。
オレンジ色の綺麗な長い髪に年齢に見合わない美貌。
育ちの良さそうな雰囲気を見るとどこかの貴族、もしくは王族か。
クラスのマドンナだろうと簡単に推測が出来るような存在感があった。
俺は自分の席に着いた。
「よし!では一限目は魔術学だ。教科書10ページ。水魔法の詠唱の種類…」
俺は途中入学者の為、いきなり10ページを開いても何もわからないだろうと思っていたが水魔法の詠唱についてはもうすでに母から習っていた。
初級レベルの魔法だ。
俺は1~9ページを授業中に読んですぐに理解出来た。
と言うよりもすでに習った事の為知っていた。
そう考えると母の魔術授業は高度な事を習っていたんだなと思い返す。
一限目の授業が終わった。
俺は教科書を大体読んでみたが、全100ページの教科書は俺に新しい事を教えてはくれなかった。
2年生から習う事って出来ないのかな…と考えていると見た目とは違い少しハスキーで、それでいて艶やかな声が前の席から聞こえた。
「セルヴィくん」
声の先に顔を向けると前の席のシーナさんが俺を呼んだようだ。
「はい」
と俺は少し驚いた顔で答えた。
「私シーナ。よろしくね」
「こちらこそ!」
俺に自己紹介をしてニッコリとしながら小首を傾ける彼女の仕草に打ち抜かれそうになってしまった。
その為、少し強張った声で答えてしまったのだ。
決して女性は苦手ではない。
前世も何度か告白などされたが、その度に御断りをしていた。
嬉しいが俺にはあまり恋愛感情と言う物が理解出来ずにいた。
だが目の前にいる少女には魅せられていた。
日本人では明らかにない顔立ち。
外国人の彫りが深く、高い鼻。
俺外国人顔が好きだったのかな何となく思った。
前世の学校には確かにハーフの子や外国から来た子もいたが、特別仲良くなることもなかった。
転生して好みが変わったのか、それともこのシーナさんが特別なのか俺には判断出来なかった。
「何故ラボバ魔剣術学校へ?」
とシーナさんが俺に質問した。
普通に新入生にする質問だ。
「魔剣術を習いたかったんだ。地元の学校でも良かったけど、ラボバ魔剣術学校はレベルが違うし凄い魔剣術士も多く輩出しているって聞いてる。だから学ぶなら地元の学校よりもラボバ魔剣術学校かなって」
俺は答えた。
「そうなの。この学校って別名貴族学校と言って貴族の家の子や王族の血筋、それなりに活躍している冒険家などお金持ちが集まる学校なの。だから田舎の方から来る人って滅多にいないのよ。だから気になっちゃって」
とシーナさんが言った。
そうなのか…そんな裏設定聞いてなかったな。
家族もミリアンも何も言ってなかったし…。
「それは初めて知ったよ。と言う事はシーナさんも貴族の出?」
と俺は質問した。
「ええ。家は伯爵家よ」
やっぱりか。
だろうな、思ってた通りだ。
「そうなんだ。わからない事ばかりだから色々教えてもらえると助かるよ」
俺は笑顔でお願いした。
「ええ。もちろん」
シーナさんも快く引き受けてくれた。
2限目は実技の授業だった。
俺は支給された体操着…と言うのも少し変だが革で出来た鎧のような体操着に着替えた。
勿論男子用更衣室が演習場の近くにあり、女性は女性で更衣室があった。
魔剣術学校の実技の為、勿論真剣を使っての授業。
先生は先程の女性の先生だ。
名を「ミレイナ先生」と言うようだ。
シーナさんに聞く所、ミレイナ先生は世界有数の魔剣術士だったと言う話しだった。
弟子を育てる事が楽しくなり先生に転向したのだと言う。
今でも最前線で活躍する弟子は数人いるとの話しだった。
そんな先生に教われるのは感謝だ。
「では先ず、今日入学したセルヴィの力量を見せてもらおう。フェイタス!君が相手を」
「はい」
そういうと生徒の中から屈強な体付きをし、無精髭を蓄えた30代位の男性が前に出て来た。
フェイタスさん。
彼はそれなりに功績を上げた冒険者らしいと言うのがシーナさんからの説明だった。
力も強く実技の授業では勝てる者もあまりいないと言う話しだった。
いきなり大人と子供かよ…この先生何を考えてるんだ。
それが俺の率直な感想だった。
俺は仕方なくフェイタスさんに合わせて皆の前に出向く。
そしてフェイタスさんと距離を開けて対面に立った。
「よし!では実戦演習を始めるが、勿論相手を殺すのは禁止だ。医療魔術師も学校にはいるがあまり深手だと直るのに数カ月かかる事もあるからやりすぎないように!では、始め!!」
物凄い物騒な事言ってるけど大丈夫か?
俺は先生を引いた目で見ているとフェイタスさんが動いた。
「行くぞ!」
俺に向かって一足飛びで距離を詰められた。
流石実績のある冒険者。
だが正直父程ではないと言うのが感想だった。
そう考えると父は大分強い。
うちの両親って本当何なんだろう。
そんな事を考えれる余裕もあった。
フェイタスさんは自分の間合いに入ると横一線に剣で切りつけて来た。
俺もどの位の力に耐えられるのか正直自分を試したかった為、わざと避けずに正面から受け止めた。
すると体格差が大分あるフェイタスさんの一撃を俺は体を踏ん張って止めた。
普通であれば力の差と体重差のせいで俺は吹っ飛ばされるはず。
なのに止めた事によってフェイタスさんの顔つきが変わった。
「やるじゃねーか。ならちょっと本気で行こうか」
そうフェイタスさんが言うと少し俺とは距離を取った。
そして再度一足飛びに俺へ向かって来ると同時に詠唱した。
「敵を焼き払え、ファイアーブロー!!」
詠唱すると共に、剣を横一線に切りつけて来た。
先程の剣よりも数倍思い一太刀に流石に耐えきれずふっ飛ばされる俺。
着地は上手く出来た。
追撃とばかりにフェイタスさんは俺に向かって来る。
力で負ける事はわかったので受け止めようとは思わなかった。
俺は剣を構え、袈裟斬りを放つと同時に魔術を展開した。
サンダーバード。
剣に纏わり付いた電気がかなりの量、一気に放たれ、放たれた電気の塊は大型の鳥の形となりフェイタスさんへ向かって行った。
「な、な」
フェイタスさんは急ブレーキをかけ向かって来る稲妻の鳥へ再度詠唱し、同じファイアーブローを放った。
するとフェイタスさんが放ったファイアーブローは俺の放ったサンダーバードに飲まれて消えた。
バチバチと音を立て、サンダーバードはフェイタスさんに命中する。
ダァァァァァン!!
と大きな音を立てフェイタスさんは稲妻と砂ぼこりで姿が見えなくなる。
やったか?と俺は巻き上げられた砂ぼこりの先を凝視していた。
段々と砂ぼこりが晴れて行く。
するとそこには体操着の革の鎧を黒く焦がしたフェイタスさんが横たわっていた。
「マジかよ、あいつ」
「強い!」
「何だあいつは!」
クラスの皆が一斉にザワ付き始めた。
ちょっと出力を大きくし過ぎた気もしていた為、急いでフェイタスさんに駆け寄った。
そして倒れているフェイタスさんに両手を翳した。
「対象を癒せ。聖なる光、ホーリーヒーリング」
俺は治癒魔法を詠唱してフェイタスさんを癒していく。
俺は治癒魔法は苦手だ。
その為無詠唱が出来ないのだ。
ヒーリングはヒーリング、ホーリーヒーリング、女神の息吹、神の施し…と威力が上がっていくのだが俺は2段階目までしか発動出来ないのだ。
するとフェイタスさんの瞼がピクピクとし出して目を開いた。
そして少し辛そうに体を起こす。
「大丈夫ですか?」
俺はフェイタスさんに問うた。
「ああ…。それにしてもお前さん凄いな。あんな出力の魔法受けたのはダンジョンでドラゴンに出くわした時以来だ」
「正直言うと7割の出力ですよ」
そうフェイタスさんに言うとフェイタスさんは驚いた顔をして俺に首を回した。
「お前さん…その出力は馬鹿げてるぞ!聖騎士でも精々今の一撃位がマックスだ。しかも無詠唱だったろ?その出力に無詠唱とは…お前さんの魔術レベルは最早聖騎士団長クラスだと思っていい」
正直母にも言われていた事だ。
「我が子ながら化け物ね」と苦笑していた程だ。
その為大いなる力には大いなる責任が伴うと教えられて来たのだ。
だからこそ両親は6才になった入れる学校へ入学させるかを迷っていたようだ。
地元の学校に入れて良い才能なのか、他にやるべきか…そこで俺がラボバ魔剣術学校へ行きたいと言った為、両親は決めたのだと言う。
「想像以上だな。しかも無詠唱。それに治癒魔法も使えるようだ。ふむ。今後については検討しよう。では次…」
それから皆実戦演習を行った。
そのまま保健室に運ばれる者も仲にはいた。
俺から見ても才能がある者、乏しい者は大体見て取れた。
先ず同じ6才のクリフ・アストレアムス。
金髪中分けのお坊ちゃん風な容姿でイケメンだ。
こいつは魔術出力も剣術も体術も6才であれば申し分ない。
むしろ年相応以上だ。
武器はミディアムな長さの洋刀一本。
腰にもう一つ剣があるが予備なのだろう。
次にジル・スプリーウェル。
7才で俺よりも一つ上の女性。
栗毛のショートヘアので平均上の容姿。
どちらかと言ったら寡黙で冷たそうな雰囲気のあるクールビューティだ。
武器は日本刀。
脇差も有しているが基本は一本剣だ。
戦い方は侍に良く似ており、言われてみれば何となく日本人っぽい容姿をしている。
動きが早く、抜刀術なども有しているようだった。
俊敏さとカウンターに極振りしているのか相手が攻撃すると的確に避けて、その隙に切りつけると言ったスタイルだ。
特に剣術に長けている。
次にクレア・ドナテルロ、女性だ。
ジルと同じ7才。
青く長い髪を頭頂部でお団子にしている。
彼女の武器は槍だ。
彼女は槍術の名家の出らしい。
自由自在に槍を使いこなし、リーチもある為、剣士では中々彼女へ近づく事が出来ない。
それに乗せる魔術も目を見張る物があった。
最後はシーナ・コッテスロー。
彼女の外見は言うまでもないだろう。
一言言うなら美人だ。
その華麗な容姿に似合わず、武器はロッド。
しかもそのロッドを自由自在に扱い、ロッドに魔法を乗せて戦うスタイルだ。
小回りが利いて武器の操作が細かい。
相当鍛えられているのが見て取れた。
この4人は大分強い。
それぞれ違う特機があって一緒に修行したらお互い技術を高め合える仲になれるだろう。
そして演習後シーナさんに聞いた所クラスメイトとの対戦方式の実戦演習はこれが初めてだったとの事だった。
教室に戻る時、シーナさんと話していたからなのかさっきのやり過ぎた演習のせいかこちらのクラスメイトがチラチラ見てコソコソと話しをしていた。
どっちの事で注目を浴びているのか正直教えて欲しいものだ。
俺たちは教室へ戻ると席に着いた。
勿論体操着ではなく制服だ。
更衣室に行く前に初めて見る女性の先生が俺を呼びとめて制服を渡してくれた為、制服に着替えたのだ。
3限目が始まる時間になると大きな鐘の音が鳴ったと同時、ミレイナ先生が教室へ入って来た。
教卓の前に着くと皆を見上げて言った。
「突然だが筆記テストをする!」
あまり進まなくて申し訳ありません。
学生生活の始まりなので学校の事をきちんと’書くべきだと思い書きました。
次回は筆記試験からです。
次回もお読み頂けると幸いです。